台風21号を「ひまわり」が監視中 既存の教科書に書かれていない様々な現象
フィリピンの東海上に台風21号があり、沖縄では26日(土曜)に暴風域入る可能性がありますので、最新の台風情報の入手に努めてください。
台風21号の強さは、静止気象衛星「ひまわり」から見た目で判断したものであるなど、台風情報のもととなっているのは、「ひまわり」からの常時監視情報です。ただ、「ひまわり」からは、既存の教科書には書かれていない様々な現象も現れています。
台風21号は大きな雲の塊の東で発生
台風21号は、きれいな円形の雲のかたまりの真ん中付近ではなく、その雲の北東に少し離れてある下層の渦雲での発生です。下層の渦巻きは、夜間にも観測できる「ひまわり」の赤外画像では、よくわかりません。可視画像でようやく分かるものです(図1)。台風が発達するにつれ、既存の教科書に書かれているような台風の雲、背が高い雲が台風の目をとりまいている雲となります。しかし、背が高い雲が台風の目をとりまいていなくても、強い風が吹いている台風があります。
台風はすべてが教科書に書かれているモデルのようなものではない
「ひまわり」が打ち上げられ、正式に台風観測が始まった昭和53年以降、これまで資料不足ではっきりしなかった台風について、種々の情報が得られています。その結果、台風は必ずしも、すべて教科書に書かれているモデルのようなものではないこともわかってきました。十分発達した台風については、今までに作られているモデルに合致するものが多いのですが、発生初期の台風や、中緯度で発生した台風については,モデルでは説明し難いものも混じっていました。その最初の台風が昭和53年の台風13号です。
中心部に背が高くて厚い雲がなかった昭和53年の台風13号
台風を取り巻く言はばとんどの場合,背が高くて厚い雲ですが、昭和53年8月に四国に上陸した台風13号は、台風の中心部には台風の眼を取り囲む背の高い発達した雲がありません。背の低い雲の循環からなっている台風です。しかし、飛行機による台風の観測によれば、中心付近で毎秒25メートルという暴風が吹いていました。
「ひまわり」による台風観測は台風研究の宝庫
「ひまわり」では、既存の教科書には書かれていない様々な現象が観測されます。それらは台風研究の宝庫となっており、一つ一つ解明することによって、台風情報の改善につながると期待されています。
図の出典:饒村曜(1986)、台風物語、日本気象協会。