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竹島で日韓軍事衝突の可能性は?「防衛白書」に警戒心を強める韓国

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
竹島の領空を侵犯したロシア機(提供:防衛省統合幕僚監部/ロイター/アフロ)

 「尖閣列島」や「北方領土」と同じように「竹島」(韓国名:独島)も「歴史的にも国際法的にも日本の固有の領土」と言うのが日本の一貫した立場、主張である。しかし、現実には半世紀以上も日本からすれば韓国に不法占拠されているのが実情である。

 実際に、韓国からは年間20万人近くの観光客が島を訪れ、また、毎年、与野党問わず、外交委員会や国防委員会所属議員らが競って上陸し、加えて1986年以来毎年、韓国軍と海洋警察合同による「独島防御訓練」が実施されている。今年も8月下旬に駆逐艦、護衛艦、警備艦などの艦艇、F-15K戦闘機、海上作戦ヘリ、P3C哨戒機、さらには初めてイージス艦まで動員しての大規模訓練が行われたばかりだ。

(参考資料:やるのか?やらないのか? 韓国軍の「独島(竹島)防御訓練」

 正直、日本は韓国の「実力行使」に抗議する以外に術はない。仮に日本が「竹島防御訓練」という名の下に海上自衛隊と海上保安庁が日本海で同様の軍事的な対応を取れば、韓国の反発次第では軍事紛争を誘発しかねない。また、尖閣諸島では国際社会に「現状の維持」を訴えながら、竹島では力による「現状変更」を求めるのは自己矛盾しているとの批判を浴びかねない。従って、手も足も出せないのが現状である。

 しかし、今後は、これまでとは違って、もしかすると手を出すかもしれない。一昨日(27日)に発表された防衛白書がそのことを暗示している。「2019年防衛白書」には竹島上空で衝突が発生した場合、航空自衛隊の戦闘機を緊急発進させる可能性について触れているのである。

 今年の防衛白書には竹島を青色のマークで囲み、島周辺が日本の領空であることを強調していた。竹島の領有権明記は小泉政権下の2005年以後15年連続である。これまでと違うのは、有事時、即ち「日本の主権を侵害する措置」の項目で竹島上空に航空自衛隊戦闘機を投入することが追加されていることだ。即ち、自衛隊は竹島で軍事力を行使できることになったというわけだ。

 今年の防衛白書は日本の領空問題との関連で「自衛隊法第84条に基盤を置き優先的に航空自衛隊が対処している」として今年7月に発生したロシアのA-50早期警戒管制機の竹島上空侵犯を取り上げていた。だが、ロシア機が竹島上空を侵犯した際、実際に緊急発進し、警告射撃を行ったのは韓国軍機で、航空自衛隊機は「出動」しなかった。日本が取った措置は外交ルートを通じたロシアと韓国への抗議のみであった。特に日本にとっての屈辱は、ロシア政府がこの問題で韓国とは協議に応じたにもかかわらず、日本をないがしろにしたことだ。

 自衛隊法第84条には外国航空機が日本の領空を侵入した場合、自衛隊部隊が対処し、「着陸や(上空から)退去に必要な措置を講じること」が規定されている。領空侵犯の憂慮がある外国の飛行機を発見すれば、戦闘機などを緊急発進させることができることになっている。こうしたことから今後、類似した事件が起きた場合に日本が竹島付近まで出動する可能性は否定できない。実際に航空自衛隊の戦闘機は昨年、領空侵犯に対応するため999回緊急発進している。その大多数は対中露で、このうち中国航空機に対しては638回、ロシアの航空機に対しては343回となっている。

 「防衛白書」の新たな記述について韓国では「国内向けの政治的メッセージに過ぎない」と冷ややかにみる向きもある。確かに、同盟国同士の軍事衝突は日米韓3か国協調体制を基軸とする米国主導の北東アジア秩序への挑戦となりかねないだけに非現実的とみるのが妥当な見方かも知れない。

 しかし、その一方で、日本が竹島の領有権を国際社会に訴える術として戦闘機を近接させることもあり得ることから武力衝突の可能性も排除できないとの警戒論もある。韓国の外交部と国防部がそれぞれ駐韓日本大使館の公使及び武官を呼び、抗議したのはそうした警戒感の表れでもある。

 韓国のファン・ジュフン平和党議員が公表した海洋警察庁の資料「日本海上保安庁艦艇の独島付近海域巡察及び出現」によると、海上保安庁の巡視船は今年1~8月まで73回にわたって竹島周辺を巡察している。昨年同期間(56回)よりも30.3%も増えていたことがわかった。韓国が警戒心を怠らない理由の一つとなっているようだ。

 日韓は外交、政治、経済にとどまらず、安全保障問題でもレーザー照射事件、旭日旗掲揚問題、韓国による日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄などにより信頼関係が著しく棄損し、対立さえ深まっている。

 仮に11月22日までにGSOMIAが復活せず、韓国が12月に再度予定している「外部勢力が韓国の領土である独島を不法に占拠する」ことを想定した「独島防御訓練」を強行した場合、果たして日本はどう出るのだろうか?

(参考資料:韓国が「竹島」を自国の領土「独島」と主張する16の根拠

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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