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第2節で勝ち点積み上げ 昨季20位のJ2山口とJ3北九州 浮上への手応え

上田真之介ライター/エディター
志垣良監督と増本浩平監督。ともに40代前半の指揮官がチームを率いる(筆者撮影)

 昨シーズンをともに20位に沈んだJ2レノファ山口FCとJ3ギラヴァンツ北九州。いずれも40代前半の若手指揮官をトップに据えてチームを再建中で、3月第1週に行われたホームゲームでは勝ち点の積み上げに成功した。レノファはJ2で5位、ギラヴァンツはJ3で15位に付けている。本稿では2チームの明治安田Jリーグ第2節の戦いを簡単に振り返りたい。

レノファは強度高い秋田と対戦

 J2レノファ山口FCは3月3日がホーム開幕戦となり、維新みらいふスタジアム(山口市)でブラウブリッツ秋田と対戦した。1週間前の開幕戦からはスタメンに変更はなく、横浜FCを相手に1-1で善戦したメンバーが再びピッチに立った。

 秋田はレノファに比べフィジカルに勝る選手が多く、ロングスローを含むセットプレーやクロスボールを攻撃に多用する。レノファは彼らのストロングを出させないように試合を進めたかったが、試合序盤は秋田に押し込まれ何度もセットプレーを与えてしまう。

 ただ、決定的な場面は作らせず、「クロスは上げられたくはなかったが、それなりに僕らもいい準備していたので、はじくことはできたと思う。セカンドボールもしっかりと前の選手が予測してプレスバックし、相手よりも早く動けていた」と話すセンターバックの平瀬大などを中心に冷静に対応する。

 相手のセットプレーを耐えると前半6分にはカウンターから新保海鈴が左サイドをドリブルで突破し、この流れで左のコーナーキックを獲得。コーナーアークにボールをセットしたのも新保で、左足でマイナス方向に高い弾道のボールを送ると、長身の梅木翼がどんぴしゃりのタイミングでヘディングシュートを放った。

 「セットプレーもかなり時間を使って練習していた。今シーズンの初ゴールを早く取りたいという気持ちがあったし、これだけのサポーターの方が足を運んでくれた中でゴールできたのはすごく嬉しい」(梅木)

 狙い通りのシュートはゴール左下に吸い込まれ、8906人が集まったスタジアムが湧き上がった。3年ぶりにレノファに復帰した新保がドリブルやクロスの持ち味を発揮し、梅木もストライカーの矜恃を示した鮮やかなゴールシーンとなった。

 公式記録上の得点時間は前半7分で、時間はまだたっぷりと残っていた。先制したあとも秋田のセットプレーを受ける回数は多くあったが、試合の隠れた転換点になったのが前半20分台の使い方だろう。この時間帯、レノファはうまくボールを持ちながら時間を進め、相手にセットプレーのチャンスを与えなかった。

 試合を通して秋田はコーナーキック4本、フリーキック16本、ロングスロー8本(手元の集計)を放ち、計算上は3分間隔くらいのペースで好機を作っていたことになるが、レノファはボールを大事にすることで前半の途中はリスクを軽減。無失点でファーストハーフを切り抜けた。

選手の特徴を生かす布陣 最後まで機能

レノファの布陣(筆者作図)
レノファの布陣(筆者作図)

 43歳の志垣良監督は開幕戦から4-4-2のフォーメーションを採用し、各ポジションの左右でタイプの異なる選手を配置している。選手の個性を生かす組み合わせとも換言でき、サイドバックは左の新保が推進力を生かして果敢に縦に出て行くのに対し、右の前貴之は持ち前の頭脳を発揮してバランスを保ち、左肩上がりの状況に対応。ボランチも左の田邉光平が攻守にアップダウンを繰り返し、佐藤謙介は黒子となって田邉を押し出す。

 後半途中から小林成豪とヘナンを投入しても、同じタイプの選手が並ばないバラエティーに富んだ布陣を継続する。ただ秋田に対しては前線からのプレスが効きにくく、ボールを奪い返す位置は低め。志垣監督は「幅を使ったり、中を使ったり、その使い分けが今後重要になってくる。もっとバリエーションは増やしていかないといけない」と話すが、相手の特徴を踏まえるとレノファの攻撃の多様性は出しづらく、試合終盤は3バック気味の守備的な布陣に変更する。

 試合を1-0で閉じられるかどうかという構図になったが、相手に退場者が出ていたこともあり、レノファはカウンターに出ると数的優位を容易に作れる状況にもなっていた。それを生かした決定的なゴールが生まれたのは後半44分。レノファは数的優位を生かして左サイドを突き崩すと、タッチライン際を猛然と駆け上がったヘナンがクロスボールを供給、小林が相手と接触しながらも頭で合わせ、リードを広げるシュートをたたき込んだ。

 「練習の時から湧き上がって行けと監督から言われている。練習中も(小林)成豪くんにあの形で決めていた。まさに練習通りだった」(ヘナン)

 レノファは2-0で今季初勝利。ゲーム内容は秋田の土俵に上がらざるを得ない時間帯が長くなったとはいえ、つなげる場面ではしっかりとつなぎ、相手の攻撃にも適切に対応した。レノファは今年、失点減を目標の一つに掲げているが、強度の高い秋田を0点に抑えたのは自信につながりそうだ。志垣監督は「集中力を切らさず、危ない場面はほとんど作られなかった」と振り返り、「攻撃では守備の堅い秋田さんを相手にノッキングする部分はあった。しっかりと改善して次のゲームに臨みたい」と話した。

 開幕からの2試合で、J1再昇格を目指す横浜FCから勝ち点1、強度の高い秋田から勝ち点3を得た。次戦はアウェーでのファジアーノ岡山戦で、特徴がまた異なる相手との対戦になる。志垣レノファが次はどのような攻守のメソッドを持ち込んで勝負に出るか。新指揮官の次なる一手が楽しみなゲームになりそうだ。

ギラヴァンツは岩手にドロー

 J3ギラヴァンツ北九州は3月2日、ミクニワールドスタジアム北九州(北九州市小倉北区)でいわてグルージャ盛岡と対戦。開幕戦で先発だった牛之濱拓と同戦で途中退出した矢田旭が欠場し、岡野凜平とキャプテンの井澤春輝が今季初先発した。

 今季から指揮を執る41歳の増本浩平監督は4-2-3-1のフォーメーションを採用し、ワントップに鋭い動き出しを繰り出す永井龍を配置する。さらに今節はトップ下に長短のパスを繰り出すボランチタイプの井澤を置き、中盤の底ではベテランの喜山康平と2年目の高吉正真がタクトを振った。

 立ち上がりこそ中盤での攻防が続きどちらにも主導権のない状況となるが、ボールを動かせるセンターレーンが機能し始めると、ギラヴァンツが流れを引き込んでくる。

 前半15分、喜山が左の浅い位置から長いフィードを送ってスイッチを入れ、高昇辰(こう・すんじん)を経由して右サイドで坂本翔がボールを回収。坂本は巧みにステップを踏んで縦に突破し、グラウンダーのクロスボールを差し込んだ。これに反応したのが、相手守備陣の間をするすると抜けていった高で、ニアサイドでボールに飛びついてゴールに送り込んだ。

 「相手の裏を狙おうとは思っていて、そこがうまくはまった。喜山さんとも連係の話もしていた。こういう連係をもっと出せれば得点を重ねられると思うので、もっと連係を深めていきたい」(高)

 鮮やかな連係で生まれがゴールは、ギラヴァンツにとっても今シーズン初得点となった。しかし、直後に高が負傷し、無念の途中離脱。リードしていたこともあり、その後のギラヴァンツは相手にボールを持たせつつ、落ち着いて時間を使うようなプレー選択が見られた。

 ただ、構えすぎたのか出足が遅くなり、同34分に左サイドで小暮大器(岩手)に縦のドリブル突破を許してしまう。フリーでクロスボールを上げられ、ワントップのオタボー・ケネス(同)にヘディングシュートを打ち込まれた。この試合でほぼ唯一、相手のストロングポイントを出させてしまったシーンとなり、痛恨の同点弾。増本監督は「選手の判断は間違ってはいない」としながらも、「サイドバックがボールホルダーに出ていき、最後のクロスも負けてはいけないが、相手のウイングバックに対して出づらくなるシーンが出てくることは想定してトレーニングしていた。いろいろな方法を渡しつつ、最後に失点しないための際の部分はもう少しやっていかないといけない」と話した。

 後半は勝ち越し点を目指してギラヴァンツが敵陣に押し込んでいくが、5-4-1のブロックを築く相手の堅い守備を動かせず、ボールを持てどもシュートまでが遠い。セットプレーも多く獲得できたが、ゾーンで守る岩手のゴールを脅かすような場面は作れず、時間だけが経過してしまう。

 それでも後半24分に大卒ルーキーの渡邉颯太、同40分に高橋隆大(※登録名ははしごだか)を投入すると、リズムが出て攻撃は活性化。渡邉はクロスボールに合わせたり、背後へのランニングを見せたりしてフィニッシュワークに関わり、高橋は右サイドで仕掛けてペナルティーエリアを攻略する。ゴールこそ挙げられなかったものの、短い出場時間でも存在感を示した。

切り替えやメンタリティーに進化の証

ギラヴァンツの布陣(筆者作図)
ギラヴァンツの布陣(筆者作図)

 試合は1-1で閉じ、ギラヴァンツは勝ち点1を獲得した。昨シーズンは強度不足や未熟な連係で試合が作れなかったことを考えると、内容面では随所に進化を感じられるゲームになった。失点シーン以外は守備への切り替えが素早く、ボールを早い段階で取り返すことに成功。ゲームメークの根幹を担うボランチやトップ下がボールに触れる機会も多かった。途中投入の選手がゴールラインのギリギリまでボールを追いかけ、最後まで諦めずに戦ったのも、当たり前といえば当たり前だが、ギラヴァンツが取り戻すべきメンタリティーを見せつけた。

 もちろんワンチャンスを簡単に決められたのは反省点で、サイドアタックを受けた時の基本動作は再確認したい。また、攻撃ももう少しバリエーションを豊かにしなければブロックを築く相手を動かすことはできない。

 「ポジションはゴールに近い位置なのでゴールは意識していたし、永井選手との連係は意識していたが、なかなかチャンスを作りきれずに終わってしまった。そこは練習からやっていかないといけない。最初にピッチに立つ11人、(ベンチメンバーを加えた)18人、さらに出ていない選手も含めて、もっと層を厚くしていくことが大事になる」(井澤)

 キャプテンの井澤はそう話し、チャンスシーンの質と量の向上を誓う。増本監督は試合後の会見で、ボールがスムーズに動かなくなった時間帯の解決方法に触れ、「もっと迷いなくプレーさせられるようにしていきたい」と話した。

 2試合を終えて15位。20チームの中ではまだ下位にいるが、昨シーズンよりも前向きの矢印を持って戦えているのは明らかだ。3月6日にルヴァン杯でJ2大分トリニータと対戦し、リーグ戦では16日に現時点で首位のアスルクラロ沼津と対戦する。力のあるチームとの試合を足掛かりに、一層の成長を目指したい。

ライター/エディター

世界最小級ペンギン系記者・編集者。Jリーグ公認ファンサイト「J's GOAL」レノファ山口FC・ギラヴァンツ北九州担当(でした)。

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