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センバツ出場校決定。高嶋・馬淵両監督が大阪桐蔭包囲網?

楊順行スポーツライター
春は1994年(写真)以来の優勝を狙う智弁和歌山・高嶋仁監督(写真:山田真市/アフロ)

 3月23日に開幕する第90回選抜高校野球大会。根尾昂をはじめ圧倒的な戦力を擁する大阪桐蔭が、第一神港商(1929〜30)、PL学園(81〜82)以来3校目の春連覇を目標にする。2008年夏以来、10年間の春夏の甲子園で5回の優勝は、21世紀の横綱にふさわしい。率いる西谷浩一監督も通算44勝と、ハイペースで勝ち星を積み重ね、いまや歴代6位だ。だが……。

「次は負けるわけにはいかん」

 と闘志を燃やすのが、春夏通算37度目の出場が決まった智弁和歌山・高嶋仁監督だ。

なにしろ17年は、春季近畿大会(●3対6)、夏の甲子園(●1対2)、さらに秋季近畿大会(●0対1)と、大阪桐蔭に3連敗しているのだ。昨夏の甲子園では、ヒット数では上回り押せ押せの展開ながら、ミスで敗れているだけによけいに悔しい。ただ秋季近畿大会の決勝で惜敗したあとは、

「桐蔭……これまではあまり対戦していなかったけど、なぜか今年はよう当たったね。まあ、強いところと当たるだけでも幸せかな」

 と言いながら、根尾のホームランによる1点のみに抑えたことで「ウチのバッテリーも自信を持ったはず」と手応えも感じていた。春夏合計の出場回数も、通算64勝も監督として歴代トップ。だがセンバツの出場が決まると、

「記録のことより、馬淵さんと連合して西谷君をやっつけなあかん」

 とぶち上げた。それを受けた明徳義塾(高知)の馬淵史郎監督は、「そう。倒さな、あかんね」と自信ありげ。昨秋の明治神宮大会を制し、3年連続のセンバツ出場で

「投打で軸がある。調整は順調で、目標は優勝」

明徳にはタフネス右腕・市川が

 馬淵監督の甲子園49勝は歴代5位だが、桐蔭・西谷監督の猛追を受けている。そこで頼もしいのが、

「50勝をプレゼントするだけではなく、優勝まで勝ち続けます」

 と語るエース・市川悠太の存在だ。実質エースとして、昨年春夏も甲子園に出場したが、春は初戦、夏は2回戦敗退と悔しさを味わった。そして全部投げるつもり……と宣言した昨秋。最速145キロのストレートと、鋭角に曲がるスライダーを武器に、市川は明徳の公式戦10試合をすべて一人で投げ抜いている。3試合で2失点だった四国大会終了が11月5日で、11日が神宮大会初戦という強行軍。準決勝と決勝は13、14日と連投だった。しかも、準決勝の投球中に右手中指のツメを割りながら、創成館(長崎)との決勝はわずか4安打、三塁を踏ませない完封劇である。それでも、「まだ通過点。甲子園の優勝が目標ですから」という強気さがいい。

 そうそう、桐蔭包囲網もう一方の智弁和歌山には、右ヒジ疲労骨折で昨秋は離脱していた主砲・林晃汰が復帰と、役者がそろった。智弁・高嶋、明徳・馬淵、桐蔭・西谷。実はある雑誌がかつて、この三者の鼎談を企画した。取材したのは知人だったが、その内容がなかなかおもしろい。

高嶋 (前略)和歌山からも選手を次々持っていくんやからなぁ(笑)。

西谷 いえ、誤解ですよ。和歌山の中学生は、智弁に行きたくても(高嶋)先生のところは学年10人(の少数)で……(後略)

馬淵 四国や九州からもようけ行っとるなあ(笑)。

 とまあ、大先輩二人がタレントをそろえる大阪桐蔭をおちょくっているわけだ。過去甲子園での大阪桐蔭の対戦は、智弁和歌山が1敗、明徳義塾が1勝2敗。さてさて、この春の対戦はあるのだろうか。いずれも優勝候補、願わくば準々決勝以降での激突が見たい。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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