6候補による激戦の品川区長選挙は法定得票数を満たさず戦後7例目の「再選挙」へ
10月2日に投開票を迎えた品川区長選挙は、新人6人による激戦が繰り広げられ、開票の結果、前東京都議会議員の森沢きょうこ氏が最多得票を獲得しました。しかしながら、森沢きょうこ氏の得票数が有効投票数の4分の1を下回ることが確実なため、品川区長選挙は公職選挙法第95条に規定する法定得票数(有効投票総数の4分の1)に達せず、当選人無しとなりました。今後、公職選挙法第109条に基づき、再選挙となる見込みです。
品川区長選挙の開票結果
まず、品川区選挙管理委員会が発表した開票結果(開票率100%)は以下の通りです(届出順、いずれも新人)。
品川区長選挙 開票結果(投票率 35.22%)
山本 やすゆき 24,669
村川 ひろかず 8,279
おおにし 光広 7,821
石田 ひでお 26,308
森沢 きょうこ 27,759
西本 たか子 18,559
出典:品川区選挙管理委員会
この結果、前東京都議会議員の森沢きょうこ氏が6候補者による接戦を制し、最多得票を獲得しました。ところが、公職選挙法の規定により、森沢候補は法定得票数を満たしておらず、当選人とならない見込みです。
今回の品川区長選挙は、元都議1名に元区議3名の公職経験者4名を含む6名が立候補した選挙でしたが、森沢候補・石田候補・山本候補が僅差の戦いとなったほか、4年前にも立候補した西本候補も票を伸ばすなど、序盤から接戦が伝えられていた通りの結果となりました。投票率が(前回よりは上がったものの)依然として低かったことも、今回の接戦の要因と言えるかもしれません。
法定得票数とは
知事や市区町村長を選ぶ地方公共団体の長の選挙(首長選挙)は、当選人が1人のため、一般的には最多得票を獲得した候補者が当選します。しかしながら、公職選挙法95条では、当選人の決定は「最多数を得た者」かつ「有効投票の総数の四分の一以上の得票」を得ることとなっており、有効投票の4分の1を獲得することが必要です。
公職選挙法第95条
衆議院(比例代表選出)議員又は参議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙においては、有効投票の最多数を得た者をもつて当選人とする。ただし、次の各号の区分による得票がなければならない。
(中略)
四 地方公共団体の長の選挙 有効投票の総数の四分の一以上の得票
今回の品川区長選挙では、投票者数が116,403人でした。23時20分現在、有効投票数は明らかではありません(※6名の候補者の得票合計は113,395票)が、森沢候補の獲得票数は27,759票と、投票者数の約23.84%(※同、24.47%)得票合計における割合はとなります。仮に(実際はありえないことですが)無効票がゼロだとしても、「有効投票の総数の四分の一以上の得票」を得ていないことから、森沢候補は法定得票数を満たしておらず、当選人とならない見込みです。
戦後7例目、区長選では初
法定得票を満たさないことで再選挙となるのは、戦後7例目です。最近では2017年の市川市長選挙で立候補者5人が接戦を繰り広げた結果、同様に最上位当選者が「有効投票の総数の四分の一以上の得票」とならず、再選挙となりました。
法定得票数に満たさないことを理由とする再選挙は戦後7例目であり、23区(特別区)長選挙では初めてのことでもあることから、極めて異例のことです。
今後の流れ、再選挙はどのように行うのか
品川区長選挙は当選人なしということになりますが、今後はどのようになるのでしょうか。
まず、当選人がいないため、公職選挙法第109条に基づき「再選挙」が行われる見込みです。再選挙は改めて選挙を告示して行うため、今回の選挙に立候補した人もしなかった人もいずれも立候補できることとなります(いわゆる上位〇人による決選投票などではありません)。
今回の選挙結果に異議申し立てなどが行われなければ、当選人無しということを告示後、速やかに再選挙の日程が検討されるものとみられます。一方、前述の2017年市川市長選挙のように選挙結果に対する異議申し立てが行われるようなことがあれば、選挙結果の確定にまで時間を要し、再選挙が来年にわたる可能性も否定できません。
現職の浜野健区長(75)は引退を表明しており、今回の区長選挙には立候補していません。浜野区長が10月7日に任期満了を迎えたあとは副区長などを職務代理を置くなどして、区政を行うものとみられます。
10月2日23:40追記 品川ケーブルテレビは「品川区選挙管理委員会が、再選挙となる見込みだと伝えている」と報じています。
10月2日23:55追記 品川区選挙管理委員会のホームページに「※有効投票数の四分の一を超えている候補者がいないため再選挙となります。」と記載されました。