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ハリウッド映画にも出演する元世界王者の最終目標とは WBSS準優勝者インタビュー

杉浦大介スポーツライター
(写真:ロイター/アフロ)

 レジス・プログレイス インタビュー前編

 WBSS準優勝者が語るファイトマネーとの付き合い方「破産するボクサーにはならない」

ウェルター級でテレンス・クロフォードと対戦も?

ーー昨年10月のジョシュ・テイラー(イギリス)戦は去年の年間最高試合の候補となるほどの激闘でした。結果は惜しくも0-2の判定負け。「自分が勝ったと思った」と試合後に話していましたが、その気持ちは今でも変わりませんか?

RP : 僕が接戦を制したと思いました。ただ、際どいファイトだったことは間違いないです。大接戦ではあったので、「判定を盗まれた」などと言うつもりは決してありません。自分が勝ったと思いましたが、判定は彼が手にしたので、ただ「おめでとう」と言いたいです。いずれリマッチがやりたいですね。

ーーテイラー戦に限らず、エキサイティングな試合が多く、ファンを喜ばせることで定評を勝ち得てきました。そんなあなたにとって、無観客で試合をしなければならないとしたら、やはり残念なことですか?

RP : 現状では選択の余地はありません。やはりファンの前で戦いたいですし、奇妙に感じるとは思いますが、報酬を払ってもらえるのであれば不平不満を言うつもりはありません。やるべきことをやるだけ。人生で重要なのはその場に応じて適応することで、僕はどんなことにも適応できると思っています。

ーースーパーライト級にはあとどれくらい残るつもりですか?

RP : 僕の今の目標はスーパーライト級で王者に戻ること。まずはそれが先決です。この階級でタイトルを取り戻せば、ウェルター級に上げようかという気持ちになるはずです。

ーー去年の夏のインタビュー時、「いずれテレンス・クロフォード(アメリカ)と戦いたい」と話していました。クロフォード戦の実現もいまだに目標の1つですか?

RP : その通りですが、クロフォードだけではありません。クロフォードも王者なので戦いたいですが、ウェルター級のすべてのビッグネームが標的です。ただ、先ほども話した通り、まずはスーパーライト級のタイトルを取り返してからですね。

ーーボクシングの歴史を勉強しているという話でしたが、これまで見た中で一番すごいと思ったボクサーは?

RP : シュガー・レイ・ロビンソン(アメリカ)です。歴史を通じて多くの偉大なボクサーが登場してきたので、1人を選ぶのは容易ではないですが、やはりロビンソンこそがベストでしょう。フロイド・メイウェザー(アメリカ) 、マニー・パッキャオ(フィリピン)といった現代のスーパースターたちも上位にランクされてしかるべきですが、ロビンソンが最高のボクサーだという意見は変わりません。

ーー自分以外で、現役最強と思うボクサーは?

RP : パウンド・フォー・パウンドの現役ベストはサウル・”カネロ”・アルバレス(メキシコ)だと思います。カネロの学習能力は素晴らしいですよね。メイウェザーに敗れた後、特にディフェンス面で大きく向上しました。反復練習をこなしているのが伝わってくるし、ボクサーとしてのIQが高い選手。もちろんフィジカルでも恵まれており、馬力、スピード、打たれ強さもあります。そのように多くを持っている選手ですが、個人的に最も注目しているのはその学習能力です。

マーク・ウォールバーグと銀幕で共演

ーーあなたは喋りの上手なボクサーとしても知られており、その気になればコメンテイターにもなれそうです。現役生活を終えた後のプランについて、考えを巡らせることはありますか?

RP : 現時点で何か計画を立てているわけではありません。何か良さそうな話が転がり込んでくることはありますが、大抵の場合、そういったことに心を砕くのは危険なものです。僕はピーター・バーグ、マーク・ウォールバーグが主宰するチャーチヒル・マネージメントに所属していて、実はその気になればいつでも俳優としての仕事もできるんです。特にピーターは僕を映画に起用したがっています。ただ、今の僕は演技のために時間を費やしたくはないんですよ。ボクサーを引退したあと、また映画にも出られると思っています。

 注・プログレイスは実はすでに「スペンサー・コンフィデンシャル」「マイル22」というバーグ監督、ウォールバーグ主演の2本の映画に出演している。以下のプレビューでは2:18から短く登場

ーー確かにあなたならいろいろなことができそうですね。

RP : 将来のことは本当にわかりません。現役のうちにそれを考えるのは難しいですが、何かビジネスをやるかもしれないですね。とにかく、今の僕はボクサーでいたいんです。世界最高のボクサーになりたい。そのことだけしか考えていません。

ーーあとどのくらい現役を続けるつもりですか?

RP : それもまだわかりません。今の僕は31歳で、本来であれば全盛期の真っ只中のはずです。ただ、ボクサー年齢はまだ若いと思っています。これまでに経験したタフファイトは1試合(テイラー戦)だけで、身体、脳、頭もまだ消耗していないはずです。自分の力がもう下降線だと感じるその時まで戦い続けるつもりです。

ーーWBSSで勝ち進んだおかげで、あなたの名前は日本のファンの間でも知られるようになりました。いずれアジア、日本で戦いたい気持ちはありますか?

RP : もちろんですよ!今はコロナウイルスのおかげで無観客興行しかできないと思いますが、いつか日本の大観衆の前で戦い、アジアでもセレブリティになれたら素晴らしいでしょうね。

ーー最後にボクサーとしての最終目標を聞かせてください。

RP : まずはスーパーライト級で王座を取り戻し、その後にウェルター級でもチャンピオンになりたいですね。そこまでいったら、スーパーウェルター級でタイトルを狙うことも考えるかもしれません。パウンド・フォー・パウンドでも最高の選手になりたいし、リングマガジンのベルトも欲しい。ただ、それらは目標とは少し違うかもしれません。目標はとにかく向上し続けること。今後も向上し続ければ、今言ったことはすべて叶えられるはずです。

 レジス・プログレイス(アメリカ)

 1989年1月24日生まれ(31歳) ルイジアナ州ニューオーリンズ出身

 プロ戦績は24勝(20KO)1敗。サウスポーのボクサーファイター。ワールド・ボクシング・スーパー・シリーズ(WBSS)のスーパーライト級にエントリーし、2019年4月の準決勝でキリル・レリック(ベラルーシ)を6回TKOで下して決勝進出。このレリック戦で初めて世界タイトルを奪取した。 12月の決勝では敵地で惜しくもジョシュ・テイラー(スコットランド)に敗れたが、その実力は依然として高く評価される。

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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