いずれ全国的な観光スポットに。名古屋駅徒歩圏の「しけみち」は、まだマンションが安い
愛知県名古屋市内の「しけみち」をご存じだろうか。
「四間道」と書き、江戸時代の元禄13年(1700年)に起きた大火事の後、防火と円滑な商業活動のため四間(約7メートル)幅の道路をつくったエリアを指す。
四間道には、今も古い土蔵や町家が残り、京都の歴史的市街地や金沢市内の東山ひがしのような風情がある。その街並みを維持しながら、カフェやレストラン、ブティックが増えており、そぞろ歩きする観光客が年々増加。「観光の目玉がない」と言われ続けてきた名古屋市内にあって、全国から人を集める切り札と期待されている場所なのである。
四間道があるのは、名古屋駅と名古屋城の間、名古屋駅から歩いて10分ほどの場所だ。この先、リニア中央新幹線が開業し、名古屋駅―品川駅が40分ほどで結ばれれば、全国的に注目される場所になることは間違いない。
しかし、今はまだ知名度が低い。
そのおかげで、四間道がある名古屋市西区那古野1丁目周辺は、名古屋駅に近いのに住宅価格が抑えられている。
なかなか興味深い場所なのである。
今なら、4000万円台の新築3LDKも
「しけみち」の知名度が低い今、四間道の名前を付けたマンションは見当たらない。現在分譲中のマンションを探しても、住所名の「那古野(なごの)」を付けているものがあるだけだ。
その価格は抑えられている。
リニア中央新幹線開通を見越し、名古屋駅周辺の新築マンションならば、3LDKで7000万円以上が増えている今、55平米台の2LDKタイプが3980万円から、3LDKでも4480万円からという予定価格のものがみつかった。
大手不動産会社が今年売り出したばかりの19階建て新築マンションで、キッチンにディスポーザーが付くなど建物のレベルが高くて、この価格だ。
じつは、「しけみち」周辺の新築分譲マンションは、名古屋駅に近い場所でありながら、これまで新築マンション価格が抑えられていた。
その理由は2つある、と考えられる。
西区アドレスで、地味な場所のイメージが
「しけみち」周辺のマンション価格が抑えられていた理由のひとつは、住所が名古屋市西区になることだ。
リニア中央新幹線効果で人気が高まる名古屋駅のまわりは、主に名古屋市中村区。名古屋駅の住所も名古屋市中村区名駅1丁目だ。
この「名古屋市中村区」は、ここ10年ほど、全国的にみても地価が大きく上昇した場所として知られている。
もうひとつ名古屋市内で一目置かれる場所が、繁華街の栄や錦がある名古屋市中区。これに、白壁に代表される高級住宅地が所在する名古屋市東区を加えた3区が、名古屋の中心部で注目度が高い場所だ。
これに対し、「しけみち」がある名古屋市西区は、中村区、中区に隣接しながら、注目度は低かった。だから、マンション価格は抑えられてきた。
ふたつ目の理由として、これまでの「しけみち」が地味な場所であったことを挙げるべきだろう。
前述したとおり「しけみち」は歴史ある街区なのだが、時代遅れの場所とみなされることもあった。隣接する円頓寺商店街も、「庶民的なところがよい」と言われたものの、特徴のある商店が集まる場所ではなかった。
エリアに人を惹きつける要素が少なかったことも、マンション価格が抑えられる理由になっていたわけだ。
「しけみち」は、リニア開通後、全国的人気に
「しけみち」がある名古屋市西区那古野周辺は、名古屋駅から徒歩圏でありながら、これまでは住宅価格が抑えられ、新築マンションを安く購入できる場所でもあった。
しかし、その地域特性に変化が生じている。
「しけみち」が再生され、隣接する円頓寺商店街にも最先端のショップが誕生。全体が魅力的な街区に生まれ変わりつつあるのだ。
その結果、そぞろ歩きの観光客が増えはじめた。
「落ち着いて食事をするなら、錦より四間道」というファンも生まれているのだが、それもまだ一部の動き。「しけみち」の知名度が本格的に上がるのは、リニア中央新幹線が開通してからだろう。実際、「しけみち」エリアとその周辺には、まだ空き地も目立つ。
全国的な観光スポットに成長するためには、もう少し時間が必要だろう。
そのため、今はまだ「しけみち」周辺のマンションが割安に販売されている。が、リニア中央新幹線が開業する頃には、状況が一変しているはず……つまり、狙い目エリアの条件を備える場所といえる。
住宅の専門家としては、じつに興味深い場所なのである。