SKE48で“歌唱力No.1”の野島樺乃。「唯一無二の存在になって新しいファンの方を連れてきたい」
SKE48を12年にわたって引っ張った松井珠理奈の卒業シングル『恋落ちフラグ』が発売される。エースが抜けるグループの中で、注目されるメンバーの1人が野島樺乃(かの)だ。『AKB48グループ歌唱力No.1決定戦』の第1回で優勝、第3回で準優勝した美しい歌声。加えてスタイルも抜群。歌に賭ける想いや展望をロングインタビューで探った。
小学生の頃に合唱団で喜んでもらえたのがうれしくて
――小2で地元の合唱団に入ったそうですが、その前から歌は好きだったんですか?
野島 小さいときから歌は大好きで、家でよく歌ってました。♪お母さんは誰から生まれたの~(東海地方で流れる『平安会館』CMソング)とか、よく聴く歌の1フレーズを歌っていたと思います。
――歌が好きになる家庭環境もあって?
野島 お母さんがピアノのコンサートに行ったりするのが好きで、家にもピアノがあって、私も昔、習ってました。今は遊びで何となく弾く程度ですけど(笑)。
――音感は自然に磨かれたんでしょうね。自分の歌がイケてると気づいたのは、いつ頃でした?
野島 中学の音楽の授業で歌のテストがあると、友だちが「うまいね」と言ってくれました。合唱団ではみんな歌が上手で、自分が飛び抜けていることはなかったんですけど、私は合唱団を先生が始めたときからいた“1期生”で、ソプラノのソロのパートを任せていただくことは多かったです。
――その先生は劇団四季出身だそうですが、合唱団で歌の基礎を身に付けた感じですか?
野島 そうですね。合宿もしましたし、腹式呼吸や発声方法、口の開け方とか、基礎はめちゃめちゃ学びました。
――どんな曲を歌っていたんですか?
野島 ボランティアで介護施設に行って、おじいちゃんやおばあちゃんに歌ったり、チャリティコンサートをやっていたので、童謡をよく歌ってました。あと、私は昔からディズニーが大好きで、『アナと雪の女王』が流行ったときはすごくハマりました。
――歌手になりたい気持ちも早くから持っていました?
野島 合唱団でソロで歌うと、おじいちゃん、おばあちゃんに「上手だね」と誉めてもらうことがあって、誰かに喜んでもらえるのがうれしくて。大きな夢として「歌手になりたい」と思っていました。
最初は理想とかけ離れたアイドル生活でした
――アイドルにはどんな形で興味を持ったんですか?
野島 小学生のときにAKB48さんがブームで、みんな学校にCDや生写真を持ってきていたんです。お菓子の商品になったりもして、私も話題に乗る感じで触れていました。それで中学1年生になって、芸能界に入りたいと思って、オーディションを受け始めたんです。中でもSKE48は地元ということが大きくて応募しました。
――「歌なら負けない」とも思っていて?
野島 自分の良さを出せるとは思いました。7期生オーディションはダンス審査がなかったこともあって、受けてみました。
――7期生に合格したのが2015年3月で、『歌唱力No.1決定戦』で優勝したのが2019年1月。その間の4年弱のアイドル活動は、イメージ通りに行ってました?
野島 全然違いました(笑)。私は昔から「プライドが高い」と言われがちで、芸能界のことをあまり知らないままSKE48に入って、選抜に憧れていたし、前のポジションに立つことが大事だと思っていたんです。
――オーディションではファン投票1位でした。
野島 そうなんです。お披露目でもセンターに立たせていただきました。そこで、さらに天狗になってしまって(笑)。でも、自分の実力不足もあって、ものごとはそんなにうまく進みませんでした。理想とはかけ離れたアイドル生活をしていた気がします。
――それだけに『歌唱力No.1決定戦』はチャンスという感覚で臨んだとか?
野島 天狗から3年目くらいで逆に自信喪失していたので、「何をすれば自分は目立てるのか?」「自分はSKE48で何を残せるのか?」と考えていました。先にテレビの『ゼロポジ』でSKE48内での歌唱力バトルがあって、それに続く48グループの『No.1決定戦』だったので、自分の中では本当に勝負を賭けていました。
――手応えもありました?
野島 決勝大会で最初に歌った(『リトル・マーメイド』の)『パート・オブ・ユア・ワールド』は気持ちが高まって、楽しく歌えました。でも、ファイナルの『春風』は全然練習した通りに行かなくて、歌いながら「ああ、ダメだ……」と思っていたんです。優勝なんて考えられなかったので、発表で本当にビックリしました。
――練習はかなりしたんですか?
野島 毎日のようにカラオケに通いました。1~2時間歌ったり、フリーでいられる日は時間にとらわれずにずっと歌っていて。休憩もめちゃ長いんですけど(笑)。
『歌唱力No.1決定戦』優勝ですべてが変わりました
――優勝の勢いもあってか、次のシングル『FRUSTRATION』で初の選抜入りも果たしますが、変わったことは多かったですか?
野島 すべてが変わりました。夢だった選抜に入れて、ソロ曲もいただけて、ソロ公演ができて、CMソングも歌わせていただけて……。次から次へとビックリしました。連絡メールが来るたび、いい意味で「エッ?」と目を疑いました。
――自分の認知度が上がったのも感じました?
野島 「野島樺乃って、どんな子?」と聞かれても何もなかったのが、『歌唱力No.1』以後は、“野島樺乃”で検索すると“歌”と出るようになったんです。“歌の子”と認識していただけたのは、すごくうれしいことでした。
――2019年10月に開催された第2回は参加しませんでした。
野島 特に理由はなかったんですけど、自分が今まで、先輩方とか前にいる人たちの背中を追い掛ける側だったので、第1回で優勝して追われる立場になるのはプレッシャーがありました。スパンも短かったので「今回は休もう」と即決しちゃいました。
――大会の模様は観ていたんですか?
野島 観てました。そしたら、めっちゃ歌いたくなりました(笑)。「いいな、楽しそうだな」と思って。
1回休んで参加したら不安や焦りが大きくて
――去年12月の第3回は、また優勝を狙って出場したんですか?
野島 それもありましたし、去年はファンの方々の前で歌やパフォーマンスを披露する機会がなかったので。大きなステージで歌えるなら私も出たいと思ったし、プレッシャーを感じるキャラでもなかったなと(笑)。「歌が好きなら出ればいい」と、軽い感じで出場することに決めました。
――第1回のときのように、たくさん練習を積んで?
野島 第3回のほうが練習したかもしれません。第1回は初めてだったから、「このくらい練習しておけばいいかな」という感じだったんです。でも、私が第2回に出なかった間に、みんなスキルを上げているだろうから、不安でめちゃめちゃ練習しました。
――第1回チャンピオンとして受けて立つ感じではなく?
野島 そういう感じではなかったですね。予選を突破できるか。ファイナリストに残れるか。本当に不安で焦りのほうが多かったので、そんな気持ちが消えるくらい練習しようと思っていました。
――確かに第1回で優勝しただけに、予選落ちしたらダメージがより大きくなってしまいますね。
野島 そうなんです。ソロで歌のお仕事をさせていただいて、聴いてくださる方のハードルが上がっているじゃないですか。そこを越えたパフォーマンスをしたかったんです。
肺活量が少ないのでハイトーンは猛練習
――第3回は、予選ではYUIさんの『Good-bye days』を歌いました。
野島 締切を過ぎるくらい、ギリギリまで悩みました。予選だからと安定して歌える曲にしたら、「挑戦してない」って言われると思ったんです(笑)。自分的にもチャレンジ精神はあるので、あまり歌ったことのない『Good-bye days』を選びました。私的にはめちゃめちゃ難しかったです。
――決勝はまずONE OK ROCKの『Wherever you are』、ファイナルは竹内まりやさんの『いのちの歌』と来ました。
野島 『いのちの歌』は即決でした。前から歌いたいと思っていて。
――「お母さんが大切にしている曲」とのことでした。
野島 それもあるし、私自身、優勝とか考える前に、すごく伝えたい曲だったんです。逆に『Wherever you are』は悩んだんですけど、オケが生演奏だったので、声がバンドに乗るような曲を歌いたくて選びました。
――第1回のとき、生バンドをバックにささやくように歌ったことを評価されました。
野島 私たちはステージでもスピーカーから聞こえる音源に慣れちゃっているので、バンドだとドラムのリズムとか、いろいろなことに気を配らないといけなくて。バラードは一番得意というか好きですけど、ワンオクさんの曲はロック調で男性ボーカルだから、すごいチャレンジでした。
――ロングトーンも聴かせどころでした。
野島 あれは一番練習しました。私、たぶん肺活量は普通の人より少ないくらいなんです。お姉ちゃんと肺活量勝負しても完敗だったので、ヤバイと思って頑張りました。
――結果は2位。
野島 ステージで「悔しいけど、うれしい」と言いましたけど、やっぱり悔しいというか、失った感じというか……。うまく言い表せない気持ちでした。
――優勝したSTU48研究生の池田裕楽さんとは、僅差だったんでしょうけど。
野島 池田ちゃんは私とは歌い方のジャンルが違っていて、3位の(岡田)奈々さんも他のファイナリストの方々も、それぞれ素敵だなと思いました。その中で2位をいただけたのはうれしかったです。1位なら、もっと良かったんですけど(笑)。
洋楽を練習すると自分がカッコよく思えて(笑)
――普段カラオケではどんな曲を歌うんですか?
野島 SKE48の曲も歌いますし、今回決勝に選んだ2曲は毎回歌っています。あとはあいみょんさんとか、最新ヒット曲が多いです。男性の曲も『レイニーブルー』とか歌います。キーは自分で好きに合わせて。
――徳永英明さんの『レイニーブルー』はソロ公演で1曲目でしたね。他のアイドルの曲は歌いませんか?
野島 アイドルの曲って、キーが高いんです。SKE48もそうですけど、かわいい声を聴かせるので。ずっと高い声で行くから、カラオケで歌うのは結構大変で、個人的にはアイドルの曲は聴くほうが好きです。
――ツイッターで「朝からみっちり歌練」と書かれていたりもしますが、最近はどんな練習をしているんですか?
野島 ボイストレーニングに通って基礎的なことをやっていますけど、ノドを大切にしたいと思っていて。『歌唱力No.1』のときは1ヵ月半くらい、ノドに悪い食べ物をセーブしていました。
――辛いものを食べないとか?
野島 それと、緑茶や烏龍茶もあまり良くないらしくて。殺菌効果があるから、声帯に必要な成分が少なくなったりもするそうなので、歌うときはお水が一番いいと聞きました。そこは徹底して、お茶とかは全然飲まないようにしました。
――今、重点的に課題にしていることはありますか?
野島 音域を広げたいと思っています。さっき言ったようにアイドルの曲は高いし、海外の方の歌もそうなので、もっとハイトーンを出せるようにしたくて。あと、今は洋楽を練習しています。洋楽を歌うとグルーヴが出るし、1コ1コのアクセントとかポイントを抑えられて、うまくなると言われたので、聴き込んでは歌っています。
――どんな洋楽の曲を?
野島 アリアナ・グランデさんの『ブレイク・フリー』とか。あとは、アニメ映画の『SING/シング』が好きで、その中の『ドント・ユー・ウォーリー・アバウト・ア・シング』も練習しています。ちゃんと英語が言えているのかわかりませんけど(笑)、洋楽はカッコイイと思いながら歌えるじゃないですか。それで自分がノレるので、楽しくなります。
アイドルでの歌い方は変えています
――自分の歌の強みは何だと思いますか?
野島 何なんですかね? 人からは「声がきれいだね」と言っていただくことが多いです。私自身、透き通った声の歌手の方に憧れます。「きれいに歌うね」と言われることもあって、良くも悪くもクセのない歌い方をしているのかなと思います。
――目標とか憧れの歌手はいますか?
野島 韓国のソロ歌手のIUさんは、声が水かというくらい透き通っていて、めちゃめちゃうまいんです。韓国語がわからなくても何か伝わって感動するので、すごいなと思って憧れます。
――アイドルで歌に惹かれる人はいませんか?
野島 乃木坂46の生田絵梨花さんをリスペクトしています。『FNS歌謡祭』にも出られて、『レミゼ(レ・ミゼラブル)』やディズニーの曲を歌われて、本当に素敵だなと思いました。憧れというのも恐れ多いくらいです。
――樺乃さんもミュージカル志向はあるんですか? 『歌唱力No.1決定戦』での『パート・オブ・ユア・ワールド』は、まさにミュージカルを思わせました。
野島 あの曲は本当にミュージカルみたいな感じで歌っちゃいますね。合唱団でミュージカルもちょっとやっていたので、興味はあります。『サウンド・オブ・ミュージック』を観に行って、映画も好きになって、憧れが強くなりました。舞台はあまり経験ありませんけど、いつか出られたら全力で挑みたいです。
――今まで語っていただいた歌への理想や取り組みは、SKE48で歌うときも繋がっていますか?
野島 歌い方は変えているかもしれません。やっぱりアイドルだからかわいく歌いたいし、太いより細くて女の子らしい声がいいと思うんです。だからガチで歌うというより、ちょっと抑えたりしていて。でも、自分の歌割りでは目立ったほうがいいから、普段の歌い方に戻しています。
MVは目力でカメラを割るくらいの勢いで
――SKE48の新曲『恋落ちフラグ』では、どの辺が聴かせどころですか?
野島 サビに英語の歌詞がザーッと続いて、みんなで歌っています。今までのSKE48になくて苦戦しましたけど、ファンの方もぜひ一緒に苦戦して、覚えてほしいです(笑)。
――MVでは6チームに分かれて踊っています。
野島 私はクールチームで、衣装もカッコ良くて。曲は明るいんですけど、私たちのパートは笑顔NG。ガラッと雰囲気を変えました。
――特に力を入れたことというと?
野島 クールパートは振りもですけど、目力が一番大事と言われました。目からビームを出してカメラを割るくらいの勢いがほしいということで(笑)、そこは意識しました。いつもは笑顔でキャピキャピ踊って、かわいい感じだったので、新しいMVになったと思います。
――今後のアイドル活動では、どんなことを目指していきますか?
野島 やっぱりソロで歌を披露できる機会をたくさんいただけたら、うれしいです。それをきっかけにSKE48に新しいファンの方を連れてこられるようになりたいというのは、最初から思っていました。普段はグループでみんなと一緒にいて、ソロ仕事だと不安になりますけど、1人でも堂々としていられるハートの強い人になれたら。ソロライブも配信でもいいから、またやるのが夢です。
――今度やるならどんなライブにしたいとか、イメージはありますか?
野島 私、MCがとにかくヘタなので(笑)、歌って歌って、ちょっと水分取って……みたいな、MCなしのスタイルでいこうかなと。歌1本で勝負してみたいです。
聴くと立ち止まってしまうような歌を目指して
―一方で、樺乃さんは脚が長くてスタイルも抜群。モデル系の仕事にも意欲はありません?
野島 オシャレもすごく好きです。欲張りですけど、歌きっかけで私を知ってくれた方が、SNSとかで「ファッションも好きなんだ」と知ってもらえるのもうれしいので、インスタグラムも必死に頑張っています。
――他のメンバーは樺乃さんのことを「食べても太らない」と言っています。
野島 みんなそう言いますけど、筋トレは家でやってます。差し入れをいただいたらめっちゃ食べるし、ラーメンも大好きですけど、抑えるところはちゃんと抑えているほうだと思います(笑)。
――SKE48の中で松井珠理奈さんの卒業後にセンターを獲りたいとか、そういうことは考えていますか?
野島 もちろん上は見ています。ただ最近は、「後輩を輝かせたい」とも思うようになりました。上から目線になっちゃいますけど、私も最初は選抜に入ってなかったのが、『歌唱力No.1』がきっかけで入れたから、他のメンバーももっと見つかってほしくて。プッシュする側に回るのもいいかなと。
――それはちょっと早くないですか(笑)? 樺乃さん自身、さらに前に出られると思いますし。
野島 「SKE48で唯一無二の存在になりたい」とファンの方に言っていて、歌の面では一歩ずつですけど近づいていると思います。ソロで歌のお仕事がいろいろできるかもしれない。でも、グループのセンターは1人じゃないですか。その枠に私が入るかと言ったら……。冷めているわけではないですけど、昔みたいに自分のことばかり考えなくなったと思います。もちろん選抜から落ちたら悲しいので、向上心は持っています。
――自分の武器を磨いて頑張っていく感じですか?
野島 そうですね。48グループのファンの方には、野島樺乃といえば歌と言ってもらえても、いざ地上波の番組に出たりしたら、まったく無名なわけですから。そこはちゃんと自分を客観的に見ておきたいです。
――自分が見つかって歌を聴いてもらえれば、惹き付ける自信もありますか?
野島 頑張って、そんな自信を付けます! 「この子の歌を聴いたら立ち止まってしまう」と言っていただけるように、歌えたらいいなと思います。
Proflie
野島樺乃(のじま・かの)
2001年9月6日生まれ、愛知県出身。
2015年にSKE48第7期生オーディションに合格。同年に劇場デビューして、正規メンバーに昇格。2019年に『AKB48グループ歌唱力No.1決定戦』で優勝。25thシングル『FRUSTRATION』で初選抜。ソロ曲『夢の在処へ』も収録。湖山医療福祉グループのCM曲『つながるいのち』を歌う。2020年に『第3回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦』で2位。
SKE48 松井珠理奈卒業記念 27thシングル
『恋落ちフラグ』
2月3日発売
TYPE-A初回盤/通常盤(CD+DVD) 1676円(税込)
TYPE-B初回盤/通常盤(CD+DVD) 1676円(税込)
TYPE-C初回盤/通常盤(CD+DVD) 1676円(税込)
劇場盤(CD) 1047円(税込)