よくわからない人事用語「コンピテンシー」って何だ?
前回の記事では、世界でHRコンピテンシーモデルの議論が活発化しているという話をしました。
しかし、「コンピテンシー」ってそもそも何なんだという声が聞こえてきそうです。
そこで、世界の最新HRコンピテンシーモデルを紹介する前に、そもそもコンピテンシーというのは何なのかを解説して参りたいと思います。
日本でコンピテンシーが流行ったのは2002年頃だったと思います。当時、団塊世代が高齢労働者になっていく過程で、人件費の高止まりが経営課題となり、成果主義人事の導入が行われていた時代です。外資系のコンサルタントが米国で流行っていた「コンピテンシー」という概念を認本に取り入れようとしました。最初にコンピテンシーを日本に取り入れようとしたコンサルタントが、この「コンピテンシー」を日本語に訳す際に、当時は成果主義人事がうまくいっていなかったので、成果主義を補完するものとして「成果をあげるための行動特性」と訳し、成果主義はコンピテンシーとセットで導入しないとうまくいかない、成果に応じた業績配分と成果につながる行動の両方を定義すれば、社員は成果志向になるとともに、成果を求める行動をするようになるというような論理でした。
しかし、いまここで説明したコンピテンシーというのは、従来の正しいコンピテンシーの使い方とは違うものです。
当時のコンサルタントが日本に導入して商売にしたかったから、成果主義を補完する人事評価制度としてコンピテンシーを入れてしまった。ここで、日本人のコンピテンシーに対する理解がうまく進まない原因をつくってしまったと思います。
コンピテンシーは過去を評価する人事評価制度ではなく、未来の可能性や育成の指針を示すために使われるものです。
つまり、コンピテンシーというのは、本来はアセスメント(将来の可能性を評価するもの)の道具です。よって、コンピテンシーは採用や管理職登用の際に、人材を見極めるためによく使われます。例えば、採用の際には、自社で活躍できる人材としての要素を持っているかどうか、管理職登用の際には、管理職として活躍できる人材としての要素をもっているかどうか、そういったものを見極めるために、コンピテンシーは開発されました。
実際に業務を観察した際に、どのような要素を持っている人がハイパフォーマー(高業績者)なのかを調査して、大切な要素をコンピテンシーとして定義します。そして、その定義を使いながら、人の可能性を見極めていきます。これをアセスメントと呼びます。
また、この定義は人を見極めるときだけではなく、人材育成の際の指針としても活用できます。
例えば、教育体系を整備するときに、コンピテンシーを基軸に教育研修を準備していくと、その会社で必要とされる要素を網羅した教育体系ができます。コンピテンシーは教育にも使われるものなのです。
未来を評価する道具、育成の指針となる定義が本来の「コンピテンシー」だということがわかりましたでしょうか。
これを、未来の可能性判定ではなく、過去の行動実績を評価する人事評価にいれるということをしてしまったのが2002年頃の日本の人事がやってきたことです。言い換えれば、この時代は、日本の人事がコンサルタントに言われれるがままに評価制度改定と称して、コンピテンシーの導入をした時代です。
すでに昔にコンピテンシーというものを、巷の本などで学習していた人は、コンピテンシーを人事評価制度だと思っている人がいると思います。まずはこの理解を改めて、「コンピテンシー」というものを認識しなおすことが必要です。
一方で、コンピテンシーという言葉をはじめて知った、あまり馴染みがなかったという方は、コンピテンシーというのは、未来の可能性を見極めたり、成長のためのポイントを示すものなのだと理解しておいてくだされば良いと思います。
これらを学んだ上で、今回話題にしている「HRコンピテンシー」を理解すると・・・
「HRコンピテンシー」とは、人事部門のメンバーとして、どのような要素をもっていると成果をだしやすいのか、また、どのような要素を鍛えると優秀な人事部門のメンバーになれるのかを、明確に示したものということになります。
よって、人事部門の方々はコンピテンシーを理解すると、自身の役割や課題が見えてくるという効果を得ます。
「HRコンピテンシー」を知りたくなってきましたでしょうか?
次回は、実際に議論されているHRコンピテンシーの内容を、具体的にご紹介して参ります。
(つづく)