エボラ出血熱がギニアとコンゴ民主共和国で同時に発生 現時点での国内への影響は?
ギニアとコンゴ民主共和国でエボラ出血熱が拡大しています。
現時点での状況と、エボラ出血熱の疫学、感染経路、病態や治療、予防についてまとめました。
ギニアでの流行
2021年2月14日、ギニアのネゼレコレ地方のグエケの農村部でエボラ出血熱(エボラウイルス病: EVD)の症例が発生したことをギニア当局が宣言しました。
2021年2月18日時点で、5人の死亡者を含む7人のEVD患者(3人の確定例、4人の疑い例)が確認されています。
最初の患者は2021年1月28日に死亡しています。
ギニアで報告されたEVDの症例は、2013年から2016年にかけて西アフリカで発生した大規模なアウトブレイク以来、初めてのことです。
今後規模が拡大し、ギニア国内の他の地域および/または近隣諸国に広がる可能性があります。
コンゴ民主共和国での流行
2021年2月7日、コンゴ民主共和国(DRC)保健省は、同国東部の北キヴ州でエボラ出血熱(EVD)の発生を宣言しました。
2021年2月18日現在、2人の死亡を含む4人のEVDの確定症例が報告されています。
今回の流行で最初に確認されたEVD患者は2月4日に死亡しています。
実験室検査の結果、エボラウイルスへの感染が確認された。北キブ州の保健当局は現在、これまでに300人以上の接触者が確認され、2021年2月15日からワクチン接種キャンペーンが開始されています。
今回のEVD患者は、DRCにおける2020年6月以来の症例です。
現在進行中の流行は、コンゴ民主共和国内の他の地域や近隣諸国にも広がる可能性があります。
現時点で日本への影響は?
現時点ではエボラ出血熱の症例はギニアとDRCでの局地的な発生に留まっています。
日本国内への輸入症例の発生および二次感染のリスクは非常に低いと考えられます。
今後の流行状況を注視しましょう。
エボラ出血熱とは?
エボラ出血熱の感染経路
エボラ出血熱は、ウイルス性出血熱の1種であり、日本では一類感染症に位置づけられています。
コウモリなどの野生動物の間を循環しているエボラウイルスが、人が狩猟や調理をする際に動物の体液に曝露し感染します。
感染した人から人には、吐物や血液などの体液を介して広がっていきます。
エボラ出血熱の流行地域
エボラ出血熱は、これまでにコンゴ民主共和国などの中部アフリカで流行がみられています。
また2014年にギニア、シエラレオネ、リベリアの西アフリカ3カ国でみられた大規模な流行では28512人が感染し11313人 (39.7%)が亡くなりました。
このときの流行では、日本国内にも疑似症が9例発生しましたが、確定例は発生しませんでした。
その後もコンゴ民主共和国では局地的な流行が繰り返されていました。
ちなみに忽那氏も、2019年のDRCでのアウトブレイクの際には国際緊急援助隊 感染症対策チームとして支援に伺いました(かっけー)。
エボラ出血熱の症状
エボラ出血熱は潜伏期2〜21日(大半が6〜12日)を経て、発熱、頭痛、関節痛などの非特異的な症状で発症します。
典型的には発症から3日後以降に嘔気・下痢などの消化器症状が始まり、7日後以降に意識障害が進行し重症化していきます。
40〜60%と非常に致死率の高い感染症です。
エボラ出血熱の治療と予防
エボラ出血熱に対して日本国内で承認されている治療薬はなく、治療は対症療法が中心となります。
海外では治療薬の開発と臨床研究が行われており、コンゴ民主共和国で行われたランダム化比較試験ではMab114とREGN-EB3というモノクローナル抗体製剤によって死亡率の低下がみられたと報告されています。
日本国内で承認されているエボラ出血熱のワクチンはありませんが、海外ではアメリカやEUで承認されています。
承認されたエボラワクチンであるrVSV-ZEBOVワクチンは、主に牛が感染する動物性ウイルスである小水疱性口内炎ウイルス(VSV)を遺伝子操作してエボラウイルス遺伝子を挿入したものであり、コンゴ民主共和国での流行において予防効果が示されています。
現時点では国内でエボラ出血熱の事例が発生する可能性は極めて低いと考えられますが、エボラ出血熱の予防のためには、感染が疑われる人や死亡した人との接触、流行地域での葬儀への参列や医療機関の受診などは可能な限り避けましょう。
動物(コウモリ、霊長類など)も感染しますので、動物の死体に近づくこと、触ることも避けましょう。
流水やアルコールによる手指消毒も有効です。