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城 彰二のストライカー目線〜オーストラリア戦後、森保ジャパンのストライカーとして注目すべき選手とは〜

城 彰二元サッカー日本代表
(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

サウジアラビアに2‐0で勝ち、オーストラリアには1-1のドロー。

強豪相手にアウェイで勝ち点3を取れたのは良かったが、ホームで勝ち切れなかったのは、戦い方を含めて反省すべき点が多かったと思う。また、個々の選手もサウジアラビア戦では遠藤航が素晴らしいプレーを見せる一方、オーストラリア戦ではもうひとつという感じの選手が多かった。

サウジアラビア戦で、後半31分から出場してきた小川航基が36分にセットプレーで相手を突き離す追加点を奪えたのは、非常に大きかった。小川はチームを助けたし、自らの価値を高めたゴールだったと思う。ただ、チームのエースに成り得るかというとまだまだだろう。スピードがあるし、テクニカルな選手だけど、なかなか流れの中でゴールを奪えない。どっちかというと使われるタイプの選手なので、パスの出し手とうまく呼吸が噛み合わないと良さが出ない。代表チームでは出し手との関係性を含め、タイミングのすり合わせがまだできていないので、もう少し試合に長い時間出場して呼吸を合わせていくことが必要だろうし、小川自身ももっと試合でいろいろ試していきたいと思っていると思う。あと、1トップなのでポストプレーが求められるけど、そこもまだまだかなという感じがする。前に張っているだけではなく、ある時は引いて来てボールを受け、また前に行くとか、ボールを引き出すためにフリーランニングをしたり、FWとしてやるべきこと、やらないといけないことが今ひとつできていない。プレーを見ていると「俺に任せろ」というよりは、まだちょっと遠慮している感がある。これから最終予選が中盤、終盤戦に入っていき、ワールドカップが近づいていく中で、自分が持っているものを出して、足りないところを突き詰めていかないと、「こんなもんなの?」で終わってしまう可能性がある。東京五輪組で堂安律との関係性はいいので、そういうところをうまく使いながら自分の良さをもっと発揮してほしいと思う。

写真:YUTAKA/アフロスポーツ

上田綺世は、見ていると体が大きくなった感じがする。たぶん、筋肉をつけて当たりなどフィジカルで負けないようにと考えているんじゃないかな。その影響のせいか若干スピードが落ちている。体が重たくなった分、自分が思うような反応ができず、パスを受けてコントロールしてからシュートという流れがいつもより0.5秒ぐらい遅い。オーストラリア戦は、単純なミスが多かった。うしろからのプレッシャーが厳しいのもあるが、ポストできちんとボールが収まらないし、動きも体重の影響でもうひとつ遅い。判断ミスもあった。後半、フリーで抜けて右サイドに久保(健英)がフリーでいた。そこに出すのかなと思ったらあえて左サイドに出して、チャンスをふいにした。上田には見えていたのだろうけど、久保の方がポジションが良かっただけに、そういう細かい判断ミスが得点のチャンスを失うことになる。結局、この試合では上田を起点にできなかったので、日本は攻撃のリズムを作ることができなかった。バーレーン戦で2点取って覚醒したかなと思ったが、エースになるために継続して得点を重ねていかないと、自分の席などすぐに奪われてしまうだろう。

写真:YUTAKA/アフロスポーツ

三笘薫は、そんなに良くなかった。

カットインしてからのシュートは見せ場のひとつだったが、枠に行かず相手DFに当たったり、もうひとつ精度がなく、怖さがなかった。三笘の良さは、ドリブルから仕掛けだけど、シュートの精度が高いところがポイントのひとつ。その決定力が怖さに繋がるのだが、最終予選では4試合で、まだ中国戦で上げた1点のみ。彼のポテンシャルからすれば、もっと取れていい。オーストラリア戦はスペースがなくて、厳しい状態だったし、ボックス内も密だったので、良さを発揮するのは難しかったが、期待値が高いだけに個の違いと連動で打開するプレーを見せてほしかった。

写真:REX/アフロ

中村敬斗は、自分の持ち味を発揮したと思う。高い位置で相手を引き付けながらドリブルしていたが、オーストラリアに非常に効果的だった。相手のオウンゴールを誘発させたクロスは、グラウンダーの速いボールだったが、当たれば何かが起きるのを考えて入れていた。そこを通れば上田が左足で押し込むという流れも出来ていた。三笘が警戒される中、途中出場した中村が違いを見せたのは、オプションとしてはすごく大きいし、今後はこの二人を一緒に置いてもおもしろいと思う。

攻撃全体でいえばドリブル突破とクロスが多かったが、中国戦やバーレーン戦に改善した連動での崩しが今回はもうひとつだった。みんな、足元でもらってそこからどうしようかって考えてプレーしている感じだったので、それじゃ相手に詰められるし、ボールが繋がらない。オーストラリアのようにあれだけがっちり守られると、崩すのは難しいが、3人目の動きなど、連動した攻撃でなんとか崩していこうという姿勢が物足りなかった。相手が強いと個だけじゃなかなか対応ができないので、そこをどれだけ突き詰めてやれるか。疲れていても、スペースがなくてもやっていかないとなかなか本物にならない。また、クロスも精度を欠いていたので、なかなか得点に繋がらなかった。オーストラリアはサイドはやられてもいいからボックス内を固め、高さとパワーを活かした守備でクロスボールを跳ね返していた。あれだけ密集している状態だとピンポイントで合わせないとゴールに繋がらない。サウジアラビア戦はコーナーから点が取れたけど、かつて(中村)俊輔や遠藤(保仁)がいた時は、セットプレーがチャンスになり、実際に得点してきた。サウジアラビア戦の小川のゴールの時は、セットプレーがかなりデザインされてきていると思ったが、流れの中からのクロスの質は決して高くない。オーストラリアみたいなパワー系のチームはなかなかないけれど、そこをどう工夫して相手の守備を打ち破っていくのか。この試合をキッカケにちゃんと考えていかないと、あとでまた痛い目に合いそうだ。

11月の2試合は、アウェイでインドネシアと中国との試合になる。自分たちが主導権を握って相手を圧倒し、「日本にはかなわない」と思わせるような試合展開で勝ち点6を奪ってきてほしい。

元サッカー日本代表

サッカー解説者、サッカー指導者、鹿児島実業高校サッカー部OB、元Jリーガー/元サッカー日本代表、日本人初スペインリーグプロサッカー選手、1996年アトランタ五輪「マイアミの奇跡」メンバー、1998年フランスW杯エースストライカー

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