学校内の教員間暴力に対して、少年鑑別所(法務少年支援センター)の地域援助機能の活用を推薦する
神戸市立東須磨小学校で明らかになった教員間の暴力行為について、多くのメディアが取り上げています。そもそも暴言や暴力行為が許されるものではありませんが、毎日子どもたちが通う学校という場であったことに衝撃が広がっています。
被害者の先生が子どもたちに宛てたメッセージには、校内で孤立していた様子も伺えます。
しかし、これだけの暴力行為がありながら、「先生が助けを求められずに」ということは、読売新聞の記事から推測するに、気が付いた同僚に手を差し伸べることを期待することそのものが難しい環境だったのではないかと思います。
・4教諭の後輩いじめ、同僚「リーダーいて言い出せず」黙認: 国内 : ニュース : 読売新聞オンライン
学校が社会に対して閉鎖的ではないかということに対して、「開かれた学校」にしていこうと、家庭や地域と連携・協力する動きはずっと続いています。
今回、学校内部で行われた教員から教員への暴力行為に対し、学校と言う組織が機能しなかった事実を考えると、子どもを守り、育む観点のみならず、良好な教育環境を維持するためにも、より社会に開かれた学校が求められます。
そのなかで、私が推薦したいのが、法務少年支援センター(少年鑑別所)の地域援助機能です。少年鑑別所は、家庭裁判所の決定により、非行少年を収容する役割を担っています。
平成27年に施行された少年鑑別所法では、少年鑑別所が地域社会において非行や犯罪の防止に関する援助(地域援助業務)を行うことが規定されています。地域援助業務を行うときには「法務少年支援センター」という名称を使います。
少年院や少年鑑別所で少年や保護者と向き合う法務教官、法務技官は、非行や犯罪に関するプロフェッショナルであり、そのような行為および対処と予防にもっとも知見と経験を持つ専門家です。
暴力行為が確認されれば警察などが対応することもできますが、その傾向や予兆の段階から、専門化として介入できる存在、法的位置づけを持つ少年鑑別所だからこそ、学校との連携に大きな効果を発揮するものと考えます。
実際、教員間の暴力ではありませんが、法務少年支援センターと学校の連携・協働は始まっています。
詳細事例は、公益財団法人矯正協会が毎月発行する『刑政』(第130巻第9号)に、「地域援助における少年鑑別所と都立高校の連携・協働」が掲載されています。
八王子少年鑑別所(東京西法務少年支援センター)と東京都立秋留台高校の連携が平成29年度から始まっています。内容は、八王子少年鑑別所から法務教官・法務技官が「定期駐在」をし、生徒の面接や心理検査、指導に関する助言等を行っています。
ここでのポイントは、職員が月に1,2回程度の頻度で学校に、定期的に伺っていることです。そして、彼らは非行・犯罪の理解と支援を専門としていることです。
すでに暴力行為があるのであればもちろん、トラブルの芽を見つけ、解決していくことこそが、本事件と同様のことが繰り返されないための手段のひとつになると私は考えます。
開かれた学校における、家庭や地域との連携・協力は、少年鑑別所の地域援助業務と非常に密接な関係であり、かつ、少年鑑別所は公的機関のため、民間組織が入る際のさまざまなハードルを越えやすい組織でもあります。
今後、文部科学省や教育委員会がどのような予防策を実行していくのかはわかりませんが、そのなかに少年鑑別所の地域援助業務がひとつの可能性になり得ると考えていただきたいです。