危機管理広報分野の『バイブル』ともいうべき書籍が出た
筆者の目の前に、1568頁にもおよぶ『危機管理広報大全』という大著がある。まずその分量の迫力に圧倒される。だが同書は、その分量以上に、その内容の網羅性、深さ、きめ細かさ、実用性そして一貫したその理念・ポリシーおよび方向性等にも圧倒される。2013年に上梓された『企業不祥事・危機対応広報完全マニュアル』は720頁だったが、今回の同書は、その改訂版である。
著者は、広報・危機管理コンサルタントとして大活躍されている著名な山見博康さん。山見さんは、神戸製鋼で様々な経験をされ、広報部長やデュッセルドルフ事務所長などを歴任、その後独立され、企業や団体への広報PR・危機管理に関するコンサルティングを行ってきており、大中小企業における豊富な経験実践指導が好評な方である。海外での勤務や経験なども多く、また日本バスケットボール協会裁定委員長や日本柔道連盟広報アドバイザー、企業価値協会理事やsweet heart project実行委員会アドバイザーなどの社会的活動にも積極的に関わってきている。
また、11月には同書『危機管理広報大全』の出版記念懇親交流会が開催された。会場は溢れんばかりの状況で、企業・官庁・組織・メディアなどから約250名の方々が参加されていた。筆者も、知己をいただいており、その年齢を感じさせない、人的ネットワークの広さ、前向きさや積極さ、社会やビジネスへの意識の素晴らしさから多くを学ばせていただいている。山見さん、いつも本当にありがとうございます!
同書を読めば、山見さんは、このような多様かつ多彩な経験や多くの方々とのネットワークそしてお人柄を十二分に活かして、同書を書かれていることがよくわかる。
同書は、危機管理や広報について書かれたものであるが、その在り方や理念ばかりでなく、その対応やノウハウの具体的なことや具体事例、関係者の声や意見などもあり、その分野におけるビギナーの教科書であると共に、経験者や専門家の参考書や手引きであり、実際の現場でのマニュアルにもなっているものだ。また、危機管理や広報の対応における送り手と受け手の両側からの立場・意見および知見なども説明されており、自分がどちらの立場であっても、どのような対応をなぜとるべきかが明確に示されている。筆者もこれほど懇切丁寧に書かれた本にこれまでであったことはない。
同書は、ノウハウ的な面もあるが、一般的なノウハウ本のような浅薄さや表層的なものではなく、山見さんの豊富な経験や知見さらに多くの賢者や専門家の知見等に裏打ちされた、論考がなされている。
また同書は、単なる危機管理や広報を対象分野としていることを超えて、企業や組織などが、社会と如何に関わりながら、ビジネスや活動をしていくべきであるかを示した指南書であるとも感じる。
このように考えていくと、同書は、経営者や管理者にもぜひ読んでいただきたい書籍であるともいえる。そしてさらに、社会で仕事をはじめたばかりの方々やこれから社会にでていこうという方々にも超お薦めである。
そして、同書は、一度読んだ後にも、自分のデスクの横に置き、ビジネス、社会との関係性、対外発信などで困った時などに、関連個所を何度でも参考にできる、ビジネスにおける虎の巻であり、パートナーなのである。
同書の著者の山見さんは、あとがきの箇所に、「10年後新版化の幸運…」と書かれている。山見さんの聡明さや闊達さ、そして行動力を考えると、その10年後の新版化は当然にあるだろう。その際には、頁数は、今回のものの倍になるのだろうか?期待が高まる。
いずれにしろ、同書は非常にお薦め。ぜひ多くの方々に読んでいただき、活用していただきたいと思う。