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世界のスマホ市場、1桁成長時代に突入  今後は他社製品からの乗り換え狙う時代に

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
「iPhone 6s」シリーズを紹介するアップルのティム・クックCEO(写真:ロイター/アフロ)

先頃、世界のスマートフォン市場は飽和状態に達しており、もはやかつてのような2桁成長は見込めないとの調査報告があったが、ほかの市場調査会社のリポートでも、同様の見解が示されているようだ。

今年の市場成長は1桁台に低下

例えば、米IDCが先週まとめたリポートでは、より具体的な数値を示し、今後の市場動向を占っている。

それによると、昨年1年間における世界のスマートフォン出荷台数は14億4000万台で、その前年比伸び率は10.4%と、2桁成長した。

これが今年は約15億台となり、前年比5.7%の増加にとどまる見通し。世界のスマートフォン出荷台数の伸び率が1桁台になるのは、IDCが統計を取り始めて以来初めてだという。

IDCはその理由の1つとして、世界最大の市場である中国がすでに新興市場から成熟市場に移行したことを挙げている。

同社によると、スマートフォンの出荷台数はインド、インドネシア、中東・アフリカ地域などの市場で引き続き堅調に伸びた。これに対し、米国、中国、西欧などの市場ではすでに1桁台の伸びにとどまっている。

こうしたことからスマートフォンの世界出荷台数は今後年平均6.0%伸びで推移し、2020年には前年比4.3%増にとどまると、同社は見ている。

Android端末メーカーには厳しい時代

このことはメーカー各社の市場環境が厳しい状況になってきたことを示している。

昨年のスマートフォンの出荷台数をOS(基本ソフト)別に見ると、「Android」は11億7000万台だった。これが2020年には16億2000万台となり、そのシェアは81%から85%に拡大するという。

ただ、Androidは400ドル以上の端末が占める比率がわずか14%にとどまっている。こうした低価格端末は利幅が極めて小さいか、採算割れの場合が多く、さらに地場メーカーとの競争も激しいため、課題が多いとIDCは指摘している。

iPhoneは減速へ、ただしアップルには明るい材料も

一方アップルの「iOS」(iPhone)は昨年2億3150万台を出荷し、その前年比伸び率は20.2%と、市場全体の伸びのほぼ2倍となった。しかし、こうした高価格帯端末の市場となっている成熟国では、すでに成長が鈍化している。

このことが、iPhoneやAndroidの高価格端末を手がけるメーカーに重大な影響をもたらすという。例えば、iPhoneの今年の出荷台数は前年比で0.1%減少するとIDCは予測している。

その一方でアップルには明るい材料が2つあるという。

1つはiPhoneの平均販売価格。一昨年に663ドルだったその平均販売価格は、昨年713ドルに上昇した。このことは、毎年新機種を市場投入し、それに伴い価格を上げてきたアップルの戦略が成功していることを意味している。

Android端末を含めた市場全体の平均販売価格が約295ドルで推移する中、iPhoneはこれとは対照的だとIDCは指摘している。

アップルにとって2つ目の明るい材料は、同社が今年2月に米国で始めた分割払い付き下取りプラン「Trade Up With Installments」。

これは、新しいiPhoneを購入する際に、旧モデルを下取りしたうえで、残金を24回に分けて支払うというもので、AndroidやWindowsなどの他社OS端末も下取り対象としている。

IDCの推計では、iPhoneの出荷台数は2017年以降回復する見通し。その今後5年間の年平均成長率は3.0%となり、2020年には2億6900万台が出荷されると見ている。

IDCがその根拠としているのが、前述の下取りプランだ。今後これが北米以外の市場にも広がることで、各国で他社製端末からiPhoneへの乗り換えが進むと同社は予測している。

JBpress:2016年3月8日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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