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10兆度!?宇宙一熱い場所の温度がヤバイ

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「宇宙一熱い場所の温度はどれくらいなのか」というテーマで動画をお送りします。

地球からおとめ座の方向に約24億光年彼方にあるクエーサーの温度を調べたところ、なんと10兆度を超えるという結果が得られたそうです。

本動画ではまず「熱放射」と呼ばれる現象について解説し、それを踏まえた上で10兆度の超高温環境について触れていきたいと思います。

●熱放射について

あらゆる物体からは、その温度に応じた波長の電磁波が放射されます。

これは「熱放射」と呼ばれる現象です。

ある温度の物体が熱放射で放つ、電磁波の波長ごとの強度分布(スペクトル)は「プランク分布」と呼ばれ、理論的に理解されています。

プランク分布では、高温な物体ほど電磁波の強度が高く、波長が短い電磁波をより強く放つことが示されています。

具体例として、体温が30度程度の人体は、可視光よりも波長が長い赤外線を放っています。

赤外線を捉えるサーモグラフィを使えば、暗闇でも人体が浮かび上がります。

また、恒星の表面温度は数千度~数万度で、どれも電磁波の中でも可視光を放つため、暗い夜でも星が輝いて見えます。

そして恒星の中でも低温(3000度程度)のものは、可視光の中でも波長が長い赤色の光を放つため、赤く輝いて見えます。

一方で、恒星の中でも高温(数万度)のものは、可視光の中でも波長が短い青色の光を放つため、青く輝いて見えます。

熱放射の特性から、遠方の天体の温度を推定できます。

例えばその天体からくる電磁波の波長ごとの強度分布(スペクトル)がわかれば、それと一致する分布をプランク分布から探すことで、放射源の温度が推定可能です。

また、ある天体の明るさ自体も温度によって決まるので、単に天体の明るさから、温度を推定することもできます。

当然、高解像度で観測した方が、より細かい場所ごとの温度を高精度で推定できるようになります。

このように、ある天体の場所ごとの明るさ(輝度)から推定した、その天体の場所ごとの温度は「輝度温度」と呼ばれています。

●クエーサー「3C 273」の温度を分析

「3C 273」とは、地球からおとめ座の方向に約24億光年彼方にあるクエーサーの名称です。

クエーサーは超新星爆発などの一過性の増光天体を除き、「宇宙一明るい天体」ともいわれる非常に明るい天体です。

クエーサーの光源は、銀河の中心にある巨大なブラックホールの周囲を取り巻く巨大な降着円盤や、ブラックホールから放たれる亜光速のジェットです。

降着円盤はブラックホールの周囲を猛スピードで公転する物質から成ります。

周囲の物質は摩擦熱で想像を絶するほどの高温となり、ブラックホールが属する銀河全体を遥かに凌駕するほど明るく輝くこともあります。

また、降着円盤の物質がブラックホールに飲み込まれる直前、磁力で捉えられると極の方へと伝わり、亜光速で放射されます。

これがジェットです。

3C 273は、物凄く明るいクエーサーという天体の中でも、特に明るいものの一つとされています。

そこに存在する超巨大ブラックホールの質量は太陽の約9億倍にもなると考えられています。

さらに、中心部から放たれる長さ20万光年にもなる巨大なジェット構造も見られます。

国際研究チームは、3C 273の中心部の詳細な輝度温度を調べようと試みました。

地球から24億光年という極めて遠くにある天体の細かい場所ごとの明るさを正確に理解し、中心部の温度を推定するために、圧倒的な解像度を誇る巨大望遠鏡が必要でした。

そこで研究チームは、「ラジオアストロン」と呼ばれる地球周回型の電波望遠鏡と地上の複数の電波望遠鏡をリンクさせ、実質的に地球の直径の8倍にも相当する超巨大な仮想望遠鏡を実現しました。

超巨大な仮想望遠鏡による観測の結果、3C273の核の部分ではなんと輝度温度が10兆度を超えていることが判明したのです。

理論的には、ブラックホールの周囲に存在する電子が約1000億度を超えると、電子のエネルギーが電磁波に変換されるため、電子のエネルギーが失われ、急速に冷えてしまうと考えられています。

そのため10兆度という温度は理論的に説明可能な温度を優に超えており、現時点でその過熱メカニズムを明確に説明できていません。

また、「相対論的ビーミング」という現象により、過剰な輝度温度を説明できる可能性があります。

これは運動している物体が光速に近付くほど、その物体から放たれる光の放射方向が運動方向に集中する現象です。

観測者から見ると、光速に近い速度で接近してくる物体は、静止している状態よりも明るく見えます。

Credit:NASA, ESA and the Hubble Heritage Team (STScI/AURA)
Credit:NASA, ESA and the Hubble Heritage Team (STScI/AURA)

相対論的ビーミングが視覚的に観測可能な現象の具体例として、地球からおとめ座の方向に約5000万光年彼方にある、超巨大な銀河「M 87」の中心ブラックホールから放たれるジェットが挙げられます。

ブラックホールから放たれるジェットは、反対の2方向へと同時に放たれます。

しかし地球からM 87のジェットを見ると、片方しか見えません。

この視覚的な非対称性は、地球に近付いている方のジェットが明るく見えるために生じています。

相対論的ビーミングの効果によって3C 273が実際よりも明るく見えているとすれば、10兆度という輝度温度は過大評価である可能性もあります。

そのため実際の温度がどれくらいなのかは議論の余地があり、3C 273のような超高温環境に対する継続的な分析が求められています。

https://iopscience.iop.org/article/10.3847/2041-8205/820/1/L9
https://earthsky.org/space/the-extremely-hot-heart-of-quasar-3c273/
https://www.mpifr-bonn.mpg.de/pressreleases/2016/7
https://astro-dic.jp/inverse-compton-scattering/
https://astro-dic.jp/plancks-law/
https://astro-dic.jp/brightness-temperature/

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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