一流の社長がすべき口癖とは? すべきでない口癖とは?
社長ならやめたい「セルフ・ハンディキャップ」
一流の社長になりたいのであれば、すべき口癖とは「ビッグマウス」で、すべきでない口癖とは「セルフハンディキャップ」です。
ある結果が自分を傷つけると予見できる場合、あらかじめハンディを背負っているかのように主張することを「セルフ・ハンディキャップ」と呼びます。認知心理学で言うところの「自己奉仕バイアス」の一つ。
中学生、高校生のころ、テスト当日に
「お前、勉強した? 俺、週末に法事があってさ。そのせいで全然勉強できなかったんだよね」
「俺も全然勉強できなかった。今回のテストやばいよ」
このようなことを言ってませんでしたか? これがまさにセルフハンディキャップです。うまくいかなかったとき恥をかかないようにあらかじめ予防線をはっておくクセです。徒競走の前になると「今日はちょっと足に違和感がある」とか言うのも同じこと。このような発言は「クセ」になっています。大人になっても同じように言う人が多く、
「今期の目標は1億円です。しかし、中国経済が失速するなどによって外部環境は大きく変化していますので、どうなるかはわかりませんが」
などと、うまくいかなかった場合に備えて、その要因になりそうなことを前もって周囲の人に伝えるのが「クセ」になっています。失敗したときには「だから言ったでしょ」と言えますし、成功したら成功したで「意外とうまくいきましたね」と、期待以上の結果を主張できます。
しかし、「セルフ・ハンディキャップ」の習慣はお勧めできません。「失敗したときの言い訳」を事前に用意することで、結果を出すためのトレーニングや練習、準備……などにおいて、無意識のうちに手を抜いてしまうことになるからです。これは過去、多くの実験結果から証明されています。
さらに、「ピグマリオン効果」という有名な心理効果があります。ピグマリオン効果とは、人間は周囲から期待されれば期待されるほど成果を出す傾向が強くなることを言います。「失敗したときの言い訳」を事前に用意するということは、「プレッシャーになるから、自分にそれほど期待しないでくれ」と表明しているようなもの。ということは、当然、周囲からの期待は薄くなります。親や教育者、上司に期待されないことによって、結果が落ちていく心理効果を「ゴーレム効果」と呼びます。つまり「セルフ・ハンディキャップ」は「ゴーレム効果」を引き起こしてしまうため、自分のポテンシャルを正しく発揮できず、結果も期待以下となってしまうのです。
社長が「セルフハンディキャップ」を口癖にしていたら、リーダーシップを発揮することはできないでしょう。社長は「ビッグマウス」でなければなりません。
社長に求められる「ビッグマウス」の習慣
「甲子園で絶対に優勝する」
「3年後には、今の2倍の事業計画を絶対達成させる」
「世界を変える企業に育てる」
このように周囲に公言する人を「ビッグマウス」と呼びます。大口をたたく、という意味でしょう。そして、その夢や目標が達成されなかったとき、周囲からは、
「前からこうなると思っていた」
「そもそも期待していなかった」
「もともと実力がないことは知っていた」
……等と、あたかも以前からこの結果になることは予見できたと、解説しはじめる人が現れます。現に起きてしまった結果を、自分に納得のいく形でうまく理由づけて説明してしまうことを「意味の偽造」と呼びます。後付け理論です。
しかし、私から言わせてみれば、結果がわかった後になってから、あたかも「前からわかっていた」と評論する人も、ある意味「ビッグマウス」です。未来に対しての「ビッグマウス」なのか、過去に対しての「ビッグマウス」なのかが違うだけ。しかし意味合いは正反対です。
私は現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントです。クライアント企業の経営者や社員と一緒に考えることは、常に「未来」のこと。終わった「過去」に対する意味づけではありません。だからこそ書かせてもらいます。何かの結果が出てから、後付けで評論している人に未来を創造することはできません。スポーツの世界でも、ビジネスの世界でも同じ。結果が出た後にアレヤコレヤと言っている「ビッグマウス」に、誰も期待はしないということです。
結果は結果。
それは真正面から受け入れなければなりません。しかし、だからといって、周囲に期待を持たせるような発言を常にすべきです。日本では、言ったとおりに結果を残す「有言実行」よりも、アレコレ言わず、黙って結果を残す「不言実行」のほうが美徳とされる傾向があります。しかし本気で結果を残したいと願うなら、日本人の美意識などどうでもいいではありませんか。「ピグマリオン効果」を狙うためには、高い目標を公言したほうがいいのです。周囲から「期待」というエネルギーをもらえること、それこそが力になるからです。それはアスリートやビジネスパーソンのみならず、これは私たちすべての人たちに共通することなのです。