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知らなきゃ損!ポリエステルvsウール、寒さに強いのはどっち?

TOUYA化学系研究者

 秋冬のファッションシーズンが到来すると、衣類に求めるものは「デザイン」だけではありません。寒さを防ぎつつ、快適な着心地を維持する服が求められます。これらのニーズに応えるのが、さまざまな繊維素材です。これらの素材には化学の力が深く関わっています。

ウール:自然が生み出す保温素材の化学

 ウールは羊の毛から作られた100%天然繊維で、冬は暖かく、夏は涼しい快適な素材です。繊維に含まれる「クリンプ」(縮れ)は多くの空気を閉じ込め、保温性を高めるとともに、優れた吸湿・放湿性を持つため、蒸れにくいです。また、繊維表面のスケール(うろこ状構造)は水を弾き、汚れやホコリがつきにくいという特徴があります。さらに、抗菌・消臭機能も備えており、汗の臭いが発生しにくいというメリットもあります。ウールはケラチンというタンパク質でできており、土に還るエコ素材としても注目されています。

化学繊維:機能性を高めた現代のテクノロジー

 ウールのような天然素材と並び、化学繊維も秋冬ファッションには欠かせません。化学的に合成された繊維は、天然繊維にはない特性を持ち、さまざまなシーンで活躍しています。

1. ポリエステル:耐久性と速乾性に優れた繊維

 ポリエステルは、耐久性に優れ、形状の安定性や加工のしやすさから多様な用途に利用され、コストも安いことが特徴です。速乾性や吸湿性に優れているため、ブラウスやスカート、インナーなど、日常的に着用する衣類に広く利用されています。


2. ナイロン:耐久性と軽さを兼ね備えた万能繊維

 ナイロンは、世界初の石油由来の合成繊維で、軽量でありながら引張強度に優れています。摩擦や摩耗に対して非常に高い耐性を持つため、アウターやスポーツギア、バッグなどによく使われています。

進化する化学繊維:サステナブルな素材の登場

 近年、環境問題がクローズアップされる中で、化学繊維にもサステナブル素材が注目されています。特に、石油を原料とする従来の化学繊維に代わり、リサイクル素材や植物由来の素材がファッション業界に登場しています。

1. リサイクルポリエステル

 ペットボトルや廃棄されたポリエステル製品をリサイクルして作られるリサイクルポリエステルは、環境への負荷を減らすために重要な素材となっています。リサイクルされたポリエステルでも、耐久性や速乾性などの優れた特性はそのまま保たれており、従来のポリエステル製品と遜色ありません。

2. 植物由来の化学繊維

 従来の化学繊維は主に石油を原料としていますが、最近では植物由来の素材から作られる繊維が増えています。例えば、トウモロコシやサトウキビから抽出された成分を使用して合成される繊維は、石油資源を使わないため、より環境に優しいとされています。

機能性とファッション性の両立:ハイテク素材の進化

 化学の進歩により、繊維の機能性は年々進化しています。例えば、秋冬の寒さ対策として開発された発熱繊維や、温度調節機能を持つ素材が登場しています。

1. 吸湿発熱繊維

 吸湿発熱繊維は、人体の水分を吸収してそのエネルギーを利用し、熱を発生させる繊維です。特に、肌着やインナーに使われることが多く、寒い外気の中でも自ら発熱して暖かさを保ってくれます。化学的な反応を活用して、外部からのエネルギーに頼らず、体を保温できる仕組みが取り入れられています。

2. 温度調節機能を持つ繊維

 温度調節機能を持つ繊維は、体温の変化に応じて余分な熱を放出したり、冷えを防いだりすることで、快適な温度を保つことができます。この技術は、宇宙服の開発にも用いられており、極端な温度変化にも対応できるため、秋冬の過酷な環境でも快適に過ごすことができます。

まとめ:知らなきゃ損!ポリエステルvsウール、寒さに強いのはどっち?

 秋冬ファッションに使われる繊維には、化学の力が大いに関わっています。近年ではリサイクル素材や植物由来の繊維など、環境にも優しいサステナブルな素材が登場し、ファッションと環境の両立を実現しています。今年の秋冬ファッションを楽しむ際には、どの素材が使われているかにも注目し、化学の力で快適に過ごせる衣類を選んでみてはいかがでしょうか。


化学系研究者

東京工業大学大学院の修士課程を卒業後、化学メーカーの医学系研究者として従事。研究成果がメディアに取り上げられた経験有り。科学やAIを活用したお役立ち情報を書いていきます!

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