なぜバルサは”メッシの親友”アグエロを獲得したのか?エース残留の行方とラポルタ会長の思惑。
次々に、補強が敢行されている。
バルセロナが動き続けている。セルヒオ・アグエロとエリック・ガルシアをフリートランスファーで、エメルソン・ロヤルを900万ユーロ(約11億円)の買い戻しオプションを行使して獲得した。すでに3選手が新たにチームの一員となっている。
■アグエロの加入が意味するところ
特筆すべきは、アグエロの獲得だろう。
アルゼンチン出身のアグエロは、2003年に15歳1か月3日でプロデビューを飾った。「神童」と呼ばれ、その後も順調にキャリアを築いた。マンチェスター・シティでは、公式戦260得点を記録してクラブ史上最多得点者となった。
その才能はリオネル・メッシをも凌ぐといわれていた。「僕はアグエロのプロデビューをテレビで見ていた。あの瞬間をきっと忘れないだろう。彼の名前や表情じゃない。彼の名前は覚えにくかったね。あれだけ若い青年が、フットボールの世界で大きな一歩を踏み出した。それは僕自身がずっと想像していたことだった」とメッシが当時を回想している。
この2人は2005年にU-20アルゼンチン代表で初めて顔を合わせている。それ以降、親友になった。「最初のトレーニングで、メッシを見た。すごく上手いと思った。それから、遠征でいつも同じ部屋だったんだ」とはアグエロの弁だ。
だが、A代表に招集された際には、”ひと悶着”あったようだ。「メッシはサバレタ、ガゴ、ガライといった主力選手と同部屋になることを望んでいたみたいだった。だから彼に質問したんだ。『どうしたんだ?』とね。そして、『2日間試して、嫌だったら変更すればいい』と彼に伝えた。ただ、その後メッシとアグエロが離れることはなかった」とアルゼンチンサッカー協会で2000年から2006年まで働いたマルセロ・ロッフェ氏が明かしている。
メッシとアグエロはピッチ内外で良い関係を築いてきた。アルゼンチン代表で42得点を記録しているアグエロだが、メッシからのアシスト(9回)が最も多い。
アグエロはマンチェスター・シティ(390試合出場260得点)、アトレティコ・マドリー(230試合100得点)、インデペンディエンテ(38試合18得点)と南米と欧州のクラブで得点を量産してきた。
アグエロのポジションはFWである。バルセロナでは、【4-3-3】の3トップの中央に入る。ジョゼップ・グアルディオラ監督が率いるシティでストライカー型の選手が存在感を失い、アグエロの出場機会が減ってバルセロナへの移籍が決まったのは皮肉な話だ。
■メッシの契約延長
一方で、バルセロナはメッシの契約延長問題を抱えている。
メッシは2020-21シーズン終了時にバルセロナとの契約が切れる。正確には、2021年6月30日に契約が満了する。彼はすでにカタール・ワールドカップ予選とコパ・アメリカに臨むアルゼンチン代表に合流するため、バルセロナを離れている。
コパ・アメリカは6月12日から7月11にかけて開催される。つまり、その期間にメッシとバルセロナの契約は満了を迎える。メッシの父親である代理人のホルヘ・メッシがバルセロナに残り、依然として交渉が続けられているとされる。
バルセロナはメッシに”10年契約”を用意しているという。バルセロナ(2021年ー2023年)、インテル・マイアミ(2023年-2025年)でプレーして、4年間で2億4000万ユーロを受け取ったのち、2025年から2031年までバルセロナの親善大使として働く彼に固定給とボーナスが支払われるというものだ。
「メッシの新契約に関しては、順調に進んでいる。だが、まだ決定していない。我々としては、可能な限り選手を満足させるオファーをしている」
ジョアン・ラポルタ会長の言葉だ。無論、ラポルタ会長がメッシを納得させるためにアグエロを確保したわけではないだろう。だがアグエロが「メッシとクラブの問題だけど、彼は続けると思う」と語ったように、その期待感は高まっている。