交代策奏功で逆転勝利! ホーム戦4連勝。ハードワーク結実、終盤に勝機/レノファ山口
J2レノファ山口FCは10月27日、維新みらいふスタジアム(山口市)でジェフユナイテッド千葉と対戦。途中出場した選手たちがゴールを決め、3-2で逆転勝ちした。順位は14位のまま。
明治安田生命J2リーグ第38節◇山口3-2千葉【得点者】山口=高井和馬(前半7分)、山下敬大(後半35分)、田中パウロ淳一(同43分)千葉=クレーベ(前半11分)、アラン・ピニェイロ(後半20分)【入場者数】5427人【会場】維新みらいふスタジアム
前線からプレスを仕掛けてくる相手に対して、レノファも高い位置からのディフェンスで対抗。相手の持つ個人のパワーには勝ちきれなかったものの、試合終盤になってもレノファは組織的なハードワークを続け、残り15分で勝利を呼び込んだ。
高井和馬が先制点!
レノファは前節は残留争いをしている鹿児島ユナイテッドFCと対戦したが、相手のハードディフェンスを跳ね返せずスコアレスドロー。相手からのプレッシャーをどういなしていくかが課題となった試合だった。
今節は高いライン設定と高い位置からプレスという、レノファと似た特徴を持っている千葉との対戦。メンバーとシステムは変更せず、前節の反省点を生かしたゲーム展開を心がけた。千葉に対しても最後まで足を動かし続ければ勝機を見いだせる--。それがレノファの狙いだった。
ところが、良くも悪くも想定以上に早い時間帯から試合が動き出す。
前半7分。川井歩からの縦パスを引き出して、高井和馬が左サイドをドリブル突破。そのまま巧みにフェイントを入れてペナルティーエリアの中に侵入する。中央では三幸秀稔と宮代大聖も駆け上がっていたが、高井は「GKに読まれない」プレーとしてクロスではなくシュートを選択。「イメージ通りというシュートではなかった」と言うものの、低い弾道のボールはゴールへと一直線。三幸がニアサイドに滑り込んでGK佐藤優也のセーブを拒み、ボールはそのままゴールに吸い込まれた。
早い時間で1点を先行したレノファ。しかし、リードは長くは続かなかった。
同11分、千葉の素早い展開に対して守備が後手に回り、アラン・ピニェイロにサイドを破られてしまう。中央では人数こそ足りていたが、ピンポイントのクロスをクレーベに合わせられ失点。フィジカルに勝る相手に対して前線からのプレスは効いていたが、その分、縦に蹴られたときの対応が遅れて同点ゴールを献上した。試合は開始から15分とたたないうちに振り出しに戻った。
もっとも最近のレノファはロースコアで試合を運び、残り15分で勝ちきるという展開が増えていた。試合は0-0と同じ状態に戻っただけで、レノファはその後も積極性を出して相手陣地でのサッカーを続ける。追加点にはならなかったが、前半29分にはカウンターから宮代大聖がゴールを狙い、同38分には池上丈二が鋭くミドルシュートを放つなど躍動。徐々に、千葉に後ろ向きのディフェンスをさせるようになっていく。
交代選手がゴール奪取
1-1で迎えたハーフタイム。霜田正浩監督は、裏への飛び出しを増やすことや逆サイドを意識することなどを中心に指示。千葉の江尻篤彦監督はセカンドボールを拾うように意識付けした。
後半開始からしばらくは試合の流れを決定づけるような動きはなく、互いにチャンスもピンチもあるような拮抗した展開。このまま終盤までもつれ込みそうだったが、次の1点もあっさりと決まった。
同19分。千葉は左サイド(レノファから見れば右サイド)を為田大貴が深く突き、折り返しのクロスからクレーベがシュート。これはGK吉満大介がファインセーブするが、なおも千葉がチャンスを引き寄せ、その1分後には逆サイド側から米倉恒貴がクロスボールを供給。クレーベがヘディングでボールを落とし、アラン・ピニェイロが左足で振り抜いた。この流れるような攻撃で、千葉が逆転に成功する。
明暗を分けたのはこのあとの交代策だった。
千葉は2戦続けてフル出場していたクレーベを下げ、「守備の圧力を掛けたいということもあって代えたというのが意図の一つ」(江尻監督)と前線からのプレッシングに重点を置いた交代策を採用した。その一方で、レノファは失点直後にFWの山下敬大を投入し、再逆転するという強いメッセージを発信。矢継ぎ早に田中パウロ淳一と工藤壮人もピッチに送り出し、フォーメーションもウイングバックが攻め残ったままの3-5-2とした。
奏功したのはレノファだった。「下を向くことなく同点ゴールを決め、最後の15分でひっくり返す。最後の最後までイーブンであれば相手を上回ることができる」(霜田監督)。指揮官の狙い通り、交代のたびに運動量で相手を上回るようになり、後半30分以降はテンポ良くボールを動かしていく。
同35分。三幸のコントロールされた縦へのフィードを、相手陣の深い位置で高宇洋がヘディングで中継。そのボールを受けた山下が右足でトラップし、すぐさま左足でシュートを放った。山下の本来の利き足ではなかったが、それでも両脚でシュートを狙える強みを発揮。鋭いショットを右隅にしずめ、レノファがこの時間帯で同点とした。
守備がはまらなくなってきていた千葉は矢田旭と増嶋竜也を投入する。レノファは名目上のフォーメーションはそのままだったが、実質的には流動的に選手が入れ替わり、バックラインは前貴之と菊池流帆の2バック状態になる場面も発生。それほど前掛かりに相手陣に襲いかかり、システムのギャップを生かしてボールを前線に運び続ける。
決定的なゴールは後半42分。左からのコーナーキックを池上丈二がふわりとした軌道で送ると、ペナルティーエリアの中央で宮代大聖が打点高くヘディングシュート。さらに田中パウロが頭で合わせてコースを変え、ボールはクロスバーと相手選手に当たってゴールの中を転々とした。
「(宮代)大聖がヘディングして、ボールが目の前に来たので僕が触った。チームで前に運べるようになってきているのは感じている。今回は押し込んだ形が多く、あとは点が決まるのを待つだけだった。僕や(山下)敬大とかの前線でなんとしても点を取ろうという話はしていた」(田中パウロ)
気持ちを前面に出した田中パウロのゴールが決勝点となり、レノファが3-2で逆転勝利。3月10日の敵地での千葉戦でも高井、山下、田中パウロの3人がゴールを挙げているが、再び同じ顔ぶれが勝利を呼び込んだ。これでレノファは5戦負けなしで、ホーム戦に限れば4連勝となった。
最後に走り勝つ
相手の土俵に上がってハイプレスを受け続ければ、この結果は得られなかっただろう。レノファも序盤から相手にプレッシャーを掛け続け、特に両サイドは相手の攻撃参加を多くの場面で阻止した。それがかえって相手のロングボールを増やすことになったが、前や高宇洋がリスクをコントロール。ベテランの佐藤健太郎も球際に厳しく戦い抜いたほか、菊池はチャレンジでもカバーでも本領を発揮した。
こうしたハードワークは相手の体力をじわりじわりと削っていき、最終盤の猛攻に直結した。途中出場で決勝点を決めた田中パウロは「(高井)和馬のところは相手が大変だったと感じている。相手はそれであまり攻められず、前まで来ることができなかったと思う。和馬がドリブルやカウンターで相手を翻弄してくれているので、後から出る僕や(山下)敬大が助かる」とスタメンに感謝。霜田監督は「前半から出ている選手たちがしっかり走ってくれて、相手を疲弊させてくれている。90分勝負で、18人勝負だという話をずっとしている」と全員で掴んだ勝利だと胸を張った。
とはいえ、2失点は大きな課題だ。3点取れたから2失点しても問題がないというわけではなく、失点はやはりゼロに近づけなければならない。
千葉は前線の人数が厚く、センターFWが孤立していなかった。他のJ2チームであれば背の高いFWがいても孤立気味で、こぼれ球は守備側が回収するケースも多い。しかし千葉はクレーベに当ててからの攻撃にも迫力があり、実際にレノファは二次攻撃を許した。クロスに対するブロックやセカンドボールへの反応などは修正材料として、次戦までに練習で確認しておきたい。
レノファは前節を終えて今年のJ1昇格の可能性がなくなっていたが、今節の勝利でJ3への降格圏に入ることもなくなった。リーグ戦は4試合を残して、J2残留が確定。昇格を目指して戦ってきたシーズンだけに不本意な結果に終わったのは言うまでもない。それでも課題を克服しながら戦い、選手の確かな成長が感じられたシーズンでもあった。
霜田監督は試合後、「どうやって選手たちを成長させながら、レノファ山口というチームをJ2の中で勝てるチームにしていくのか。いろいろなシミュレーションをしようという話をしているので、残り4試合、いろいろなものが次につながる試合をしたい」と話し、ラストスパートの善戦を誓った。
次戦もホーム戦で、11月3日午後4時から維新みらいふスタジアムでFC琉球と対戦する。