パリ五輪で「トランスジェンダーの元男性が女子ボクシングに出場して勝利した」は誤り。生まれつき女性
2024年のパリ五輪のボクシング女子66キロ級に出場した選手に対して「トランスジェンダーの元男性が女子ボクシングに出場して勝利した」との指摘がX(旧Twitter)で拡散していますが、誤りです。
イマネ・ヘリフ(Imane Khelif)選手は性分化疾患により男性の特徴であるXY染色体を持つと報じられていますが(※1、※2、※3、※4)、生まれつき女性です。つまり、男性がトランスして女性になり、女子ボクシングの大会を“荒らしている”わけではありません。
Xでひろゆき氏や元区議会議員が拡散
8月1日に行われたボクシング女子66キロ級2回戦のイマネ・ヘリフ選手(アルジェリア)とアンジェラ・カリニ選手(イタリア)の試合で、ヘリフ選手からのパンチを受けたカリニ選手が開始46秒で棄権する事態となりました。
これに対してXでひろゆき氏が「元男性が、女子オリンピックボクシングに参加。元男性の余裕勝ち」「女性の大会に元男性を参加させるのは、女性の機会を奪う」と投稿し、現在7,000RP(RT)以上も拡散。1,600万回以上も閲覧されています。
また、元足立区議会議員の松丸まこと氏も「生物学的 “男”(トランス女)が出場し、イタリアの女性選手が試合開始後わずか1分で試合棄権。アンフェアすぎる。この事実を見てトランスジェンダーのわがままを理解しろというのか」などと投稿し、こちらは1万RP(RT)、1,200万回以上も閲覧されています。
このほかにも同様の投稿がいくつも行われていますが、これらの「元男性が女性の試合に出ている」との指摘は事実ではありません。
ヘリフ選手はXY染色体を持つが生まれつき女性
ヘリフ選手の体は生まれつき女性です。性分化疾患によりXY染色体を持つと報じられていますが、Xで拡散している「トランスジェンダーの元男性(男性の体だったが性別適合手術などを受けて女性となった)」との指摘は事実と異なります。
そのため「元男性が女性の機会を奪っている」という意見はデマだと言えます。
性分化疾患を持つ選手の出場枠の議論はあってもいい
ただし、ヘリフ選手は2023年のIBA世界女子ボクシング選手権の性別適格性検査で不合格となっていた事実があります(パリ五輪では合格)。
これはXY染色体を持つことでほかの女性選手と比べてテストステロン(男性ホルモン)が多く、骨格や筋肉量が男性に近いためだとみられます。
そのためほかの女性選手よりも身体的に優位であり、そうした女性を女子競技に参加させるべきか否かという議論はあっても良いと思いますが、性分化疾患の女性を事実と異なる「トランスジェンダーの元男性だ」と言い、LGBTコミュニティへの攻撃に使うのは間違っていると言えます。
なお、この件については性分化疾患を公表しているYouTuberの青木歌音さんも「ひろゆきさんにドン引きした、、」「性分化疾患の女性の事をトランスジェンダーだ!ってデマ流すの死ぬほどヤバい。私も性分化疾患なんだけどデマに恐ろしく感じてる」と投稿し、デマを投稿したひろゆき氏に対して苦言を呈しています。
8月2日13時52分修正
イマネ・ヘリフ選手の名前の表記揺れがあったため修正しました。申し訳ありません。
※情報元を追加しました。