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【名古屋市】市長も「ベリーグッド」うまみが超絶!尊さんのしじみラーメンは想像をはるかに超えてきた

羽矢旬良100縁ライター(名古屋市)

オープン前のレセプションに参加した市長が「ベリーグッド」を連呼(公式Instagramのリール動画より)したラーメンを食べに「宍道湖しじみ中華蕎麦 尊 ~mikoto~」(以下 尊(みこと))さんに行ってきました。素材、物流、レシピ、それぞれのプロの持ち味を結集することによって実現したお店です。今回は、ラーメンの実食レポートと、お店のプロデューサーでもある店長の上田さんに開店までの経緯と今後の展望をお聞きしましたので、そちらもあわせてお伝えします。

店舗外観(2023年9月8日(金)オープン)
店舗外観(2023年9月8日(金)オープン)

こぢんまりとした店内は、カウンターが10席と、2人がけ、4人がけのテーブル席がそれぞれ1組ずつ (写真提供:宍道湖しじみ中華蕎麦 尊 ~mikoto~)
こぢんまりとした店内は、カウンターが10席と、2人がけ、4人がけのテーブル席がそれぞれ1組ずつ (写真提供:宍道湖しじみ中華蕎麦 尊 ~mikoto~)

「尊(みこと)」さんが提供するラーメンは名古屋はもとより、よそでも珍しい「しじみラーメン」です。「しじみ」だしのスープ、「白バイ貝」からとった香味油、オリジナルの「塩ダレ」で構成されていました。

スープはのど越しに「しじみ」のコクをしっかり感じます。だしは島根県の宍道湖(しんじこ)で水揚げされた「ヤマトシジミ」のみからとっていて、混ぜものは一切ないそうです。このスープに「鳥取境港産白バイ貝」の香味油とオリジナルの塩ダレが加わり、なめらかでコク深い絶妙な風味を作り出しています。「しじみ」にコレほどのうまみを感じたのは初めてです。

麺は自家製の細麺でスープが良く絡み、「しじみ」のコクと細麺独特のツルツル感をのど越しに楽しめるよう、絶妙に計算されたものでした。

全国的に見ると「しじみラーメン」をうたうお店は何店舗か存在しますが、スープのだしに「しじみ」を使っていたとしても鶏や豚など他に何かを混ぜていて、あくまで「しじみ」は隠し味として使用していることが多く、「しじみ」のみでだしをとっているお店は少ないようです。なぜなら「しじみ」をメインに使おうとすれば原価が一気に跳ね上がり、庶民的なラーメンの価格で提供することはまず不可能だからです。「海外産しじみ」を検討しようとしても「国産しじみ」との味の差は歴然であるため、そちらに逃げることもできません。「しじみ」のうまみに可能性を感じたとしても、試行錯誤の結果、高級ラーメン店として敷居を上げるか、混ぜものを加えるか、あきらめるかの3択になってしまうためこうした分布になるのでしょう。

では、なぜ「尊(みこと)」さんが「しじみ」のみでだしをとったスープを使ったラーメンを提供できるのか。
店長の上田さんは、山陰地方の漁師町の出身。西日本一の水揚げ量を誇る境港(さかいみなと)や宍道湖(しんじこ)の漁業関係者との間に、強力なローカルネットワークを持っています。これまで、地元で焼き鳥店を営む店主として長年お店を運営してきたそうですが、そろそろ職人からプロデュースする立場に移行したいと考えていたところ、東京で携わった仕事を通じて地元の漁業資源の価値を改めて思い知らされたといいます。

宍道湖でのしじみ漁の風景(写真提供:宍道湖しじみ中華蕎麦 尊 ~mikoto~)
宍道湖でのしじみ漁の風景(写真提供:宍道湖しじみ中華蕎麦 尊 ~mikoto~)

「田舎の人は自分たちの価値に気づいていない」そう感じた上田さんは、地元の強みを生かして全国展開できるようなお店を作りたいと一念発起し、ミシュランの星獲得店を多数輩出している千葉県の「食の道場」にラーメンを学びに行きました。ラーメンを選んだ理由は、レシピさえ完成してしまえば、人が変わっても再現できるため拡大しやすいと感じたから。「食の道場」では、上田さんの人柄と、そこに持ち込んだ地元産の漁業資源が会長の目に止まり、自然に会長との人間関係が構築されていきました。今回お店をオープンする際にも、会長が何度も名古屋に足を運ぶなど、かなりの支援があったそうです。
同じ頃、上田さんのお店のアルバイトが「軽貨物の運送業をやりたい」と軽バンを購入。偶然、山陰地方に進出しようとしていた名古屋市に本社を置く「株式会社スリーウィン」を知った上田さんがそのアルバイトとつなぎ、自らも縁を持つこととなりました。これを機に「株式会社スリーウィン」と協力関係を築き、物流についても優位な立場を手に入れたのです。現在お店の経営はこの法人が行っています。

上田さんの人と人をつなぐ力が実現させた奇跡のお店とも感じる「尊(みこと)」さんですが、ここで改めてスープに使われる素材について深堀りしたいと思います。

「しじみ」は淡水と海水が混じり合った「汽水域(きすいいき)」でないと生息できない貝で、島根県の宍道湖はその生息に適した湖となっており、「しじみ」の漁獲量は日本一です。「尊(みこと)」さんで使われる「しじみ」は、この宍道湖で捕れたものを使うのですが、より味わい深いだしがとれるよう水揚げ後に現地で特別な工夫をしています。そうして完成されたものは「尊(みこと)」さん専用のものであり「尊しじみ」と名付けられた、ぜいたくなものです。

お店専用に用意された「しじみ」(写真提供:宍道湖しじみ中華蕎麦 尊 ~mikoto~)
お店専用に用意された「しじみ」(写真提供:宍道湖しじみ中華蕎麦 尊 ~mikoto~)

さらに、香味油に使う「白バイ貝」は日本海で捕れる貝で、海の深いところに生息するため浅瀬に生息するサザエなどと違って磯臭さがありません。素材として使うには最適で「食の道場」の会長が「ぜひ使いたい」とチョイスしたのですが、実は希少で入手困難な貝でした。しかし、これも上田さんの地元の人脈を介せば潤沢に入手できるのです。

「白バイ貝」の水揚げ風景-境港 (写真提供:宍道湖しじみ中華蕎麦 尊 ~mikoto~)
「白バイ貝」の水揚げ風景-境港 (写真提供:宍道湖しじみ中華蕎麦 尊 ~mikoto~)

写真の船は、上田さんの友人が経営する会社が所有する第八まさき丸「白バイ貝」専門の漁船 (写真提供:宍道湖しじみ中華蕎麦 尊 ~mikoto~)
写真の船は、上田さんの友人が経営する会社が所有する第八まさき丸「白バイ貝」専門の漁船 (写真提供:宍道湖しじみ中華蕎麦 尊 ~mikoto~)

お店に届いた「白バイ貝」(写真提供:宍道湖しじみ中華蕎麦 尊 ~mikoto~)
お店に届いた「白バイ貝」(写真提供:宍道湖しじみ中華蕎麦 尊 ~mikoto~)

こうした国産の希少な素材を使ったラーメンは、シンプルですがとても味わい深いもので、筆者はスープも残さず飲み干してしまいました。決して大食漢ではないのですが、もう一杯食べたいと感じるほど後を引きます。現在、和え玉の食券を渡すタイミングで「インスタを見た」と言えば、数量限定ですが「白バイ貝」の和え玉を提供できるそうです。和え玉とは、スープに入れても入れなくても味わえる麺のこと。次回はぜひ利用してみたいですね。

上田さんの地元が持つ漁業資源は今回ご紹介したもの以外にもたくさんあります。そうした素材を使い、これからさらにバリエーションを増やしていくことも考えているそうで、今後も非常に楽しみなお店です。今回は、食通もうなりそうな至高の一杯をいただきました。あなたにもぜひ、味わっていただきたいものです。

店舗情報

店名:宍道湖しじみ中華蕎麦 尊 ~mikoto~
住所:名古屋市瑞穂区中山町1-19-7
営業時間:月~土 11:00~14:30(Lo14:00) 17:00~21:00(Lo 20:30) 日祝の夜は~20:00(Lo19:30)
休日:不定休
公式Instagram

100縁ライター(名古屋市)

仕事の合間と休日に立ち寄ったお店やスポットをご紹介します。気象予報士(趣味)なので、天気や気候と絡めた記事も書いていきたいと考えています。名古屋生まれ名古屋育ち。現在、近郊在住。

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