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藤井聡太七段は2019年度C級1組順位戦で昇級できるか?

松本博文将棋ライター
千駄ヶ谷・鳩森神社の鳩みくじ(記事中の写真撮影、画像作成:筆者)

 2019年6月18日。C級1組順位戦が開幕します。毎年、昇級争いが大激戦となるこのクラス。今期の注目はやはり、昨年度惜しくも昇級を逸した、藤井聡太七段(16歳)の動向でしょう。

 C級1組順位戦の表はこちら「名人戦棋譜速報」のページなどをご覧ください。

 https://www.shogi.or.jp/match/junni/2019/78c1/index.html

 藤井七段の対戦相手は以下の通りです。

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 開幕戦では村田顕弘六段(32歳)との対戦となります。先後は藤井七段の後手と、組み合わせ時にあらかじめ決まっています。(順位戦では全10局の場合、先手5局、後手5局となるよう、抽選で決められます)

 藤井聡太七段と村田顕弘六段は過去には2018年10月(棋聖戦一次予選)、2018年12月(棋王戦予選)と2回対戦しています。結果はいずれも、藤井七段の勝ちでした。

 藤井七段は昨年度のC級1組順位戦で、9勝1敗という好成績をあげました。しかし、順位戦では前年度までの順位が大きくものを言います。藤井七段はC級1組に昇級したばかりで順位は最下位に近く、それが響いてしまい、最終的には昇級に届きませんでした。

 昇級したのは同成績で順位上位の近藤誠也現六段(22歳、C級1組在籍中は五段)と杉本昌隆八段(50歳)です。

 近藤六段は藤井七段との直接対決を制した、競争相手でした。今後もどこか重要なところで、両者の対戦が見られることでしょう。

 杉本八段は、かつてはB級1組にも所属し、A級まであと一歩と迫ったこともある実力者です。そして藤井七段の師匠でもありました。前年度C級1組では師弟で揃って好成績をあげ、師匠のみが昇級となりました。

 藤井七段と同じく、前期9勝1敗で昇級を逃しているのは、船江恒平六段(32歳)。もちろん今期も昇級の有力候補でしょう。藤井七段と船江六段は今期、7回戦で対局します。大一番となる可能性は高そうです。

★過去のC級1組順位戦上位

 ここで1988年度以降のC級1組成績上位の表をご覧ください。

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 昇級ラインは毎年変わります。過去31年の平均を取ってみると、1位通過は9.0勝。2位通過は8.5勝。次点(3位)は8.2勝でした。

 9勝1敗で昇級できない例は、過去には数えるほどです。しかしここ最近は4年連続して、9勝で昇級できない例が続いていました。藤井七段も不幸にも、その例に入ってしまったわけです。

 C級1組からB級2組への昇級は、伸び盛りの若手棋士がほとんどです。

 1989年度に昇級した羽生善治現九段は、当時19歳。すでに初タイトルの竜王位に就いていました。それだけの若手トップクラスでも、順位戦では毎年昇級というわけではなく、C級2組、C級1組、B級2組の通過に、それぞれ2年ずつかかっています。

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 B級2組以上に上がり、C級1組に戻ってきて、またB級2組に復帰した例は、ほとんどありません。そうした意味でも、昨年度の杉本八段の昇級は偉業と言えるでしょう。

 C級2組からは3人が昇級してきます。一方でB級2組へは2人が昇級。降級数は毎年変動するのでややこしいのですが、単純化して考えると、C級1組の人数は毎年少しずつ増えていく計算になっていました。

 C級1組の人数は、1989年度には23人でした。それが2018年度には、過去最高の39人にまで増えています。

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 一方で昇級枠は上位2人のみ。それはずっと変わりませんでした。

昇級枠が増えるのは来年2020年度から

 2018年6月におこなわれた棋士総会の決議により、順位戦の昇降級枠が一部変更されることになりました。C級1組からB級2組への昇級枠は、これまでの2人から3人と増えます。大きな改革と言えるでしょう。

 ただし、その増枠が適用されるのは来年2020年度開始の順位戦から。今期C級1組は36人で、これまでと変わらずに、やはり昇級2人という狭き枠をめぐって戦われます。

 藤井七段は今期、首尾よく昇級できるのか。それはまだ、誰にもわかりません。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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