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なぜ不倫疑惑の広末涼子さん出演CM動画は削除されてしまったのか

竹内豊行政書士
不倫疑惑が報じられた広末さんのCM動画が削除されてしまいました。(写真:アフロ)

7日に文春オンラインで不倫疑惑が報じられた女優の広末涼子さん(42)が出演していたキリンビール「本麒麟」のCM動画が8日、公式サイトから削除されました。

相手と報じられたのは4年連続でミシュランガイドの一つ星を獲得している東京都渋谷区のフレンチレストラン「sio」のシェフ・鳥羽周作氏(45)。文春の直撃取材には両者とも不倫を否定しています。

不倫はあくまでも当事者同士とその家族の問題だと思いますが、今回、なぜキリンホールディングスは広末さんのCM動画を公式サイトから削除したのでしょうか。その理由を民法の観点から深読みしてみたいと思います。

不倫とは

まず、そもそも不倫、すなわち、結婚をして配偶者(夫または妻)がある者が、配偶者以外の者と性的結合(セックス)をすることはなぜいけないのか考えてみましょう。

不倫を禁止する条文はない

実は、民法には、「不倫をしてはいけない」といった、不倫を直接禁止する条文は見当たりません。

しかし、次の3つの条文から、「夫婦は互いに貞操義務(配偶者がいる者が、配偶者以外の者と性的結合をしないという義務)を負う」という不倫禁止が導き出されます。

1.重婚の禁止(民法732条)

配偶者のある者は、重ねて結婚できません。

2.同居協力扶養義務(民法752条)

夫婦は同居し、互いに協力し扶助し合わなければなりません。

3.不貞行為が離婚原因となる(民法770条1項1号)

不貞行為(配偶者以外の人と性的関係を持つこと)は、離婚原因となります。

民法には、「不倫禁止条項」は規定されていませんが、以上の3つの条文から、結婚したら夫婦双方に貞操義務が課せられることがおわかりいただけると思います。

不倫に待ち受ける2つの制裁と信用の失墜

貞操義務に違反をすれば、当然、制裁が待ち受けています。その制裁は、法的制裁と社会的制裁の二つに大きく分けられます。

1.法的制裁

不倫をした者とその相手にそれぞれ次の制裁が待ち受けています。

不倫をした人

前述のように、不貞行為は、離婚原因となります(民法770条1項1号)。そうなってしまうと、大切な家族を失うことになります。離婚までいかなくても、家庭内では針のむしろでしょう。

不倫の相手

判例は、「夫婦の一方が不貞行為をした場合には、不貞行為の相手方は、他方の夫または妻としての権利を侵害しており、夫婦の他方が被った精神的苦痛を慰謝すべき義務がある」としています。

このように、不倫の相手側は、不倫相手の配偶者から損害賠償を請求されるおそれがあります。

2.社会的制裁

不倫報道を見て、ほとんどの方は眉をひそめると思います。それは、不倫が、倫理的問題と深く関わっていることにあると考えられます。

そのため、本来であれば、不倫は当事者やその家族といった閉鎖的な範囲で解決して完結させるべきものですが、実際はその範囲に止まらず、たとえば、芸能人は長期間の謹慎、番組の降板など、一般的には、人事異動(左遷)などの制裁が伴うことがあります。

3.信頼の失墜

なによりきついのは、信頼の失墜でしょう。これは、無形の制裁ですが、根強くしかも長期にわたって継続します。そのため、信頼回復は一定の時間と困難を伴うのが常です。

このように、不倫は大きな代償が伴います。

CM動画が削除された理由

キリンホールディングス(HD)の広報はスポニチの取材にCM動画を削除した理由について次のように説明しています。

「本日公開を中止しました。報道による情報で詳細は分からないが、商品の価値を伝えることができないと判断した」と説明。CM降板など今後については「未定」とした。

(引用:不倫疑惑の広末涼子出演CM動画が公式サイトから削除 キリンHD広報「商品価値を伝えることができない」

このように、あくまでも不倫疑惑ですが、「商品の価値を伝えることができない」ために削除したと説明しています。この根底には、前述したように不倫が「倫理的問題」と深くかかわっていることが根底にあると推測できます。

不倫はしてはいけないことはだれでもわかっていること。しかし、わかっていながらしてしまうのは人間の悲しい性。しかし、不倫が発覚すれば法的・社会的制裁が待ち受けています。

万一、不倫の誘惑に負けそうになったら、これらの制裁を受け入れる覚悟があるか自分に問いただしてみましょう。それでも踏み越えてしまったら、早晩訪れる制裁を覚悟しておいた方がよいでしょう。

行政書士

1965年東京生まれ。中央大学法学部卒業後、西武百貨店入社。2001年行政書士登録。専門は遺言作成と相続手続。著書に『[穴埋め式]遺言書かんたん作成術』(日本実業出版社)『行政書士のための遺言・相続実務家養成講座』(税務経理協会)等。家族法は結婚、離婚、親子、相続、遺言など、個人と家族に係わる法律を対象としている。家族法を知れば人生の様々な場面で待ち受けている“落し穴”を回避できる。また、たとえ落ちてしまっても、深みにはまらずに這い上がることができる。この連載では実務経験や身近な話題を通して、“落し穴”に陥ることなく人生を乗り切る家族法の知識を、予防法務の観点に立って紹介する。

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