藤井聡太七段(16)は史上最年少名人(20)となれるか?
2019年6月18日。C級1組順位戦が開幕しました。B級2組昇級を目指して、今期も熾烈な争いが演じられると予想されます。
「名人候補」と呼ばれる藤井聡太七段(16歳)にとって順位戦は、昇級のさらにその先、はるかなる名人位までも目指しての戦いとも言えるでしょう。
藤井七段は将棋界の多くの最年少記録を更新しつつあります。では今後「史上最年少名人」となれる可能性は残されているでしょうか。
史上最年少名人挑戦記録は加藤一二三九段の20歳3ヶ月
まずは過去の記録をおさらいしておきましょう。
史上最年少の20歳3ヶ月で名人に挑戦したのは、加藤一二三現九段です。
四段に昇段して、史上最年少で棋士となった記録は、藤井聡太七段の14歳2ヶ月です。それ以前は加藤一二三現九段の14歳7ヶ月でした。
当時史上最年少の加藤四段が誕生したのは1954年8月1日。現在では年度途中で四段に昇段した際には、順位戦に参加することはできません。しかし加藤四段がC級2組順位戦に参加した時は、8月昇段でも順位戦に参加できました。
終戦後に始まった順位戦は、途中で細かな変遷はありますが、大きな枠は変わらずに、現在に至っています。当時はC級2組は東西に分かれ、加藤四段は西組(7人)に参加。そこで総当たりで2局ずつ指して、全12局、11勝1敗という好成績をあげてC級2組を1位で通過しました。
以後の驚異的な歩みは表の通りです。
史上最年少18歳でのA級昇級、ならびに八段昇段は、現在も破られていない記録です。
A級到達までに要する期間は最短で4期(4年)。それを四段昇段以来ノンストップで実現したのは史上初。以後は中原誠16世名人のみで、長い順位戦の歴史の中でも、わずかに2人しかいません。
さらにはA級2期目で優勝して、名人挑戦権獲得。七番勝負に登場したのが1960年4月。弱冠20歳3ヶ月の時でした。これもまた、現在までに破られていない記録です。
加藤八段(当時20歳)が挑戦したのは、昭和の半ばに絶対王者として君臨した大山康晴名人(当時37歳)でした。この時の加藤八段への注目度は当然高かった。
名人戦第1局は加藤挑戦者の勝ちでした。しかし以後は大山名人が4連勝。加藤挑戦者の20歳での名人獲得はなりませんでした。
大山康晴15世名人の後に名人位に就いたのは、「棋界の太陽」と呼ばれた中原誠16世名人でした。
デビュー以来の順位戦18連勝は、藤井七段に同じ数字で並ばれるまで、歴代単独1位の記録でした。最短4期でのA級昇級は加藤九段に次いで史上2人目(以後はなし)。また近年では藤井七段の高勝率によって、1967年度、C級1組五段の時に記録した空前の年間最高勝率(0.855)も、改めて注目されています。
中原16世名人は1972年、大山名人を破って初めて名人位に就きました。24歳9ヶ月の時です。
加藤現九段が中原名人との死闘を制して悲願の名人位を手にするのは、名人初挑戦から22年後の1982年。42歳の時でした。
史上最年少名人獲得記録は谷川浩司九段の21歳2ヶ月
歴史は皮肉な形で繰り返します。1983年。43歳の加藤一二三名人に挑戦したのは、21歳0ヶ月の谷川浩司八段(当時)でした。
谷川八段は4勝2敗で七番勝負を制し、颯爽と名人位に就きます。その時21歳2ヶ月。これが現在まで残る、史上最年少での名人獲得記録です。
ちなみに史上2位の若さで名人となったのは、羽生善治現九段です。
1935年に実力制名人戦が開始されて以来、これまでに14人の棋士が名人位に就いています。それらの棋士が初めて名人戦を制して名人となった年齢の一覧は次の通りです。
史上最年少名人獲得記録は数字上では更新可能
藤井聡太七段がこの先、最短で順位戦を勝ち上がり、さらにA級で名人挑戦権を得て、名人獲得となれば、それは何歳のことでしょうか。
藤井七段は2002年7月19日生まれです。
名人戦の日程が今年2019年と同じと仮定すれば、藤井現七段は2023年4月の始め頃、20歳8か月で名人挑戦が可能です。また第7局で七番勝負を制したと仮定すれば、2023年6月の終わり頃、20歳11か月で名人戴冠となります。
加藤現九段の20歳3ヶ月での最年少名人挑戦記録を破ることはすでに不可能。
谷川現九段の21歳2ヶ月での最年少名人獲得記録は更新可能。20歳のうちに史上最年少で名人となれる可能性はある。ただしこの先、昇級や名人挑戦が1期でも遅れると、以後の記録更新は不可能。
以上が数字上の計算となります。
気の早すぎる話とも思いますが、筆者がよく聞かれる質問の一つでもありますので、ここにまとめてメモしておきます。
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