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関東甲信梅雨入り 不安定降雨の梅雨入りか、梅雨前線北上の梅雨入りか難しい判断

饒村曜気象予報士
沖縄付近の梅雨前線の雲(6月14日3時)

令和3年(2021年)の梅雨入り

 令和3年(2021年)の沖縄地方と奄美地方は、5月5日に梅雨入りをしました。

 その後、梅雨前線が北上し、九州南部が梅雨入りしたのは、平年より19日も早い5月11日でした。

 令和3年(2021年)の5月11日という九州南部の梅雨入りは、昭和31年(1956年)には及ばなかったものの、梅雨の統計がある昭和26年(1951年)以降の71年間で2番目に早い梅雨入りです。

 その後、東海地方まで次々に梅雨入りしましたが、平年より20日以上も早く、71年間では、1位か2位という、記録的な速さの梅雨入りです(表1)。

表1 令和3年(2021年)の梅雨入り
表1 令和3年(2021年)の梅雨入り

 しかし、関東甲信地方はまだ梅雨入りをしておらず、それどころか、例年であれば、東北南部まで梅雨入りをしています。

関東甲信の梅雨入り

 関東甲信地方の梅雨入りの平年は、6月7日で、すでに平年より一週間ほど、東海地方より一か月ほど梅雨入りが遅れています(図1)。

図1 関東甲信地方の梅雨入り(旬ごとに集計しているため6月下旬の欄は、6月21日と22日の合計値の7回が入っています)
図1 関東甲信地方の梅雨入り(旬ごとに集計しているため6月下旬の欄は、6月21日と22日の合計値の7回が入っています)

 昭和26年(1951年)から令和2年(2020年)までの70年間で43回(61パーセント)も梅雨入りは6月上旬です。

 梅雨入りが遅い年として平成20年(2008年)と昭和42年(1967年)の6月22日というのがありますが、今週中には梅雨入りになりそうです。

 ただ、梅雨前線が沖縄付近に停滞しており、週初めに梅雨入りとある場合は、上空に寒気が入って大気の状態が不安定になり、雨が続いていることによる梅雨入りです(図2)。

図2 予想天気図(6月15日21時の予想)
図2 予想天気図(6月15日21時の予想)

 また、週末に梅雨入りする場合は、梅雨前線が北上してくることによる梅雨入りです。

 どちらになるのか、週半ばの天気をどう読むかで変わりますが、気象庁の予報官にとって難しい判断だと思います。

【追記(6月14日11時)】

 気象庁は、6月14日11時に、関東甲信地方の梅雨入りを発表しました。

 平年より7日遅い梅雨入りです。

 不安定性の雨が続くことによる梅雨入りですので、今週半ばは晴れることも多く、曇雨天が続くのは今週末からの見込みです。

(関東甲信の梅雨入りに伴って、タイトルを少し変更しました。)

沖縄の梅雨明け

 梅雨明けには二つの型があります。

 一つは、太平洋高気圧によって梅雨前線が北へ押し上げられて梅雨明けとなる「梅雨前線北上型」の梅雨明けです。

 もう一つは、梅雨前線が南下しながら弱まる「梅雨前線弱まり型」の梅雨明けです。

 「梅雨前線弱まり型」の時は、「梅雨前線北上型」に比べて、北から上空に寒気が入りやすいという特徴があります。

 大気が不安定となりやすく、雨が多い不順な夏になることが多いというのが「梅雨前線弱まり型」の梅雨明けです。

 ウェザーマップの16日間予報を見ると、沖縄では今週末以降、お日様マーク(晴れ)の日や、白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)の日が多くなります(図3)。

図3 東京と那覇の16日先までの天気予報
図3 東京と那覇の16日先までの天気予報

 梅雨前線が今週末から北上するためで、沖縄では梅雨明けかもしれません。

 沖縄県では、毎年、6月23日を「慰霊の日」として、沖縄戦で犠牲になった人々に祈りを捧げ、平和を願う休日としています。

 様々な慰霊祭が行われるほか、正午には県内各地で1分間の黙祷が行われます。

 この「慰霊の日」は、長いこと沖縄地方の梅雨明けの平年日でしたが、今年から変わりました。

 平年値は、西暦年の1の位が1の年から続く30年間の平均値をもって平年値とし、10年ごとに更新しており、今年から新平年値「2020平年値(1991~2020年の観測値による平年値)」に切り替えられたからです。

 梅雨入り・梅雨明けの時期についは、ともに少し早まっている地方が多いのですが、沖縄地方の梅雨入りは遅くなっています。

 そして沖縄の梅雨明けは、2日早まって6月21日になっています(表2)。

表2 梅雨入りと梅雨明けの平年値の新旧の差
表2 梅雨入りと梅雨明けの平年値の新旧の差

 沖縄県で行われている慰霊祭は、梅雨期間中に行われた年と梅雨明けに行われた年とが半々だったのですが、今後は、梅雨明けに行われることが多くなりそうです。

タイトル画像、図3の出典:ウェザーマップ提供。

図1、表1、表2の出典:気象庁ホームページをもとに著者作成。

図2の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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