「高速ゆうばり号」の最終運行は9月30日 「攻めの廃線」から5年で消滅する夕張市外へのバス路線
2024年9月30日をもって北海道中央バスが運行する「高速ゆうばり号」が廃止される。これにより夕張市と札幌市を直接結ぶバス路線が消滅するほか、この「高速ゆうばり号」の車両の送り込みを兼ねた岩見沢―夕張間の路線バスも廃止され、夕張市と夕張市外を結ぶバス路線は全て消滅することになる。廃止の理由は慢性的なドライバー不足に加えて運行経費の高騰などから路線維持が困難になったことだという。
昨年の2023年9月30日には、いち早く夕鉄バスが運行する新札幌駅前行のバス路線も全廃となった。この路線廃止にともなって北海道中央バスは、「高速ゆうばり号」の夕鉄本社ターミナルへの乗り入れを開始するが、この乗り入れはわずか1年で廃止されることになる。2024年10月1日以降は、新夕張駅と旧夕張駅方面を結ぶ10往復の路線バスが唯一残るバス路線となる。
10月1日以降は、夕張市は「高速ゆうばり号」の廃止にともなって、夕張市と夕張市外を結ぶデマンド交通を増便するが、その利用に当たっては夕張市役所地域振興課に対して利用者登録票の提出が必要になるなど、利用手続きが必要になることから路線バスに比べて利用のためのハードルが上がる。
一般論としてデマンド交通は、地域外の利用者を排除する傾向があり、利用者はクルマの運転が困難な後期高齢者に集中する傾向がある。こうしたことから、地域交通がデマンド交通1本になってしまうと、観光などによる地域振興がより困難な状況となりかねない。夕張市では2024年の観光入込数の目標を60万人としているが、すでに昨年2023年12月6日に行われた夕張市の定例市議会で厚谷市長は「目標達成は厳しい状況にあることは事実」と答弁しているが、今回の「高速ゆうばり号」の廃止で公共交通機関がより不便となることで、目標達成がより困難な状況となることが懸念される。
夕張市では、現北海道知事の鈴木直道氏が夕張市長時代だった2016年「攻めの廃線」として、夕張市内を南北に走っていたJR石勝線夕張支線の廃線を自らJR北海道に対して提案。2019年3月末を持って新夕張―夕張間16.1kmが廃止された。当時は、JR時代と比べて「バスが増便されバス停も増えたことで便利になった」と喧伝されたが、所要時間はJR時代の28分から49分と2倍近くに伸びたことに加え、運賃も360円から760円に上がったことから、全区間を通しで乗車する利用者は限定的で市民の短区間の利用にとどまっているのが実情だ。
今回の「高速ゆうばり号」の廃止により、夕張の公共交通はより一層不便となることから、夕張がさらに外部から訪れにくい場所となってしまい地域の活力がより低下しかねない。
(了)