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SHINee(シャイニー)ジョンヒョンさん自殺報道と自殺予防の心理学:私達は何を伝えるべきか

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
参考写真:シャイニー/SHINee, Oct 03, 2011(写真:ロイター/アフロ)

人気者、有名人の自殺報道は、私達に大きな影響を与えます。では、その報道はどうあるべきでしょうか。私達は、何をするべきでしょうか。大人は、子ども若者に何を伝えるべきでしょうか。

■SHINee(シャイニー)ジョンヒョンさん突然の死去

韓国の人気グループSHINee(シャイニー)のメインボーカル、ジョンヒョンが死去されました。

18日にソウル・清潭洞(チョンダムドン)のレジデンスでアイドルグループSHINee(シャイニー)メンバーのジョンヒョン(本名:キム・ジョンヒョン)さんが死亡しているのが見つかった事件について、警察は自殺と結論を出す方針だ。

出典:警察、SHINeeジョンヒョンさん「自殺」と結論…「司法解剖はしない」:12/19中央日報Y!

SHINeeは、日本でもアリーナツアーを行うなど、人気のグループです。ジョンヒョンさんは、その中でもメインボーカルを務め、さらに作詞作曲を担当していました。人気の高い、才能豊かなアーティストです。

しかし報道によれば、最近のジョンヒョンさんはうつ状態で苦しみ、「音楽に対する実力が不足していると自責の念にかられていた」「睡眠薬なしでは眠れない状態だった」とされています(韓国グループSHINee ジョンヒョン逝去 友人が遺書を公開:kaiyou 12/19 Y!)。

所属事務所は、「ジョンヒョンは誰よりも音楽を愛し、ステージを楽しみ、音楽を通じファンと交流することが好きな、最高のアーティストだ。永遠に忘れない」とコメントを出し、さらに「突然すぎる悲報に大きな悲しみの中にある遺族が故人を敬虔に追悼するために、デマや憶測報道は控えていただけますよう」と要請しています(SHINeeジョンヒョンさん死去 所属事務所がコメント「デマ・推測報道」の自制を要請:huffpost 12/19 Y!)。

■人気者の急死と私達

有名芸能人、人気者の死は、ファンの方々に衝撃をあたえます。自殺報道となれば、なおさらです。それは、普段コンサートになど行かない人々には想像もできないほど大きなショックです。特に子ども若者は、動揺していることでしょう。

一人の方がなくなったのですから、私達は哀悼の意を示すべきです。同時に、有名人の死は、その方ご自身やご遺族だけの問題ではなく、社会的な問題となります。

■自殺の連鎖

大きく報道される自殺は、次の自殺を生み、自殺の連鎖が広がる危険性があります。

一番注意すべきは、この報道前から不安定なところがあった子ども若者で、このニュースに大きなショックを受けた人たちです。まるで、親友や恋人を失ったかのような衝撃を受けている子達もいるはずです。

自殺の連鎖を防ぐためには、センセーショナルな自殺報道や、自殺方法の詳細を示すような報道はやめること、新聞テレビなどでトップニュースでは扱わないこと、大きく報道するときには、自殺予防に関する情報も付記することなどが、大切です。

その上で、動揺している子ども若者を、身近な人がフォローすることが必要です。

■韓国社会と自殺

韓国は自殺の多い国です。韓国の自殺率は、OECD加盟国中のトップです。2013年以降の最新の情報で比較すると、世界の自殺率(10万人当たりの自殺者数)の1位は、リトアニア(30.8)、2位が韓国28.5、日本は6位(19.5)です(毎日新聞2017年5月19日)。韓国は、この25年間で自殺率が3.6倍になりました。

韓国も日本同様に高齢者の自殺が多いのですが、韓国は有名人や社会的地位の高い人の自殺が目立ちます。元大統領、プサン市長、サムスン副社長、元プロ野球選手、プロサッカー選手、そして数多くの芸能人たち。

有名人ではありませんが、2014のセウォル号沈没事故のときには、教頭先生が自殺しています。

韓国の自殺率は高止まり状態が続いており、対策が急務だと言われながら、なかなか効果的な対策が取れていません。

■自殺報道と私達

自殺は、潔い死ではなく、残念な死です。もちろん、ジョンヒョンさんはファンのみなさんに愛された素晴らしいアーティストです。生前の功績を称えたいと思います。

事務所がコメントしているように、デマは当然だめですし、無遠慮な憶測記事も控えるべきでしょう。それでもやはり、その死は(自殺だとするならば)とても残念な死です。

有名人でも一般人でも、自殺した人を非難する報道も、自殺を美化する報道も、どちらも自殺の連鎖に結びつきやすいと言われています。

さらに有名人や人気者は、子ども若者の人生の「モデル(お手本)」になります。イチロー選手の本を読んで、がんばろうと思う子どもがたくさんいます。歌手の歌のメッセージや、芸能人や社会的成功者の言葉や生き方が、多くの人に影響を与え、時代の空気を作ることさえあります。だから、有名人には社会的責任があります。

自殺は、心理学、精神医学的に見ると、覚悟の死ではなく、追いつめられた末の死です。うつ状態であったなら、なおさらです。これは想像に過ぎませんが、おそらくジョンヒョンさんも、心理的に追いつめられた末の死だったのでしょう。そして、愛するファンの皆さんの幸せを、きっと願っていることでしょう。

以前、ある女子中学生がファンであるグループの解散に大きなショックを受けていました。でも解散コンサートで、そのメンバーが「僕たちは解散するけれど、音楽は続ける。みんなも、ぜひこれからもがんばってほしい」とファンに呼びかけたそうです。

彼女はショックを受けてはいましたが、大好きなアーティストがそう言っているのだから、だから私は勉強も部活もがんばると語っていました。

自殺する方の多くは、責任感が強く、真面目な人々です。だから、遺された人々が一生懸命生きていくことを、きっと望んでいることでしょう。

自殺の連鎖を防ぐためにも、子ども若者には、そんなメッセージも届けたいと思います。マスコミ報道も、先生も、親達からも。

 <中学生の自殺を防ぐために(子ども若者の自殺の特徴)

 <いのちの電話

社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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