3密対策の「適切な換気」方法 一般家庭での目安は
年末年始を控え、本格的に寒い季節になってきました。
新型コロナ対策では換気の重要性が強調されていますが、一般家庭において冬場にも適切に換気を行うためにはどうすれば良いでしょうか?
新型コロナは3密の環境で伝播しやすい
新型コロナウイルス感染症は3密(密閉・密集・密接)の場面で感染が広がりやすいことは広く知られるようになっています。
この中で「密閉」は換気の悪い屋内での環境を指します。
感染した環境が屋内と屋外のどちらが多いのかを複数の研究から解析した結果、新型コロナは屋外での感染は10%未満であり、屋内の方が屋外よりも18.7倍高かった、とする報告があります。
また日本の厚生労働省クラスター対策班も同様に、換気の悪い環境の方が換気の良い環境よりも18.7倍感染が起こりやすい、という流行初期の解析結果を報告しています。
つまり屋内での換気を良く保つことが、新型コロナの感染対策として非常に重要です。
例えば中国のレストランでの10人の集団感染が起こった事例をご紹介します。
このレストランはビルの5階に位置し、窓がなく、エアコンが完備されていましたが外気の取り込みがなく室内の空気を再循環させていたとのことです。
各テーブルの距離は保たれていたにもかかわらず、テーブルを越えて感染者が出ており、これは換気が行われずにエアコンからの強い気流が飛沫を運んだ結果であると著者らは推測しています。
一般家庭での適切な換気の目安は?
厚生労働省は令和2年11月27日付で「冬場における『換気の悪い密閉空間』を改善するための換気について」という資料を発表しています。
この中で「換気の悪い密閉空間」を改善するための必要換気量として一人あたり毎時 30m3が推奨されており、その根拠としては、これ以下の頻度では結核や麻疹の感染リスクが高くなることが挙げられています。
一人あたり毎時 30m3、と言われても全くイメージが湧かないと思いますが(少なくとも私は全く湧きません)、一人あたり毎時 30m3 の換気量というと、
・標準的な商店売り場(一人あたり占有面積 3.3m2 で天井高さ 2.8m)において毎時3.2回の換気回数に相当する。
・標準的なオフィス(一人あたり占有面積 5m2 で天井高さ 2.8m)において毎時2.1回の換気回数に相当する。
とのことです。
これでもまだ分かりにくいように思いますので、もう少し単純化した目安として、
・換気回数を毎時2回以上(30分に一回以上、数分間程度、窓を全開する)
が厚生労働省から示されています。
また換気の際には、空気の流れを作るため、複数の窓がある場合は二方向の壁の窓を開放し、窓が一つしかない場合はドアを開けることが推奨されています。
室内の温度・湿度を保ちながら換気をするためには?
前述の厚生労働省の換気に関する資料では、室内温度が低いと冬場に死亡率や呼吸器系疾患に罹る頻度が高くなるというエビデンスを踏まえ、室温を18度以上に保つことを推奨しています。
また、湿度については、新型コロナウイルスの感染と相対湿度との関係について十分に知見が蓄積されていないものの、40%を相対湿度の下限値とすることが妥当であると述べられています。
外気温が非常に低いときに窓を開けて換気すると、室温が急に下がってしまうことがあります。
常に室内の温度・相対湿度をそれぞれ18度以上・40%以上に維持するためには、定期的に窓を全開するよりも、暖房器具や加湿器などを使いながら、常に窓を少し開けて連続的に外気を取り入れるのが良いでしょう。暖房器具の近くの窓を開けると、入ってくる冷気が暖められるので、室温の低下を防ぐことができます。
人がいない部屋の窓を開け、廊下を経由して、少し暖まった状態の新鮮な空気を人のいる部屋に取り入れること(二段階換気)も、室温を保つために有効とされます。
なお、2003年7月以降に着工された住宅には「常時換気設備(24時間換気システム)」が設置されています。
常時換気設備や台所・洗面所の換気扇を常時運転し最小限の換気量を確保するようにしましょう。
【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】