ソウル市長が遺体で発見:なぜ韓国では自殺が多いのか
■ソウル市長 遺体で発見
報道によると、遺言のような言葉を残して市長公邸を出ていた朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長(64)が、市内の山中で遺体で発見さました。
朴元淳ソウル市長は、次期大統領候補とも言われていました。もともと弁護士で、セクハラは違法であるとの概念を広げた人権派弁護士と言われる人でした。
ところが、元秘書の女性が「市長からセクハラを受けた」として告訴状が提出され受理されていたといいます。
10日朝のNHKテレビでは「事件性はないと見られている」と報道していますが、韓国の聯合ニュース日本語版は、「行方が分からなくなっていた韓国の朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長が10日午前0時すぎ、遺体で発見された。自殺とみられる」と報道しています(ソウル市長 遺体で発見=自殺か2020.07.10 01:30 総合ニュース)
■韓国と自殺
韓国は自殺の多い国です。経済協力開発機構(OECD)加盟国国の中では、最も自殺率が高くなっています。日本も自殺の多い国ではありますが、この数年自殺者数は減少し、日本の人口十万人あたりの自殺者数は15.2です。対して韓国は、自殺率が上がり続け、21世気になって自殺者数は倍増、この数年は高止まりで現在は24.6になっています。
日本の場合は、失業率の低下とともに、自殺対策基本法の効果もあってか、自殺率は低下しました。韓国も、手をこまねいているわけではなく、自殺予防センターの開設など、様々な対策を練ってきましたが、残念ながら目に見える効果は上がっていません。
韓国で自殺の多い原因は、様々あり複合的でしょう。急激な経済成長の中で、核家族化が進み、一人暮らし老人が増えたこともあるでしょう。韓国には高齢者を敬う文化がありますが、年金制度の充実が日本より遅く、発足が1988年、国民皆年金は1999年に実現されたばかりで、老人貧困率が高い問題もあります。
韓国は非常に教育熱心ですが、その学歴競争から転がり落ちた若者たちの問題もあります。実際に韓国の教育現場を見てきた人の中には、あまり報道されないが、教育競争に敗れた子供若者の荒れ、すさみを感じると語る人もいます。
韓国の失業率は高く、映画広告『パラサイト 半地下の家族』で描かれたような格差も広がっています。
1997年に韓国で起きた通貨危機が韓国社会を激変させ、自殺が増えたという人もいます。
韓国はキリスト教徒の多い国で、人口の20%がプロテスタント、10%がカトリックです。クリスチャン人口が1%の日本とはずいぶん違います。一般に、カトリックの多い国は自殺も少ないと言われているのですが、韓国ではその効果もなかなか表れていません。
韓国には、キリスト教が多いとはいえ、儒教の影響が強く残っており、人々特に若者や有名人に規律正しくあることを求め、それが人々へのプレッシャーになっているとの指摘もあります。
現代化した韓国の激しい競争社会に心をすり減らす人々がいて、またその現代社会と伝統との板挟みで苦しんでいるとする人もいます。
そして、韓国は多くの有名人が、自殺しています。これが、さらなる自殺の増加の原因になっていると思われます。
■韓国有名人の自殺
韓国の芸能人は、完璧を求められると語る人もいます。激しい競争の中で、芸能人として高い完成度が求められ、儒教の教えから人間としての完璧さも求められます。
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韓国芸能人が、ネットで激しく責め立てられ自殺に至ったことは、何度も報道されています。ネット文化の広がりも、自殺の原因の一つかもしれません。
芸能人だけでなく、失敗をした人に対して、韓国の社会は非常に辛く当たるように、日本人には見えてしまいます。さらし者にしたり、屈辱的な謝罪を求めているようにも感じます。
韓国社会では頻繁に「他者に対する謝罪要求」がなされるとの指摘もあります。そんな文化も、自殺が多い理由でしょうか。
韓国で大きな事件事故が起こると、また誰か自殺するのではないかと、心配になるほどです。セウォル号沈没事故では、大勢の高校生が亡くなりましたが、その高校の教頭先生も、自殺しています。
スポーツ選手、会社の社長、そして元大統領をはじめとする政治家たちの自殺。大勢の有名人が自殺し、大きく報道されてきました。
大きな自殺報道は、次の自殺を誘発します。自殺を潔い死と見るのも、自殺者を責め立てるのも、どちらも自殺予備軍の心を追い詰めます。ソウル市長の遺体発見と自殺報道が、さらなる悲劇を生まないことを祈ります。