有吉弘行と蛭子能収の再会企画を振り返る 有吉「蛭子さんは本当に感動を嫌う」
「長いトンネルを抜けた気がします」
ゴールデンタイムから再び深夜に戻った『有吉クイズ』(テレビ朝日)。その時間帯移動を記念して放送された特別編(9月9日放送)でMCの有吉弘行は笑って言った。
その言葉通り、野田クリスタルら力自慢の芸人らがただパチンコ玉の入った箱を持ち上げる「パチンコ玉持ち上げクイズ」といったゴールデン時代ではなかなか放送できなかったシンプルでバカバカしい企画がおこなわれた。
そして10月1日、いよいよ深夜レギュラーが再開された。
この日おこなわれた企画のひとつも「あいつ、本当は強いんじゃないか?クイズ」と題し、本気を出したら強そうな芸人4名(ビックスモールン・ゴン、いぬ・太田、クールポコ。・せんちゃん、ZAZY)が、プロレスなどで力比べでおこなわれる手四つで対戦するというこれまたバカバカしいもの。
当初、有吉は「今までバラエティで見たことがないっていうことは、たぶんやっても面白くないんじゃないか」と企画に懐疑的だったが、対決が始まると思わぬ激闘に「絞れ!」などと声を上げ観戦。
「名勝負ばっかり!2023、伝説の回!」「もう1回ゴールデンに行かせてもらいたい(笑)」「手四つのプロデューサーになりてぇ!」などと有吉が興奮するほど、大いに盛り上がった。
そして、この日の前半に放送されたのは、「有吉プライベート密着クイズ」。「蛭子さんにも会いました!!」と副題がついているように有吉と蛭子能収が約半年ぶりの再会を果たした。
病気公表後、初めての再会
『有吉クイズ』では、定期的に有吉と蛭子が会う企画を放送してきた。
最初は、深夜レギュラー第1期(2021年10月5日~2022年3月29日)の初回から2週にわたり放送された「有吉のプライベート密着クイズ」(蛭子が登場したのは10月12日放送の後編)。
実は特番時代の初回(2020年1月9日)にも「蛭子能収の食レポクイズ」という企画も放送されていたが、この年の7月9日放送の『主治医が見つかる診療所』(テレビ東京)で蛭子はレビー小体病とアルツハイマー型認知症の合併症であることが判明しそれを公表した。
蛭子本人は「そういうのを秘密にするのもおかしな話だし、隠し事は好きじゃない」(『あさイチ』2021年9月21日)と公表した理由を語っているが、それまでバラエティ番組でやってきたからというある種の恩義もあったからではないか。
再ブレイク直後の『アリケン』(テレビ東京)などを筆頭に、何度となく蛭子と共演して「盟友」ともいえる有吉は蛭子の公表を受けて「ご本人とご家族がOKなら出るっていうわけにはいかないのかね?」「蛭子さんまだまだ働きたいだろうし。またご一緒したい」(『かりそめ天国』2020年7月17日)と語っていた。
しかし、蛭子は認知症関連の番組を除いてバラエティ番組へ呼ばれることがほぼなくなった。バラエティ番組へ多大な貢献をしてきたにもかかわらず、バラエティ番組で病気を公表したことで、いわば“アンタッチャブル”な存在になってしまっていた。そんな状況に対して憤りもあったのかもしれない。
有吉は有言実行するかのように番組がレギュラー化すると真っ先に蛭子に会いに行ったのだ。
蛭子はこの日、有吉の結婚祝いに夫婦を描いた絵をプレゼント。
「すげえ!ヘタ!」と笑いつつ心底嬉しそうな有吉。
「下書きも消さずに嬉しい!最高!うわー、カッコいい!」
本当に素敵な2人のやりとりだった。
定期的に蛭子に会いに行く有吉
翌年4月12日には「有吉と蛭子さん2022春」と題して蛭子能収と半年ぶりに再会。
前回、結婚祝いに描いてもらった夫婦の似顔絵はいい額に入れて家に飾っているという有吉の提案でお互いの似顔絵を描くことに。
軒先に座って無言でペンを走らせている光景に、スタジオで見ているパネラー陣も「『最強のふたり』みたい」(盛山)、「めちゃくちゃ泣ける映画。最高の邦画でしょ、これ!」(せいや)と大絶賛していた。
さらにゴールデンレギュラー初回(22年10月25日)にも「有吉と蛭子さん2022夏」として再会。
有吉の提案で売店で買い物をしてプレゼント交換することに。渋谷が描かれたTシャツをプレゼントする有吉に対し、エコバッグなどとともに「有吉さんありがとう」と手書きの似顔絵つき手紙を添える蛭子。
2人は蛭子の希望でボウリング場に。最初は投げ方がわからず「直ガター」などをしていた蛭子だが、3投目になると早くもコツをつかんでいいフォームに。が、すぐに有吉が「飽きました?飽きましたね?」と察知したように、既に満足気な表情に。
「仕事は早く終わったほうがいい」「ギャラは一緒ですから」という有吉にニヤッと笑いながら「そうだね」と同意する蛭子だが、どこかまだ一緒にいたいなという表情にも見えた。
150万円と評価された共作
そして今年5月23日にも「2023春」として再会。
この回では、現代アートのギャラリーで絵を見た後で、気持ちが乗ってきたら一緒に絵を描くことに。
村上隆やZOEなど色鮮やかな絵に反応する蛭子。いざ、絵を描き始めると最初はZOEの絵を真似して描いていた蛭子だが、有吉と一緒に描くことでだんだんとスイッチが入っていき、往年の蛭子の画風になっていく。自発的にペンを動かし始めた蛭子を息を飲むように見守る有吉。
時間が経つごとに蛭子の筆が止まらなくなる。
「売れると良いですね、1000万くらいで。金儲けしましょう」
そう言って笑う有吉に微笑む蛭子。
そんな蛭子の描いた絵に有吉が色を塗る共同作業。自宅に持ち帰り彩色する有吉の、その丁寧な仕事っぷりに蛭子への深い思いが感じられる。
アートオークションの専門家にその価値を見てもらうことに。
誰が描いたかを知らない副社長が「漫画の影響があるのか」「わからない部分があるのが魅力」「一つの物を極めた人が描かれている感じ。わからないものを描いているとしたら、本人もわからないかも…。それを素直に描けるのは芸術的な領域を極めた人。昨日、今日の人の絵じゃない。成熟したいろんな経験を積んだ人の絵」と評価。事前に知らされていた社長が「アートとしての価値はない」とする一方で、この副社長は150万円の価格をつける。
その評価を蛭子に伝えると「高いですね。150万、デカいねえ」と嬉しそうにしつつ、すぐに「売る」と言いそうなところ、「売りたくはないね」と答える。
その真意はわからないが、有吉との共作を評価額以上の価値だと感じていたのかもしれない。
最後の展覧会
そして今回、9月7日から開催された「根本敬 presents 蛭子能収『最後の展覧会』」に向かうことに。節目節目で必ず再会企画をおこなうところに有吉の強い思いを感じる。
展示された20点の作品は新作。それを見て「一緒に描いたときよりもオシャレになった感じ」と感想を漏らす有吉。
そこに蛭子が登場し約半年ぶりの再会を果たした。
「スゴいですね!ビックリしました…高くて!」
有吉が作品につけられた値段をイジると突っ伏して笑う蛭子。
作品に対しそれぞれの解釈が違うと「売れればいいですもんね」と言う有吉に「オカシイ」とハマって笑いが止まらなくなる蛭子。
さらに「私はバカになりたい」と題された絵を見て「もうなれてます」とイジる有吉に「ちょっと涙が出てきた」と嬉しそうに笑う。
「めっちゃイジられるの好きなのよ」
スタジオで改めて見ていた有吉は微笑む。
「またお元気で」と有吉が締めようとすると、そんなタイミングで「ちょっとションベンだけ…」と言い出す蛭子。
この対面を振り返って愛おしそうな表情で有吉は言った。
「(蛭子さんは)本当に感動を嫌うのよ(笑)」
(※この「有吉プライベート密着クイズ 蛭子さんと再会も!」「あいつ、本当は強いんじゃないか?クイズ」の模様は、TVerで視聴可能)