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悪夢の2025年の幕開け。トランプ、プーチン、習近平 --- 老害指導者たちが世界の混迷を深める!

山田順作家、ジャーナリスト
MAD BOOKS©️2017by E.C.Publications Inc.

■主要国の国家リーダーは高齢者ばかり

 

 2025年、世界はますます混迷を深める。各国がお互いの利害で対立し、分断は深刻化。政治も経済も、抱えている問題はなに一つ解決せず、人類が直面している最大の課題「地球温暖化」対策もまったく進まない。

 ウクライナ戦争は終わらない。イスラエル・パレスチナ戦争も終わらない。終わらないばかりか拡大する可能性がある。アメリカも欧州も、そして日本もインフレは続き、物価高騰で一般人の暮らしは、さらに窮乏する。

 移民問題による社会の混乱は世界中で広がり、それに格差の拡大が輪をかける。

 なぜ、そうなると言えるのか?

 それは、じつに簡単な理由だ。世界の主要国の国家リーダーが、みな年寄り、高齢者だからだ。彼らに未来を切り開ける力があるわけがない。

■78歳で就任のトランプが未来をつくれるか?

 なんといっても、米国大統領のトランプが78歳というのがいちばんの問題。政権を“茶坊主”で固め、同盟国も敵国も関係なく関税をふっかけ、国際協調など見向きもしない。しかも、パリ協定から再離脱間違いなしでは、地球温暖化は加速する。いくらイーロン・マスクを味方につけても、この78歳の老人には未来を構築する力はないだろう。

 はっきり言って、アメリカは「若い国」でなければならない。建国してたった248年の歴史しかない。しかも、この地上に出現した初めてのデモクラシー帝国である。これまでのほとんどの歴史において、40代、50代の大統領が国を率いてきた。

 トランプ(1期)、バイデンが大統領になるまで、ロナルド・レーガンが史上最高齢で就任した大統領だった。就任時の彼の年齢は69歳である。

 それが、バイデン78歳(現在83歳)、トランプ(2期)78歳だから、もう呆れるほかない。しかも、トランプは自己中の塊で、アメリカを再び偉大にするのではなく、自分を再び偉大にしようとしている。そのスローガンは、「MAKE A“ME”RICA GREAT AGAIN」である。

 

■クリントン、オバマは、トランプより若い

 3期続けて、大統領が史上最高齢で就任するのは、異例というか異常だ。これによって、アメリカ政治は完全に老害に冒され、デモクラシーのダイナミズムは失われる。

 歴代アメリカ大統領の就任時年齢の中央値は、55歳3カ月である。 就任時年齢がもっとも若かったのは、セオドア・ルーズベルトの42歳322日。ただし、彼はウィリアム・マッキンリー大統領の暗殺を受けての繰り上げ就任だった。選挙による大統領に限った場合、最年少はジョン・F・ケネディの43歳236日である。

 

 初代のジョージ・ワシントンは57歳 67日で就任。

 名大統領とされるエイブラハムリンカーンは52歳 20日、ウッドロー・ウィルソンは56歳66日、フランクリン・ルーズベルトは51歳33日で就任している。

 ケネディと同じく40代で就任したビル・クリントンは46歳154日、バラク・オバマは47歳169日である。驚くのは、この2人とも、現在、トランプより若いことだ。

 年齢も問題だが、女性がアメリカ大統領になったことがないことも問題だ。副大統領もカマラ・ハリスだけで、「ガラスの天井」はあまりに高い。世界各国で女性首脳が次々に生まれているのに、これもまた異常と言うしかない。

■プーチン、習近平、ネタニヤフ、みな70歳以上

 老人が国の指導者であるのは、アメリカだけではない。多くの主要国、しかも反米国家の指導者が70歳以上である。

 まず、ロシアのウラジーミル・プーチンが72歳。古い地政学に凝り固まった独裁者は、領土割譲がなければ意地でもウクライナとの停戦に応じないだろう。トランプ対プーチンの対決は見ものだが、着地点が見出せない。

 プーチンに全面協力しているベラルーシ大統領アレクサンドル・ルカシェンコも70歳を超えた。

 トランプが最大の標的としている中国の主席、習近平も70歳を超え、2025年6月には72歳になる。政敵を次々と追放し、「共同富裕」という、言葉とは裏腹の貧困化政策を取っている以上、経済低迷は続くだろう。いまさら、毛沢東思想だの時代錯誤もはなはだしい。

 イスラエル首相ベンヤミン・ネタニヤフは、後期高齢者、75歳を超えた。神の国イスラエル、選ばれた民族ユダヤ人の指導者は、歳をとってますます強固な右派となっているので、戦争を止めるわけがない。国際刑事裁判所からの逮捕状など歯牙にも掛けない。

■インド、南ア、トルコ、ブラジルもトップは老人

 近年は「グローバルサウス 」「G20」「BRICS」といって、新興国の台頭が目覚ましいが、ここでもまた70歳以上のリーダーたちが幅を利かせている。

 

 なんといってもいちばんに挙げなければいけないのは、米中対立、米ロ対立を巧みに利用して、国益優先のコウモリ外交を行っているインド首相のナレンドラ・モディだ。74歳の狡猾老人である。

 インドは世界一の民主国家などというのは名ばかりで、モディはヒンドゥー極右団体「民族義勇団」(RSS)の元運動家であり、ヒンドゥー至上主義者だから、トランプ、プーチンにとっても手強い相手である。

 

 トルコ大統領のレジェップ・エルドアンも70歳である。リラを暴落させた明らかな経済失政にもかかわらず、前回選挙に勝ち、独裁を続けている。EU加盟を取引条件にスウェーデンのNATO加盟に反対したりするのだから、頭のなかは石化している。

 南アフリカ大統領のマタメーラ・ラマポーザは72歳。ロシアの経済制裁には応じず、いまだに「ロシアは価値ある友人だ」と言っている。

 高齢と言えば、ブラジル大統領ルーラ・ダ・シルヴァは、なんと、トランプより年上の79歳。極右のボルソナロ前大統領とは正反対の左派。最大の貿易相手・中国と友好関係を保ち、バラマキ政策を続けている。

 高齢になればなるほど、政治家は頑迷になり、左派、右派とも極端化していく。

■「G7」で日本の石破はトランプの次に高齢

 ここで、先進国グループとされる「G7」を見てみたい。以下、国とリーダー、年齢を列記する。

アメリカ:トランプ大統領(78歳)

日本:石破茂首相(67歳)

ドイツ:オラフ・ショルツ首相(66歳)

英国:ロドニー・スターマー首相(62歳)

ジャスティン・トルドー首相(53歳)

エマニュエル・・マクロン大統領(47歳)

ジョルジャ・メローニ首相(47歳)

 なんと、日本の首相の石破茂は、G7でトランプに次ぐ高齢である。トランプとは10歳以上、マクロン、メロー二というヨーロッパの若きリーダーとは20歳も違う。これでは話が合うわけがない。もっとも、年齢以上に、彼には外交に重要な社交性が欠けている。

■日本は高齢者による「老害政治」の超先進国

 もう何年も前から、日本の政治は「老害政治」になっている。その結果、「シルバー民主主義」という言葉も生まれた。老人が老人向けの政治を行い、若者は置き去りにされている。

 トップの高齢化はもとより、閣僚、議員も高齢者ばかりになっている。おまけに、圧倒的に女性が少ない。

 2024年10月の衆議院選挙の結果を見ると、当選者の平均年齢は55.6歳と高く、20歳代の当選者はたった3人である。ちなみに、最年長は自民の麻生太郎84歳。次が立憲民主党の小沢一郎82歳である。

 世界各国の議会のデータを調査している機関「IPU」(列国議会同盟)のデータを見ると、日本では40歳以下の国会議員の比率がたったの6%。30歳以下になると0.2%といないも同然。もちろん、OECD加盟国語で最低である。

■閣僚の平均年齢61.95歳による「老害政治」

 衆議院選挙を経て、11月に「第二次石破内閣」が発足した。その顔ぶれを見ると、やはり、高齢者だらけ。

 石破総理と19人の閣僚の平均年齢は、61.95歳と、60歳を超えている。最高齢は地方創生担当大臣に再任された伊東良孝75歳。最年少は国土交通大臣に起用された中野洋昌46歳。年代別に見ると、70代が2人、60代が12人、50代が4人、40代が2人。

 まさに、老人内閣、いや「老害内閣」「老害政治」と言っていい。

 さらにひどいのは、女性閣僚が文部科学大臣の阿部俊子(65歳)、特命担当大臣の三原じゅん子(60歳)の2人しかいないことだ。

 女性閣僚がこれまで最多だったのは、5人である。第2次岸田内閣のときで、閣僚数が20人だったから、女性比率は25%となった。しかし、これは「少なすぎる」という批判に応えた一時的なものにすぎず、今回また2人に戻った。

■女性議員が少なく「GGGI」で下位独走

 世界経済フォーラムよる「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数」(The Global Gender Gap Index:GGGI:2024年版)では、日本のジェンダーギャップ指数は156カ国中118位。毎年100位以下で、下位を独走している。これは、指数のなかの一つの項目、政治分野への女性参画が圧倒的に低いからだ。

 これまで何度選挙をやっても、日本の女性国会議員の割合は10%前後で変わらないできた。ただ、先の衆議院選挙では過去最多の73人が当選し、女性比率は15.7%になった。これが一時なものか、今後増える可能性があるのかどうかはわからない。ただ、増えたといっても、15.7%である。

 女性議員の少なさは、地方議会も同様であり、全都道府県のうち女性議員の割合が20%以上なのは4都道府県だけだ。

 日本は、このように高齢男性による「老害政治」を続けている国であり、これでは経済低迷、「失われた30年」が続いているのも無理はない。

■脳は30代から萎縮が始まり65歳から加速

 政治を行うには、状況把握力、想像力、構想力、説得力、決断力などが必要だ。前総理の岸田が自慢した「聞く力」など、それほど重要ではない。彼は聞くだけで、ほぼなにもしなかった。

 それはともかく、こうした能力は、すべて脳からの指令による。脳が老化して、力が衰えれば、政治は迷走する。

 脳の老化は、脳の萎縮(神経細胞=ニューロンの減少)によって引き起こされる。脳の萎縮は30歳代くらいから少しずつ始まり、65歳くらいから加速すると言われている。

 脳が老化すれば、もの忘れ、同じ言動を繰り返す、人やものの名前を忘れる・間違える、年月日・時間・いる場所がわからなくなるなどの症状が現れる。もちろん、個人差は大きいが、70歳を超えて、まったく衰えないなどということはほぼない。

 つまり、さすがに70歳を超えて政治を行なうというのは、無理筋ではなかろうか。なにより、国民、国、そして世界のためにならない。このよう見てくれば、とても新しい年に期待など持てない。一刻も早い老害指導者の退陣を願うしかない。

作家、ジャーナリスト

1952年横浜生まれ。1976年光文社入社。2002年『光文社 ペーパーバックス』を創刊し編集長。2010年からフリーランス。作家、ジャーナリストとして、主に国際政治・経済で、取材・執筆活動をしながら、出版プロデュースも手掛ける。主な著書は『出版大崩壊』『資産フライト』(ともに文春新書)『中国の夢は100年たっても実現しない』(PHP)『日本が2度勝っていた大東亜・太平洋戦争』(ヒカルランド)『日本人はなぜ世界での存在感を失っているのか』(ソフトバンク新書)『地方創生の罠』(青春新書)『永久属国論』(さくら舎)『コロナ敗戦後の世界』(MdN新書)。最新刊は『地球温暖化敗戦』(ベストブック )。

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