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MLB版「フィールド・オブ・ドリームス」にそれほどワクワクしない理由。どうせなら、あの人を呼んでは?

宇根夏樹ベースボール・ライター
ケビン・コスナーと妻 May 30, 2019(写真:ロイター/アフロ)

 来年8月13日、ニューヨーク・ヤンキースとシカゴ・ホワイトソックスは、「フィールド・オブ・ドリームス」と銘打ち、アイオワ州で試合を行う。エキシビションではない。レギュラーシーズンの試合だ。

 ただ、両チームがプレーするのは、1989年の映画「フィールド・オブ・ドリームス」――原作はW.P.キンセラの「シューレス・ジョー」――の舞台となった球場ではない。その隣に別の球場を建設する。「それを作れば、彼らはやってくる」とは違い、「それを作って、彼らを迎える」

 また、新球場の収容人員は8000人だ。ケビン・コスナーあるいはレイ・リオッタが始球式に登場した場合、試合を生で観戦できるのは、多くて7999人――客席の一つはコスナーかリオッタに用意される――しかいない。ちなみに、コスナーは映画で主人公のレイ・キンセラ、リオッタはシューレス・ジョー・ジャクソンを演じた。ムーンライト・グラハム役のバート・ランカスターは、1994年に亡くなっている。

 チケットの販売についてはまだ発表されていないものの、入手は困難を極めることが予想される。相当な高額にもなりかねない。客席にいるのが、スポンサーに招待された人と、ごく一握りの幸運な(あるいは裕福な)観客となれば、映画のイメージと乖離してしまう気もする。

 もっとも、この企画を否定するわけではない。どうせなら、試合当日は、あの人を球場に呼んではどうだろうか。

 シューレス・ジョーら、ホワイトソックスの8選手は、1919年の「ブラックソックス・スキャンダル」により、球界を追放された。ピート・ローズも、賭博に手を染めたとして――本人の言葉を信じるなら、八百長ではないが――追放処分を受けている。ローズの4256安打は、メジャーリーグ史上最多だ。来年4月、ローズは79歳を迎える。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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