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知らなきゃ損する!海藻が地球を救う『ブルーカーボン』の驚きの力

TOUYA化学系研究者

 地球温暖化が進む中、CO₂の排出削減だけでなく、吸収量を増やす取り組みも求められています。今回は、ブルーカーボンの仕組みと、その重要性について解説します。


ブルーカーボンとは?

 ブルーカーボンとは、海洋生態系が吸収・貯留する二酸化炭素(CO₂)のことを指します。海草や海藻が海水中のCO₂を光合成によって取り込み、炭素として蓄積する仕組みです。加えて、沿岸域に広がる湿地、干潟、マングローブ林などもCO₂を吸収し、長期間にわたって貯留するため、地球温暖化対策に重要な役割を果たしています。

ブルーカーボンの仕組み

 アマモなどの海草やワカメ、コンブなどの海藻が光合成を行い、CO₂を吸収して成長します。この過程で炭素が海底や植物体内に蓄積されます。また、マングローブ林、湿地、干潟などの生態系もCO₂を吸収し、その炭素を長期間、土壌や海底に固定します。

グリーンカーボンとの違い

 グリーンカーボンは陸上の森林や植物が光合成で吸収した炭素で、ブルーカーボンは海の生態系が吸収した炭素のことを言います。どちらも温暖化対策に欠かせない要素ですが、ブルーカーボンは海底や深海に炭素を長期間固定できるため、長期的なCO₂削減への貢献が期待されています。

ブルーカーボンの重要性と課題

 日本では、2022年に海草や海藻による年間約35万トンのCO₂吸収が初めて算定されました。しかし、磯焼け(食害)や海水温の上昇、沿岸開発による藻場の消失が続いており、これらの生態系を保全・再生する取り組みが急務となっています。(参考:環境省 ワカメやコンブがCO2を減らす?

ブルーカーボン生態系の役割と価値

ブルーカーボン生態系は、単なるCO₂の吸収源にとどまりません。次のような多面的な価値を提供します。

  • 生物多様性の保護
     海草や海藻の藻場は、魚や甲殻類の産卵・保育場所となり、海の生態系を支えます。
  • 水産資源の活性化
     藻場の再生により、漁業資源の回復も期待され、地域の水産業にも貢献します。
  • 産業利用の拡大
     海藻や海草は、化粧品やバイオ燃料の原料としても利用されており、新たな産業の創出につながります。
  • 教育やレジャーの場
     藻場を活用した「里海づくり」や体験活動は、海と人との関わりを深め、地域の活性化を促します。

全国で進む「里海づくり」の取り組み

 ブルーカーボン生態系の保全と再生に向けて、全国各地で政府、企業、市民団体が協力し合い、「里海づくり」が推進されています。この活動は、藻場を再生するだけでなく、地球温暖化防止や地域の経済活性化にもつながります。多くの市民が参加することで、海と人との共生を目指す新しい未来が開かれようとしています。(参考:里海ネット

まとめ:地球温暖化対策の切り札!?「ブルーカーボン」の可能性とは?

 日本の沿岸地域に広がるブルーカーボン生態系は、CO₂の吸収源としてだけでなく、海の生態系や地域社会にも多くの恩恵をもたらします。海の豊かさを未来に引き継ぐために、藻場の保全や育成を進め、持続可能な社会の実現を目指しましょう。今後も全国で広がる「里海づくり」の取り組みに注目し、私たち一人ひとりが環境保護に貢献していくことが求められています。

化学系研究者

東京工業大学大学院の修士課程を卒業後、化学メーカーの医学系研究者として従事。研究成果がメディアに取り上げられた経験有り。科学やAIを活用したお役立ち情報を書いていきます!

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