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トナカイさんへ伝える話(167)「女性問題」とは何なのか

小川たまかライター
報道画像を「女性問題」で検索すると、宇野宗佑元首相の画像がヒットする(写真:Fujifotos/アフロ)

 宮澤博行氏が「女性問題」で議員辞職、自民党に離党届を提出して受理されたと報道された。毎回思うが「女性問題」って一体何ですか。なぜ男性の下半身問題を毎回毎回「女性問題」というのだろう。

 2月末に広瀬めぐみ議員の不倫が報道された際は、「男性問題」とは書かれなかった。この非対称性は一体何なのだろうか。

 80年代から続く「女性問題」と「男性問題」の非対称性を考えてみたい。

「女性問題」見出しは3パターン

 新聞や雑誌記事検索を行うことができるG-serchを使って、過去の新聞で「女性問題」がどのように使われているのかを見てみたい。

 「女性問題」で全ての媒体で「タイトルと本文に含まれる場合」を検索するとヒット数が多すぎるので、大手紙に分類される読売、朝日、毎日、産経の4紙に限り、タイトルのみに「女性問題」が含まれる記事を検索した。なお、各紙の検索可能な期間は、読売1986年9月1日〜、朝日1984年8月4日〜、毎日1987年1月1日〜、産経1992年9月6日〜。

 ヒットするのは1134件である。

 全体的にみて、1980年代〜現在までにおいて、「女性問題」が見出しに使われている記事は以下の3通りである。

(1)政治家や官僚、警察官などの公務員の不倫、買春問題

(2)男女格差や女性の働き方・子育ての悩みの問題

(3)殺人事件や傷害事件で、動機が不倫や浮気、三角関係、男性による女性の奪い合いの場合

(1)については、たとえば1989年頃は当時の宇野宗佑首相が「芸者との親しい交際」を週刊誌に報道され、これを各紙は「女性問題」と報じた。

 たとえば朝日新聞の見出しは、

・宇野首相と「女性問題」(社説)(1989年6月13日/朝日新聞)

 ここでは「」付きだが、朝日は他の記事では「」を使っていない。ちなみにこの社説では、サンデー毎日の報道をきっかけに外国通信社が「芸者」「愛人」「セックス・スキャンダル」と派手に報道したと書かれている。これまでこういった問題に「日本では寛大な空気が支配的」だったが、時代は変わりつつある、という指摘も。

 女性団体からの抗議が強かった点も報じられている。

・宇野首相 女性問題「事実明らかにせよ」 女性団体が抗議や要望(1989年6月13日/読売新聞)
・売買春は汚職と同じ根 宇野主張の女性問題に相次ぐ抗議(1989年6月19日/朝日新聞)

 それでは(2)の文脈で同時代にどのように使われていたかといえば、こんな風である。

・女性問題を考える集い 東京・世田谷で3月4日に(1989年2月28日/読売新聞)

 この見出しだけ見ると、一瞬、政治家の下半身スキャンダルを考える集いなのかと思ってしまうが、そうではない。

 世田谷で婦人問題を考えるつどい「こんなになったらいいな女と男」が開かれ、総理府婦人問題企画推進本部参与の女性が講演すると伝えている。女性運動の文脈で用いられる「女性問題」は当時、「婦人問題」と呼ばれていたことがわかる。

 こちらは1990年の記事。婦人問題から女性問題へ用語を変えると報道されている。

・婦人問題→女性問題に 横浜市、用語改正を9月定例議会に提案へ(1990年9月6日/朝日新聞)

 (G-serchで調べられる範囲の)80年代から40年以上にわたって、男性の下半身問題が「女性問題」と語られ続けています。数が多いのでいちいち紹介しないけれども、ああそういえばあの人も、あの人もあったなあと思い出された。

 また、このような「女性問題」の使われ方については、少ないながら反発も当然あった。

・(かたえくぼ)女性問題(2018年4月20日/朝日新聞)
男性の問題でしょ!(長野・かっこ)

 これは時事を短い言葉で切る読者投稿欄で、「女性問題」と報じられているニュースは「男性の問題でしょ!」と言われている。2018年4月といえば、当時新潟県知事だった米山隆一現衆議院議員の買春問題が報道されていたので、これに関しての投稿と思われる。

 朝日新聞、これを取り上げるなら「女性問題」をもう使わないのかなと思いきや、これ以降も見出しで「女性問題」はたびたび使われている。

(3)については、たとえばこんな事件。

・妻が夫を刺殺 夫の女性問題めぐり口論ーー千葉・幕張(1990年12月26日/毎日新聞)
・女性問題でけんかの男3人、滑走路で追いかけっこ 大阪空港(1990年2月2日/朝日新聞)

 「女性問題」が動機の殺人や傷害はたびたび報じられていた。浮気を咎められた夫が妻を殺す事件や、別れられなくなった愛人を殺してしまう事件もある。

 これらも大きく分類すれば(1)と同様、不倫や浮気を「女性問題」を報道している。

 ざっと確認したところ、80年代から現代に至るまで、新聞の見出しで使われる「女性問題」はこの3パターンだ。

 ただ、2010年頃以降からは(2)の割合が減っているように感じた。これは推測だが「女性問題」というざっくりした括りではなく、「女性の働き方問題」「男女格差の問題」「女性の生きづらさ・働きずらさ」といった風に表現が変わっていったからではないだろうか。

 「待機児童」問題や「少子化」「不妊」も、80年代なら「女性問題」に括られていたかもしれない。「性暴力被害」も長らく「女性問題」扱いされがちだったが、男性も被害者である意識が強まった現代で、性暴力被害を「女性問題」とはあまり言わないだろう。

それでは「男性問題」って何?

 へー、「女性問題」ってたくさんあるんですね。じゃあ男性問題ってどのぐらいあるんじゃろ?って思いますよね。

 先ほどと同じ条件(大手4紙、「タイトル」に含まれる記事のみ)で検索してみたところ、結果は……

4件。

4件?

 何かの間違いかと思って検索し直してみたが、やはり4件だった。もう一度書くが、「女性問題」の同じ条件でのヒット件数は1134件だ。

 たった4件なら全ての見出しを紹介できるので、そうしよう。

・「男性問題」を覚悟 山崎浩一(時評89)(1989年11月25日/毎日新聞)
・1995年「男性問題」(情報クリップ)(1995年2月2日/朝日新聞)
・確約書男性問題「納税通知は納期後」防府市長が特例認める/山口(1997年5月19日/読売新聞)
・かながわ女性ジャーナル、「男性問題」初めて特集=神奈川(2001年5月2日/読売新聞)

 1997年の山口県防府市のニュースは一市民男性の記事がヒットしたもの。

 1995年の記事は、「サラリーマンが会社や社会で抱えるストレスの原因を探り、その解消法を考える」講座の募集記事だった。これと2001年の読売新聞記事は、男性の生きづらさを「男性問題」と捉えている。

 1989年の山崎浩一氏による記事は、G-serch上で本文を確認することができず、どういった内容なのかわからない。

範囲を広げてさらに「男性問題」を検索

 大手紙見出しで「男性問題」タイトルのヒットが少なすぎるので、検索範囲を広げ、G-serch上の全媒体で検索してみた。通信社や地方紙、雑誌、海外ニュース、スポーツ紙など合計139媒体の過去記事から「男性問題」をタイトルにした記事を検索した結果は、52件だった。なお同一条件での「女性問題」タイトル記事は4477件。

 ここまで範囲を広げると、「男性問題」も複数の意味で使われていることがわかる。以下の3つである。

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ライター

ライター/主に性暴力の取材・執筆をしているフェミニストです/1980年東京都品川区生まれ/Yahoo!ニュース個人10周年オーサースピリット大賞をいただきました⭐︎ 著書『たまたま生まれてフィメール』(平凡社)、『告発と呼ばれるものの周辺で』(亜紀書房)『「ほとんどない」ことにされている側から見た社会の話を』(タバブックス)/共著『災害と性暴力』(日本看護協会出版会)『わたしは黙らない 性暴力をなくす30の視点』(合同出版)/2024年5月発売の『エトセトラ VOL.11 特集:ジェンダーと刑法のささやかな七年』(エトセトラブックス)で特集編集を務める

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