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「政策研究アーティスト」という肩書に変えた理由

鈴木崇弘政策研究アーティスト、PHP総研特任フェロー
政策研究アーティストは感性と客観性の両要素が必要。画像:生成AI「Emi」作成

 筆者は、これまで「政策研究者」という肩書を時々使ってきた。大学、研究所、政府、政党等で長年さまざまな政策研究を行ってきたので、特定の所属を超えて政策について考え、分析、研究、提言等していく者として、その肩書を使ってもよいのではないかと考えてきたからだ(注1)。

 他方、「政策研究者」という肩書は、今あるいはこれまでにあった政策について、考察・分析・研究するという、ある意味で受動的なイメージがする言葉だと感じる。

 しかしながら、最近の社会や世界の大きな変容や変貌を勘案すると、政治や政策にかかわる者として、その「政策研究者」という名称ではやや物足りないというか、アクティブさ、能動性に欠けるように感じる。特に最近はその欠落は、自身の役割として不十分であると感じる(注2)。

 従来の政治のやり方や社会への不満や不安定性が急激に高まり政治や政策が混迷し、世界各国の政権が行き詰まりあるいは交代・変更し、政治や国際情勢における緊張感が高まり世界が大きく変貌しつつある昨今。その分野において分析や研究する者も、今こそよりアティブに積極的に社会や政治に働きかけるべきだろう。

 そこで、筆者は、そのような意味が含意できる役割や名称はなんなのだろうかと考えるようになった。

 例えば「政策クリエーター」という肩書が考えられる。だがクリエータという名称は、ある枠のなかで、何か新しいものをつくるだけの存在という感じで、狭小、狭隘なニュアンスがある。

 現在そしてこれからの社会や世界では、サイエンスやテクノロジーなどの飛躍的な進展やその意味・役割の跳躍的変化・変動と共に、それらの短期間かつ「Out of the Box (既成概念から外れた)」(注3)的変化が起きてきている現状では、大きな構想力やそのような枠を超えての発想や、未来の状況を構想しそこからバックキャスト的に、現在そしてその未来に移行できるパスを考えていける思考および行動・活動が必要だろう。

 また現在のような大きな変貌・変容の時代には、直感や感性も重要だ。他方、冷静かつ客観性も重要だし、必要だ。その両方の要素が必須なのだ。

 議員・政治家や官僚・公務員なども、政治や政策そして公的なことに関わる者の呼称だが、すでにこれまでの実績や蓄積があるので、ある意味で「色」がつき、特定の「枠組み」がある。だが、今その分野で求まられてきている役割や要素は、それらの既存・既成のものを超えた構想力であり、現状や既存のものを守るのではなく、それらを超えて創出していけるイノベーション力やカルティベート力であろう。

 そのような様々な観点を考慮・勘案して、筆者が思いついて言葉が、「政策研究アーティスト」である。どうだろうか?

政策・政治に関わる従来の人材や活動を超えた役割が求まられている
政策・政治に関わる従来の人材や活動を超えた役割が求まられている写真:アフロ

 

 そこで、生成AIの1つであるCopilotに、次のように聞いてみた。

Q「政策研究アーティストという肩書はありますか?」

A「『政策研究アーティスト』という肩書は、あまり一般的ではないですが、創造的なアプローチで政策研究を行う専門家を指す面白い概念かもしれませんね。政策研究を芸術的かつ革新的な方法で進める人々を表現するために使えるかもしれません。

 たとえば、政策研究の成果をわかりやすく伝えるためにグラフィックデザインや映像制作を駆使する専門家や、新しい視点で社会問題を分析する研究者を『政策研究アーティスト』と呼ぶことができるかもしれません。

 このような肩書が実際に使われることは少ないですが、独自のアプローチや創造力を重視する新しい職種や役割を表現するために考えてみるのも楽しいですね。」

新しい社会の構想と創出が求められている
新しい社会の構想と創出が求められている提供:イメージマート

 

 筆者は、この回答以上に、「政策研究アーティスト」という言葉には、より実際の制度や政策などの「制作物」の作成も意図しているのだが、この回答を通じて、この言葉は、現在はまだ人口に膾炙されていず、社会的にも広がっているわけではないが、これからの社会や世界の構築に必要な役割を果たすという意味で、非常に時宜を得た的確かつ適切なものであると感じた。

 このようなことから、筆者は、現在およびこれからの多種多様な活動をするもとのして、自身を「政策研究アーティス」と呼ぶことにし、今後その肩書で発信および活動していこうと思う。

(注1)Wikipediaの筆者のページでも、「政策研究者」でも書かれているので、社会的にもそのように認識されていると考えている。

(注2)アクティブさや能動性では、議員・政治家や官僚・公務員もあるが、それらは、制度化されているがゆえに、できることの制約や条件がある。筆者のこれまでの人生や経験を考慮すると、筆者が社会的に求められている役割は、枠を超えて、より自由闊達に、社会などに変化や刺激を与えることのようだ。

(注3)この「Out of the Box」的な思考等については、次の拙稿等を参照のこと。

「三体」から学ぶ、今こそ私たちが必要な思考法とは?

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/d24108f76582966b51862602ffb21f5b2c81b1f4

政策研究アーティスト、PHP総研特任フェロー

東京大学法学部卒。マラヤ大学、米国EWC奨学生として同センター・ハワイ大学大学院等留学。日本財団等を経て東京財団設立参画し同研究事業部長、大阪大学特任教授・阪大FRC副機構長、自民党系「シンクタンク2005・日本」設立参画し同理事・事務局長、米アーバン・インスティテュート兼任研究員、中央大学客員教授、国会事故調情報統括、厚生労働省総合政策参与、城西国際大学大学院研究科長・教授、沖縄科学技術大学院大学(OIST)客員研究員等を経て現職。新医療領域実装研究会理事等兼任。大阪駅北地区国際コンセプトコンペ優秀賞受賞。著書やメディア出演多数。最新著は『沖縄科学技術大学院大学は東大を超えたのか』

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