アマゾンとグーグルが「イエデン」開発か
米ウォールストリート・ジャーナルなどの海外メディアの報道によると、米アマゾン・ドットコムと米グーグルはそれぞれ、自社の家庭用音声アシスタント機器に電話機能を追加したいと考えている。
年内に新機能搭載か
これを実現するには今後、さまざまな問題を解決していく必要があるものの、早ければ今年中にも新機能が提供される可能性があると、事情に詳しい関係者は話している。
アマゾンは2014年11月から米国でスピーカー型の音声アシスタント機器「Amazon Echo」を販売している。これは「Alexa」と呼ぶ、人工知能(AI)を使ったクラウドベースのアシスタントサービスを利用できるもので、米アップルがiPhoneで提供している「Siri」と同様に音声でさまざまな命令が行える。
アマゾンのAlexaでは、音楽を流したり、ニュースや天気予報を聞いたり、電子書籍を朗読させたり、アマゾンでショッピングしたり、といったことができ、すでにAlexaに対応した外部企業のサービスも多数用意されている。
これにより家電のスイッチを入れたり、銀行口座の残高を確認したり、宅配ピザを注文したり、配車サービスを依頼したりすることができる。
一方、グーグルもEchoに対抗するスピーカー型機器「Google Home」を昨年11月に発売。「Google Assistant」と呼ぶAIアシスタントサービスで、音楽の再生や、グーグル検索などさまざまな機能を提供している。
激化する新機能追加競争
こうして両社は利用者が家の中で、スマートフォンやパソコンの画面を見ることなく、音声だけでさまざまなサービスを利用できるようにしている。ウォールストリート・ジャーナルによると、その機能追加競争は激化している。
そして両社が、固定電話(いわゆるイエデン)のような機能を追加し、利用者が友人や店舗などに手軽に電話をかけられるようにすることは自然な流れだと事情に詳しい関係者は話している。
報道によると、アマゾンはEcho発売の翌年にこの機器向け電話機能の開発を始めていた。しかしその後技術者の流出などがあり、同社における開発は停滞したという。
一方グーグルはアマゾンからほぼ2年遅れてアシスタント機器市場に参入したが、同社には約10年に及ぶオンライン通信サービスの経験があり、スマートフォン向けOS「Android」の一環として音声認識やトランスクリプションのソフトウエアも手がけている。
ただ、家庭用アシスタント機器に電話機能を追加することについては、プライバシー侵害への懸念、電気通信規制、緊急通話への対応といった課題があり、アマゾンとグーグルはそれらを解決していかなければならないだろうとウォールストリート・ジャーナルは伝えている。
市場規模、2020年には21億ドルに
なおこうした音声アシスタント機器は消費者に受け入れられており、この市場は今後拡大していくと見られている。例えばアマゾンは昨年末に公表した資料で、Alexa対応機器の販売が好調だったと報告した。
Alexaは前述のEchoのほか、その小型版「Echo Dot」や、映像配信端末「Fire TV Stick」、タブレット端末「Fireタブレット」などで利用できるが、これらの製品はいずれもアマゾンの全商品カテゴリーを通してベストセラーリストの上位に入ったという。
同社によると、Echoシリーズの販売は前年実績の9倍以上となった。「とりわけEcho Dotはギフトとして購入された商品のトップとなり、2016年3月の初代モデル発売以来、世界中で数百万台が売れた」と同社は報告している。
米国の市場調査会社、ガートナーは昨年公表したリポートで、この市場はまだ本格的に開花していないと指摘していた。
ただ、今後、競合機器の登場とともに対応するサービスが増え、2020年には市場が活気付くと同社は予測。市場規模は2015年の3億6000万ドル(約409億円)から2020年には21億ドル(約2386億円)にまで拡大すると分析している。
(JBpress:2017年2月17日号に掲載)