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インスタグラム社にノルウェー王女と信じてもらえず、アカウント閉鎖される

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
王女用ではない、プライベート用のSNSを閉鎖されてしまったルイーセ王女(写真:Shutterstock/アフロ)

ノルウェーのプリンセス、マッタ・ルイーセ王女を取り巻く騒動が収まらない。

批判を受けて、「王女」と「個人」としての2人の自分を今後は切り分けるとして、SNSのインスタグラムに2個のアカウントを開設。「個人」として使い始めたばかりのアカウントが、「本人ではない」と、インスタグラムに閉鎖されてしまったのだ。

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これまでの経緯

5月にアメリカ人の霊媒師との交際を発表した王女。離婚後の恋人ともあり、本来であれば「よかったね」で済むはずだったが、またも炎上するはめに。

ルイーセ王女は天使や死者と交信できるというスピリチュアル発言をしており、「天使の学校」ともいわれる組織の運営もしていた。

交際発表後、恋人とのスピリチュアル講演を開始。

プリンセスという称号を使って、有料チケットの販売が始まったことから、王室の称号を商業的に悪用していると批判を受けた。

また、恋人の男性も、病気を治療する手助けができるという発言をしていることから、医療関係者からもブーイング。

「王女としての称号を、ビジネスで使用しなければいいのね?」という理解で、王女は王女としてのアカウントと、マッタ・ルイーセというひとりの人間としてのアカウントを作った。

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王女用と個人用のアカウントを2個運営

インスタグラムのアカウントが2個あることが、どうして反省したことを意味するのか?

商業的な活動をするときは、王室の称号を使用しないという反省の態度を、シンプルに象徴するからだ。

公務をするときは、プリンセス。

ビジネス講演をする時は、ルイーセという個人。

プリンセスという言葉を使わずに、ルイーセという名前でチケットを販売するということだ。

人口が520万人と少ないノルウェーでは、ひとりの人が複数の顔・肩書を切り分けて生きるというのは、珍しい話ではない。何人もの自分を使い分けていることができるなら、言動が異なり、矛盾していても良しとされることがある。

新しく開設していた、「わたしはマッタ・ルイーセ」@iam_marthalouiseというアカウントでは、彼女はプライベートの写真、恋人とのラブラブな日常を公に公開していた。

その「個人用」アカウントが、17日に王女の許可なく閉鎖されていたことが発覚。

本物の王女が運営していると信じてもらえず

「インスタグラム社は、このアカウントが本物のノルウェーの王女によるものだと信じていない」と、王女の広報担当者は現地の新聞VGに答えている。

王女は、つい最近も、自分の個人番号が掲載された写真を、インスタグラムに誤って投稿してしまったばかり。

王女としてではなく、ひとりの女性として自由に活動する象徴ともなっていた2個目のアカウント。閉鎖されたことを、現地メディアは皮肉交じりに早速報じている。

「王女」と「個人」という2人の自分がいる考え方。一国の王女が複数のアカウントを自ら運営するという自由奔放な行為は、インスタグラム社には理解してもらえなかったようだ。

偽物だという誤解を解こうと、王女側は同社と連絡を取り合っているという。

天使が見えるノルウェーのプリンセス、交際発表がなぜ炎上した?

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追記

現在、アカウントは復活

「王女」用アカウント @princessmarthalouise

「個人」用アカウント @iam_marthalouise

Text: Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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