ウクライナに供与される対ドローン用30mm機関砲はXM1211近接信管弾を用いるM-ACEシステム
4月4日にアメリカ国防総省から最新のウクライナ支援パッケージが発表されましたが、その中に「対ドローン用30mm機関砲搭載トラック9セット」が記載されていました。
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具体的な兵器の種類名の記載は無かったのですが、おそらくこれはノースロップ・グラマン社の「M-ACE(Mobile Acquisition Cueing and Effector)」です。ピックアップトラックに搭載可能な対ドローン防空システムで、レーダーと可視光カメラ/赤外線カメラを搭載した伸縮筒を装備した警戒車両と、30mm機関砲を遠隔操作式で搭載した対空車両で構成されています。対空車両の照準は可視光カメラ/赤外線カメラで行われます。
- 30mm機関砲 M230LFブッシュマスター
- 30x113mm弾薬 XM1211近接信管弾
対ドローン30mm機関砲システム「M-ACE」は電波式の近接信管(VT信管)を搭載したXM1211近接信管弾を用意することで、市販ドローンのような小型空中目標を低コストで効率よく撃墜することが可能となっています。
XM1211は頭文字に開発兵器を意味するXが付いている通り、まだアメリカ軍に正式採用されていない最新兵器です。正式採用されると名称はM1211となります。
ノースロップ・グラマン社のXM1211弾は弾頭に近接信管を内蔵しているので、エリコン社のAHEAD弾のようなスマート時限信管弾で必要な機関砲側に装着する信管調停用の機材が必要ありません。ただし起爆した弾殻破片は全方向に飛び散るので各破片の威力は小さく、30mm弾というサイズでは対ドローンに特化することになります。
一方で起爆タイミングを自由に設定できるスマート時限信管のAHEAD弾ならば、内蔵したタングステン製の重ペレットを榴散弾のように前方に打ち出すことで30mm弾であっても威力が高く、ロケット弾や迫撃砲弾も迎撃可能です。
つまりXM1211弾はC-UAS(対ドローン)ですがC-RAM(対ロケット/迫撃砲)ではない用途になります。なおAHEAD弾は両方可能です。
ノースロップ・グラマン「M-ACE」は機動性が高く調達費用が安いピックアップトラックに搭載できるシステムなので、大量調達できれば戦場の前線から小型ドローンを駆逐できる可能性を秘めています。ただしあまりに新兵器過ぎて現時点では9セットと供与数が少ないのですが、戦場での有用性が確かめられたら更なる追加供与が行われることになるでしょう。