「いつの日かやって来る!」自衛隊の「竹島奪還シナリオ」に備える韓国
昨日(22日)の「竹島の日」は平穏だった。
管轄の島根県では県主催の記念式典が開かれた。例年ならば、韓国から抗議団が来日し、会場周辺で「独島(竹島)は韓国の固有の領土である。式典を中止せよ」と騒ぐのだが、今年は「コロナ禍」もあって自粛したのか、そうした騒動は見られなかった。
日韓関係は史上最悪と言われている時だけに「領土問題」は一方対応を間違えれば、両国民の意思に反するような危険な道に陥いる恐れがある。
ここ数年は日本の哨戒機への韓国艦船のレーダー照射や韓国のGSOMIA(日韓軍事情報包括保護協定)破棄の動き、さらには200カイリの接点地域内(排他的経済水域)における海上保安庁と韓国海洋警察庁との間で睨み合いなどが相次ぎ、政治、経済だけでなく安全保障の面でも対立する場面がみられるだけに要注意だ。
(参考資料:海上で睨み合う海上保安庁VS韓国海洋警察庁 憂慮されるのは一触即発だった2006年の再現)
そうした折、竹島に自衛隊が「侵攻」するシナリオと、それに対応する韓国側の戦力などを明示した内部文書を韓国軍が作成し、昨年12月に韓国国会に報告していたことが明るみに出た。
この問題を追及した野党「国民の力」の議員や「東亜日報」など韓国メディアの報道を総合すると、自衛隊の「奪還シナリオ」は以下、3段階の作戦から成っていた。
第一段階では竹島への上陸条件を整えるためサイバー攻撃を仕掛け、島を封鎖する。同時に主力部隊を上陸させる前段階として先遣部隊を東島(竹島は東島と西島の二つから成っている)に浸透させる。
第二段階ではイージス艦1隻と潜水艦2~4隻、F-15系列の戦闘機と早期警報統制機、電子情報収集機などを動員して制空・制海権を確保する。
第三段階ではおおすみ型輸送艦(8900トン級)と輸送ヘリ(CH-47)、ホバークラフト(LCAC)などを投入し、東島に2個小隊を浸透させる。また、ボートを利用し、別途に1個半小隊を西島に上陸させ、住民宿舎を接収する。
これに対して島を実効支配(日本からすれば不法占拠)している韓国軍の対応はF-15K系列の戦闘機とイージス艦,「玄武」弾道ミサイルなど陸海空の主力兵器を動員して防御にあたることにしている。
これ以上のことは何一つわかっていない。「(シナリオは)駐日武官からの情報に基づき把握したものなのか」との野党のカン・テシク議員の問い合わせに対しても国防部は「具体的な内容は差し控えたい」と回答しなかった。
「独島防御作戦」は敏感な事案だけに軍の対応を公にすれば外交の火種になるだけでなく、日本を利することになりかねないとの判断が働いたようだ。実際に毎年実施されている韓国軍の「独島防御訓練」も誰が見ても、「日本」を想定していることは自明だが、韓国軍は訓練目的に「日本」を明示したことは一度もない。
(参考資料:竹島で日韓軍事衝突の可能性は?「防衛白書」に警戒心を強める韓国)
韓国国防部は「実際の作戦とは無関係の参考資料で、日本の兵器研究家が発表した仮想の侵攻シナリオを参考にした」と説明しているが、韓国軍が引用した参考資料とはどうやら軍事研究家である三鷹聡氏が軍事雑誌「軍事研究」(2012年12月号)に寄稿した「2020年、自衛隊の竹島奪還作戦」記事のようだ。
韓国にも韓国人が書いた「仮想シナリオ」がある。古くは1997年にペ・ジンス軍事問題研究所専任研究員が「世界の諸島紛争と独島シナリオ」という論文を発表している。「これは単なる空言ではない」と前置きし、韓国政府に対して軍事紛争という「最悪のシナリオ」に備えて取るべき幾つかの方法まで示唆していた。
ぺ研究員は日本の竹島に対する武力挑発は国際法上違法ではないこと、日本が国際世論を無視してまで武力行使をする可能性は低いが、決して油断しないことを国民に喚起したうえで「最悪のシナリオに備え、独島警備を警察から軍に代替し、軍人の駐屯も検討すべきである」と提言していた。
また、今から12年前も「独島専門家」と称される元判事が似たような内容の本を出しており、さらに日本が韓国に輸出厳格化措置を取り、ホワイト国から除外したことでGSOMIA破棄の動きが表面化した一昨年(2019年)にも駐日大使館で二等書記官、一等書記官、参事官、公使を務めた元外交官が「日本の5次韓半島侵略」という本を出版している。
日本国内では日本が武力を行使して「竹島」を奪還する可能性は低いとみられているが、韓国軍が常に来るべき「有事」に備えていることは間違いなさそうだ。