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台風 沖縄「停電で溶ける前の冷凍食品で避難所食堂!?」 食品ロスの廃棄も回避

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
沖縄県内にある公民館の巨大キッチン(神田敏晶さん提供)

台風による停電でコンビニ・保育園で食料廃棄

沖縄県を襲った台風6号は、2023年8月4日現在、再び沖縄や奄美に接近する見込みだ。沖縄県那覇市内の一部の地域では40時間以上の停電で冷蔵・冷凍設備が使えず、コンビニや保育園などで食材の大量廃棄が発生している(1)。

「避難所で冷凍食品持ち寄り避難所食堂」避難者のアイディア

8月3日、沖縄県内の避難所で避難しているITジャーナリストでYahoo!ニュースエキスパートオーサーの神田敏晶さん(2)が、SNSにこう投稿した。

#避難所 アイデア

停電 で クーラー停止 暴風雨で窓開けられず、湿度90%で避難中 冷蔵庫停止で冷凍食品 全解凍 公民館の巨大キッチン #冷凍庫処分食堂 できるじゃないの? コミュニティのチカラの発揮どころ!廃棄しないとダメな冷凍食品持ち寄って #こども食堂 #家族食堂 #避難食堂 できるのでは?

これに対し、

「溶けて廃棄するなら食べてしまうの大賛成です」

「ナイス!まずは段取りから」

「良いアイディア!」

といったコメントが寄せられた。

神田さんによれば、沖縄県内ではスーパーもコンビニも閉まっており、停電のために大量の冷凍食品が廃棄されようとしているとのこと。一方、避難所として使われている公民館の調理室は非常に立派で、冷凍食品がだめになる前に調理できると考えたそうだ。

神田さんいわく、

これって、停電時のエンタメになるかもしれません。避難所が楽しくなります。救援物資とかではなく、自分の冷凍庫で食べきれないものが役立ってくれるので

とのことだった。

冷凍食品は停電時1日程度しか持たない

沖縄県内のコンビニ店主の女性は、台風で需要が高まることを予想して、おにぎりや弁当、冷凍食品をたくさん仕入れたそうだ(1)。だが、停電で、どれも売り物にならなくなってしまったという。

弁当やおにぎり、サンドウィッチ、調理パンなどは、消費期限表示に時刻まで印字されているように、時間とともに品質が劣化するので、期限が過ぎたら食べないほうがいい。

冷凍食品の賞味期間は、製造企業や製品によって異なるが、6ヶ月から12ヶ月程度に設定されているものが多い(3)(4)。下記は日本冷凍食品協会の保存結果の参考資料だが、各メーカーとも、実際の賞味期限に1未満の安全係数を乗じて、短めに設定し、印字してあるものも多い。

日本冷凍食品協会の保存結果の参考資料
日本冷凍食品協会の保存結果の参考資料

だが、これらは基本的にマイナス18度以下で保管するのが適切な保存条件だ。

常温保存できる食品を、常に家庭に一定量ストックしながら日常的に使っていく備蓄を推進しているデイリーストックアクション実行委員会(5)によれば、「停電になった場合、冷凍食品は1日で使えなくなってしまうため、(備蓄に)あまり適していない」とのこと(6)。

備蓄するなら常温で長期保存できるものをローリングストック法で

備蓄してあるものを日常的に使い、使った分だけ買い足していく方法を「ローリングストック法」と呼ぶ。

家庭では、自然災害に備えて備蓄する場合、常温で長期保存できる食品を備えておくのがよい。具体的には缶詰やパスタなどの乾麺、レトルト食品、パックご飯などだ。

非常食
非常食写真:アフロ

パンの缶詰は、乾パンに比べて、咀嚼力の劣る高齢者や幼児でも、楽に食べることができる。被災時の食事は炭水化物に偏りがちなので、魚や豆など、タンパク質を含む食品の缶詰を備蓄しておくのもお勧めだ。

5年間保存できるパン・アキモトの缶詰(パン・アキモト提供)
5年間保存できるパン・アキモトの缶詰(パン・アキモト提供)

非常時こそ臨機応変に

筆者は東日本大震災の支援で食料廃棄を目の当たりをしたのを機に、食品企業を辞め、独立し、食品ロス削減の啓発活動に関わるようになった。当時、「避難所の人数に少しだけ足りないから平等に配れないから配らない」、「同じ食品だけどメーカーが違うから平等じゃないから配らない」といった理由で、せっかくの食材がだめになるケースがあった。

自然災害は毎年どこかで発生している。そのたびに、おいしさのめやすにすぎない賞味期限を杓子定規にとらえ過ぎたり、まだ十分に食べられる食品を廃棄したりしていたら、食料はいくらあっても足りない。

北海道を基盤にコンビニエンスストアを展開するセイコーマートは、2018年に発生した北海道胆振東部地震の時、停電中でもご飯を炊き、カツ丼などの代わりに塩むすびに切り替え、被災者に提供した(7)(8)。

「好評だったのは、多くの店舗で、温かいおにぎりを提供できたことです。セイコーマートには店内で調理する『ホットシェフ』というサービスがあるのですが、11年の東日本大震災をきっかけに、ガス炊飯器を備えた店を増やしていました。そのため停電中でもごはんを炊けたのです。カツ丼などの提供をやめ、たくさん作れる塩むすびに切り替えました」(7)

国連のグテーレス事務総長に「地球沸騰化時代」と称された現代(9)。気候変動による自然災害は、今後も不可避である。

食は命綱だ。

非常時こそ、臨機応変に。

参考資料

1)冷蔵や冷凍設備が使えない…停電40時間超、コンビニや保育園で食料廃棄も 那覇市の一部で(沖縄タイムス、2023/8/4)

2)Yahoo!ニュースエキスパートオーサー、神田敏晶氏の記事

3)『賞味期限がわかる本』監修:徳江千代子、宝島社

4)冷凍食品の期限表示の実施要領(日本冷凍食品協会)

5)デイリー・ストック・アクション委員会

6)売場活性化のためのMD EDITION MDスペシャル ローリングストック(ダイヤモンド・チェーンストア、p84-872020/8/15)

7)セコマの「神対応」、教訓あったからこそ 社長が語った(朝日新聞、2018/10/7)

8)「北海道の誇り」「コンビニ顧客満足度5年連続1位」セイコーマートがあの日握ってくれた塩むすび(井出留美、Yahoo!ニュースエキスパートオーサー、2020/10/9)

9)7月は史上最も暑い月に 国連総長は「沸騰化の時代」と警告(BBC NEWS JAPAN、2023/7/28)

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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