振り上げた拳を下せるか! 注目のドイツでの日韓外相会談
釜山領事館前の慰安婦像設置に抗議して長嶺安政駐韓日本大使と森本康敬総領事らが帰国して9日で1ヶ月経過したが、帰任のメドは全く立ってない。見通しも立たない。菅義偉官房長官のコメントも「(帰任について)政府としては諸般の事情をみながら判断する」と1か月前と全く同じままだ。
(参考資料:「戻りたくても、戻れない」 駐韓日本大使の帰任)
貿易パートナーという重要性と北朝鮮の核とミサイルの脅威に共同で対処する必要性は認めるが、それとこれとは別の問題との立場を日本は貫いている。韓国政府が2015年12月に交わした日韓合意の履行や慰安婦像の撤去に向けた納得できる前向きな言動がない限り、先に帰任させるわけにはいかないようだ。「半年でも、一年でも待つ」と「徹底抗戦」の構えのようだが、では、韓国が何か先に手を打つのだろうか?
肝心の韓国政府は音なしの構えだが、大使の長期不在は望ましくないと、内心では早期復帰を求めている。だからと言って、復帰に向けての環境、条件作りを具体的にやっているようにはみえない。国益の観点から慰安婦像を早期に撤去すべきとの声も表立って上がらない。唯一、在日韓国人団体の「民団」の団長が訪韓し、在日韓国人の総意として慰安婦像の撤去を求めたぐらいである。
韓国政府は大使らの帰任については日本政府に判断を委ねているが、野党の中には期限を切って、それでも戻らなければ、対抗措置として駐日韓国大使を一時帰国させるべきとの強硬論も出ている。しかし、韓国政府は日本の一時帰国措置を「過剰で過度な決定」と批判した手前、そう簡単に対抗措置を取るわけにはいかない。むしろ、対抗措置を取らず、冷静に対処することのほうが国際的な支持を得られると考えているようだ。どちらにしても韓国政府としては忍耐強く帰任を待つほかないようだ。韓国もひたすら待ち続ける「戦法」のようだ。
しかし、世論調査では7割以上の日本国民が安倍政権の一時帰国の措置を支持しているものの日本の中に二階俊博自民党幹事長のように「早期に帰任させたほうが良い」と発言する動きがあることから韓国内にも膠着状態の長期化は望ましくないとして落としどころを模索しているふしもみられる。そこで、注目されるのが今月16~17日にドイツのボンで開かれるG20(主要20か国外相会議)と17~19日にミュンヘンで開催される安保会議の場である。韓国では岸田外相も尹炳世外相も出席することから外相会談で開かれ、事態の打開に向けた動きが期待されている。韓国が何らかの手土産を用意していれば、日本とすれば矛を収めることができるのだが、韓国の手の内がわからないのが現状だ。
外相会談で折り合いがつくかどうか現状では何とも言えないが、折しも、北朝鮮が「ムスダン」とみられる弾道ミサイルを発射したことがもしかすると、渡り船になり、後押しするかもしれない。
それでも日本が「先慰安婦像の撤去、後大使の帰任」という原則を曲げないならば、あるいは「必ず撤去させる」と担保しない限りは戻さないということならば外相会談を開いたとしても膠着状態からは抜け出せないだろう。
日韓関係は収拾がつかないほど現状は、悪化の一途を辿っている。
韓国は韓国で日本政府(内閣官房領土・主権対策企画調整室)と自治体(島根県と隠岐の島)が合同で竹島の領有権を主張するポスターを2月22日の「竹島の日」を前に作成し、全国の自治体教育委員会に配布したことや菅官房長官が軍や官憲による慰安婦の強制連行を否認する発言をしたことに態度を硬化させている。
日本は日本で3月1日に京畿道の安養市で、また慶尚北道の大邱市で新たに慰安婦像が設置されるほか、カリフォルニア州のサンフランシスコの中国人街に慰安婦像が設置され、さらに大都市のアトランターにも設置されることに反発している。
この対立、どこかの時点で折り合いを付けないと、いつまで経っても拳は下ろせないだろう。