アルツハイマー病になりたくなければコーヒーは「ブラック」? 20万人データで明らかに【最新情報】
2050年には730万人が認知症、その7割はアルツハイマー病
新たな治療薬が出てきたからでしょうか、「アルツハイマー病」の名前をニュースなどで見る機会が増えました。
日本では2025年までに730万人が認知症になると予想されていますが、そのうち70%近くを占めるのがアルツハイマー病だと考えられています [日本神経学会「認知症疾患診療ガイドライン2017」p10、12] 。
「でも治療薬ができたんでしょ?」
そんな声も聞こえてきそうですが、ちょっとだけお付き合いを。
「18点満点中0.45点」
なんの数字だと思いますか?
実はこれ、最近話題の新しいアルツハイマー病治療薬の「効き目」を表す数字なのです。
アルツハイマー病治療薬はどれほど「効く」のか?
その薬の名は「レケンビ」(これは商品名。有効成分名 [「一般名」と呼ばれます]は「レカネマブ」)。
「病気の根本的な原因を改善する」と大々的に報道されたのを覚えている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、
早期アルツハイマー病の人たちに使った試験ではレケンビを使っても、アルツハイマー病は進行を続けました。
ただし偽薬(見た目はレケンピと同じで薬効なし)に比べると、進行が抑制されていたのです。
この進行度はある重症度尺度の「ポイント」で評価されます(少なくなるほど重症)。ではレケンビを使うと何ポイント改善されていたのでしょう?
それが先の数字、つまり「18点満点中の0.45点」です [文末論文1] 。
100点満点に換算すれば5点か6点の差。学校の試験だったら、あまり大きな声で自慢できませんよね。
しかしこれほど小さな差でも、「統計学」的には意味があるということで、「アルツハイマー病に効く」という結論になりました。
もちろん、「これで効いたと言えるのか」と疑義を呈する専門家は少なくありません。
このように見てみると、やはりアルツハイマー病は「予防が一番」なようです。
ブラックコーヒーを多飲する人はアルツハイマー病リスクが低い
その「アルツハイマー病」予防について、興味深い論文が8月19日に発表されました [文末文献2] 。
コーヒー、それも「ブラック」で「デカフェ」(カフェイン除去)ではないコーヒーを1日3杯以上飲む人では、コーヒーをまったく飲まない人に比べ、アルツハイマー病になる確率が低くなっていたというのです。
載ったのは米国栄養学会が発行する「米国栄養学雑誌」という学術誌。書いたのは万南医科大学(中国)のティンジン・ジャン氏たちです。
簡単にご紹介します。
ディカフェ・コーヒーや砂糖入りコーヒーではリスク低下せず
ジャン氏たちが解析したのは、英国在住の約20万人を9年間観察したデータです。
「観察開始時のコーヒー摂取状況」と「その後のアルツハイマー病発症」の間に関係があるか調べてみました。
すると、カフェイン入りのコーヒーをブラックで1日3杯以上飲む人では、コーヒーを飲まない人に比べ、アルツハイマー病になる確率が相対的に25%減っていました(0.75倍)。
興味深いことに、「デカフェ・コーヒー」や「砂糖/甘味料を入れたコーヒー」では、このようなリスク低下が認められませんでした。アルツハイマー病リスクが減っていたのは「ブラックコーヒー」だけだったのです。
なぜ?
ジャン氏たちは、カフェインがアルツハイマー病に対し予防的に働き、砂糖などの甘味料がその働きを妨げるのではないかと考察しています。
ただし厳密に言うと、この研究結果からは、コーヒーとアルツハイマー病の間に因果関係があるかどうかは断言できません(たとえば、ブラックを好む人に共通するなんらかの要因がアルツハイマー病のリスクを減らしている可能性もあります)。
しかしジャン氏たちはこのように、因果関係があると考えているようです。
まとめ
ディカフェではないコーヒーをブラックで1日3杯以上飲む人ではアルツハイマー病のリスクが減っていた。一方、砂糖を入れたり、ディカフェを選ぶ人たちではリスクは減っていなかった、という論文をご紹介しました。
コーヒーに関しては「良い」「悪い」どちらの論文もたくさん出ているのでややこしいですが、まずは自分で気になる病気やコンディションに関係するデータから、信用してはいかがでしょう?
コーヒーとアルツハイマー病については、次のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、ご覧ください。
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。ではまた!
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- 高価な認知症治療薬に頼る前に知っておきたい簡単な予防法。医学論文で読む「エビデンス」
今回ご紹介した論文
本記事は医学論文の紹介です。データの解釈は論者により異なる場合もあります。またこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性も皆無ではありません。あくまでも「参考」としてご覧ください。