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「職務停止」となったアナウンサーは何を言ったのか、あるいは言ってしまったのか

宇根夏樹ベースボール・ライター
オリオール・バード Aug 6, 2023(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 8月11日、MASN(ミッド-アトランティック・スポーツ・ネットワーク)のアナウンサー、ケビン・ブラウンは、久しぶりに放送席へ戻ってきた。

 ブラウンは、ボルティモア・オリオールズの試合を実況中継している。史上初の1億ドル・プレーヤーとなった――メジャーリーグで初めて総額1億ドル以上の契約を手にした――投手、ケビン・ブラウンとは別人だ。

 復帰に際し、ブラウンは「O'sのファンへ――私はストーリーテラーであって、ストーリーの一部となることを望んではいない」という書き出しの声明を出した。

 ブラウン自身は「私とオリオールズの関係が誤って報じられた」と記しているが、いくつかの報道からすると、ブラウンの発言がオリオールズのオーナーの不興を買い、職務停止となっていたのではないかと思われる。MASNは、オリオールズとワシントン・ナショナルズが所有している。

 7月20日~23日に、オリオールズは、タンパベイ・レイズの本拠地、トロピカーナ・フィールドで4試合を行った。23日の試合前に、ブラウンは、この球場におけるオリオールズのデータを紹介した。

 2020~22年は計21試合で3勝、今シーズンは5試合で3勝、などだ。

 これが理由だとしたら、オーナーは狭量、と言わざるを得ない。むしろ、それまでは勝てなかったのに、今シーズンはそうではないことを喜んでもいい気がする。

 また、2016年のワイルドカードを最後に、オリオールズはポストシーズンから遠ざかっているが、今シーズンはア・リーグ最高の勝率を記録している。

 当然ながら、他のアナウンサーや記者からは、ブラウンを擁護する声が相次いだ。例えば、ニューヨーク・ヤンキースが所有するYESネットワークで仕事をしているマイケル・ケイは、「それが本当なら、私は本当だと思っているが、彼らは自身を恥じるべきだ」と語った。

 オリオールズの本拠地、カムデンヤーズでは、観客席から「フリー・ケビン・ブラウン」のチャントが起きた。ブラウンを自由にしろ=放送席へ戻せ、という意味だろう。

 なお、トロピカーナ・フィールドにおけるデータは、ブラウンの発言だけでなく、画面にもデータが表示されていた。他のスタッフが処分を受けたという報道は見当たらないものの、そうなっていないことを願いたい。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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