福岡等と東京の桜開花競争の行方は
寒気が来ても平年並みに
短い周期で高気圧や低気圧が通過する春の天気となっています(図1)。
気温は、高気圧に覆われて強い日差しとなったり、低気圧通過で暖気が北上すると高く、低気圧通過後の寒気の南下で低くなるという周期変化です。
また、周期的に雨が降っており、東日本の太平洋側から西日本は菜種梅雨の様相となっていますが、この時期の、気温が高い時の雨は「催花雨(さいかう)」、あるいは「菜花雨(さいかう)」と呼ばれ、植物の開花を促すという意味があるそうです。
東京などの東日本は、2月末から平年値を挟んで気温が高い日、低い日が交互となっていましたが、今後は寒気が入って気温が下がっても平年並みという状況になるという予報です(図2)。
2月前半は西高東低の冬型の気圧配置が続いて気温が低かった札幌などの北日本では、すでに、寒気が入って気温が下がっても平年並みという状況になっています。
福岡などに西日本は、2月上旬に一時的に平年並みとなったものの、今冬の最初から暖冬傾向が続いています。
今年の春は、全国的に気温が高い状態でスタートしました。
このため、さくらの開花が全国的に平年より早まっています。
桜の開花競争
3月に入ると、「沖縄・奄美以外でさくらが一番先に咲くのは」ということが話題になります。
桜の種類によっても違いますし、同じ地方の同じ種類の桜といっても、個々の木による個体差もあり、どこが一番というのは難しい問題です。
気象庁では、全国の気象官署で統一した基準により、さくらの開花した日や、かえで・いちょうが紅(黄)葉した日などの植物季節観測を行っていますが、その多くは、観察する対象の木(標本木)を定めて実施しています。
さくらの開花競争は、公平を期すため、この標準木と呼ばれる特定の「さくら」での競争です。
平成に入ってから、「沖縄・奄美以外での桜開花ベスト3」の回数を見ると、福岡が一番多い17回です。半分以上の年でベスト3に入っています(表)。
温暖な地方がいつも上位とは限らず、福岡・熊本・宮崎・高知の争いに、都市化の影響も考えられる東京が加わっています。
表にはありませんが、鹿児島は4回と温暖な割には多くありません。
これは、鹿児島のように温暖な地方では、強い寒気にさらされることがないので、休眠打破と呼ばれる寒さのあとに起きる開花の加速がおきないためと考えられます。
地球温暖化が進むと、現在のさくらの開花が早い地方では強い寒気にさらされることがなくなり、開花の加速がなくなって、東京や名古屋などがトップ争いをするようになるかもしれません。
なお、気象庁は平成になってから測候所の無人化を進めていますので、平成の初めの頃に約150の標準木が、現在では約50の標準木に減っている中でのベスト3ですので、表を見るときは注意が必要です。
例えば、宇和島(愛媛県)は9回となっていますが、平成18年(2006年)以降は無人化によってさくらの開花観測は行われていません。
つまり、17年間で9回ですので、実質的には福岡を上回っています。
今年のさくらの開花は
気象庁による「さくらの開花予想」の発表は、昭和26年(1951年)に関東地方を、昭和30年(1955年)からは全国(沖縄・奄美地方を除く)を対象に始まり、平成21年(2009年)まで半世紀以上続きました。
国全体の行政事務の見直しのなかで、さくらの開花や満開などについての気候に関連する観測は、地球温暖化対策など国の業務と関連することから気象庁が継続して行うこととなっていますが、さくらの開花予想は防災業務を分担している気象庁の業務にはなじまないなどの理由からの廃止となっています。
しかし、国民からの需要がなくなったわけではありません。国民からの需要に対しては、日本気象協会、ウェザーニューズ社、ウェザーマップ社などの民間気象会社等がさくらの開花予報を行っています。
民間気象会社等によって、対象とするさくらの木が違ったり、予報を発表する時期が違ったりするので、簡単には比較できないのですが、ウェザーマップの予報では図3のようになっています。
3月の高温傾向でさくらの開花は平年より早いのですが、暖冬傾向で強い寒気の南下がなかったことから、休眠打破と呼ばれる開花の加速が不十分で、極端に早かった、昨年、平成30年(2018年)よりは遅くなる見込みです。
そして、注目のトップ争いは、今の所、3月19日が予想日の福岡と高知、20日が予想日の名古屋と岐阜が候補です。
東京は、2月末からの寒気の影響で、3月22日の予想と出遅れです。
図1の出典:気象庁ホームページ
図2、表の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成
図3の出典:ウェザーマップ提供