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たばこ自販機は前年比台数20.4%減…自動販売機の現状をさぐる(2023年公開版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
日常生活に溶け込んだ多様な自販機。その動向は(写真:イメージマート)

ジュースなどの飲料水やたばこに始まり、新聞・書籍やお菓子類などの実商品の販売、食堂やファミレスや牛丼チェーン店での食券、さらには両替機やコインロッカーのようなサービスの提供にいたるまで、世の中には多様な自動販売機が展開され、機能を発揮している。そして先の震災に伴う電力需給問題に絡んでバッシングを受け、省エネ化の動きが加速されたり、タスポの導入やたばこ需要の減退でたばこ自動販売機の数が激減するなど、社会情勢の変化を受けながらも、自動販売機は毎日活動を続け、人々の生活を支え続けている。今回はその自動販売機の動向を、業界団体の日本自動販売システム機械工業会が毎年公開している統計値を基に確認する。

まずは直近、2022年末時点の自動販売機台数。飲料水、各種サービス、たばこその他もろもろを合わせ、全部で396万9500台。

↑ 自動販売機普及状況(各年末時点、万台)
↑ 自動販売機普及状況(各年末時点、万台)

種類別では飲料自動販売機がもっとも多く過半数の224.3万台、次いでコインロッカーや両替機、ビデオソフトやパチンコ玉貸し機などの自動サービス機が129.2万台。切手や乾電池、新聞などの日用品雑貨自動販売機の20.2万台が続く。グラフ上では細分化掲載していないが、飲料自動販売機内では清涼飲料がもっとも多く199.4万台、残りが牛乳やコーヒー・ココア(カップ式)、お酒やビールなどとなる。

直近年における前回年からの変移を見ると、たばこ自動販売機の減少が著しい。この動きは2011年分から継続している傾向だが、2011年は震災による物理的ダメージに加え、たばこそのものの出荷制限や品目数の減少なども影響を与え、採算性の問題や省エネの観点から撤去する事例も多く、大きく減少していた。しかし2012年以降は少なくとも震災や出荷制限による直接原因は無いにもかかわらず、相変わらず大きな減少を続けている。

これはたばこそのものの需要が減少しているのに加え、節電対策の矢面に立つ形で自動販売機そのものが一時停止させられたり照明を消されることでアピール度が減り売上が落ち、採算が取れなくなる事例が増えていること、さらにはタスポ絡みや震災後の出荷制限などを経て、たばこを自販機で買う人そのものが少なくなっているのが要因(コンビニでの購入にシフトしつつある)。

その上、たばこの自動販売機を併設している「街のタバコ屋さん」的なたばこ販売店が、店主の高齢化によって閉店、それに合わせて自動販売機を撤去してしまう例も増えている。現在稼働中の自動販売機でもビジネス面で厳しい状態が続き、来年以降もさらに台数が減少するであろうことは容易に想像ができる。

↑ 自動販売機普及台数前年比(2022年)
↑ 自動販売機普及台数前年比(2022年)

報告書からいくつかの動向に関して解説を拾うと次の通り。飲料自動販売機では「新型コロナウイルスの流行への対応が変化し人の流れが回復してきたのに加え、夏場向けの需要拡大で、飲料メーカーの投資意欲がいくぶん喚起された」ため、減少度合いは最小限にとどまったとのこと。

券類自動販売機は構成要素の乗車券券売機において「コロナ禍からの経済の回復以降もテレワークの浸透で鉄道利用率が低下しているため、ICカードチャージ・定期券発行などの高機能券売機への台数集約化や機器の置き換えサイクルの延長が行われる傾向」があるため微減(マイナス1.4%)。もう一つの構成要素である食券販売機・入場券などでは「ラーメン・牛丼チェーン店など外食産業の売上増による需要回復やコロナ禍での非対面決済需要の高まりを受けて」増加した(プラス1.9%)とのこと。

気になるたばこ販売機では、ピーク時の約63万台から大きく台数を減らしており、9万2300台にまで落ち込んでいる。さらに「2026年3月末に成人識別機能taspoが終了することから、さらなる台数減が予測されます」とある。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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