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ガソリン価格が160円を突破! 3ヶ月続けば税金を25円下げる”トリガー条項”はどうなったのか!?

安藤眞自動車ジャーナリスト(元開発者)
10月に入り、レギュラーガソリンが170円に達する地域も出てきました。

 ひところは沈静化しそうだったガソリン価格ですが、9月に入ると5週連続で上昇を続け、経済産業省の発表では、10月4日にはレギュラーガソリン1リッターの全国平均小売価格が160円に達しました。理由は新型コロナウイルス沈静化後の景気回復に対する期待感からくる原油価格の高騰だそうで、今後しばらくは上昇傾向が続くと見られています。

民主党政権時代に成立した”トリガー条項”は発動される?

 そこで思い出されるのが、”トリガー条項”です。正式には、租税特別措置法第八十九条『揮発油価格高騰時における揮発油税及び地方揮発油税の税率の特例規定の適用停止』と言いますが、内容をかみ砕いて言うと、「レギュラーガソリン1リッターあたりの価格が3ヶ月連続して160円を超えた場合、翌月からガソリン税の上乗せ分(旧暫定税率)25.1円の課税を停止し、その分だけ価格を下げる」というものです(もとに戻るのは、3ヶ月連続して130円/リッターを下回った翌月からとなります)。

トリガー条項発動のイメージ図。国税庁の資料より。
トリガー条項発動のイメージ図。国税庁の資料より。

 この条項は、2010年4月に成立したものですが、翌年3月に東日本大震災が発災したため、その復興財源を確保するという名目で、運用が凍結されました。

 正式には、『東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律』第四十四条によって規定されたもので、そこには「租税特別措置法第八十九条の規定は、東日本大震災の復旧及び復興の状況等を勘案し別に法律で定める日までの間、その適用を停止する。」と書かれています。

「凍結」が解けるのはいつ?

 では「別に法律で定める日」というのは、いったいいつなのでしょうか? 財務省に問い合わせてみたところ、「そういう法律は作られていない」とのことでした。すなわち、凍結することは決まったものの、期限はいつまでなのかは定められておらず、宙ぶらりんのまま放置されている、ということになります。

 そこで注目したいのが、その前の文言です。そこには「東日本大震災の復旧及び復興の状況等を勘案し」と書かれています。今年、行われた東京オリンピックは、当初は「復興五輪」と呼ばれていましたし、オリンピックの開催に税金をかけられるほど復興が進んでいるのであれば、そろそろ凍結を解いても良いのではないでしょうか?

「凍結」を解くには、新たな立法措置が必要

 ならば、誰がどうすれば凍結を解くことができるのか、というと、これは国会審議を経る必要があります。具体的に言うと、「別に法律で定める日」を定める法律を作るか、『東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律』第四十四条を廃止する法律を作るかのどちらかになります。いずれも立法措置ですから、国会で可決する必要があるのです。

 しかし、その可能性があるかというと、限りなく小さいのではないかと僕は思います。というのも、ガソリン税を25.1円下げれば、一ヶ月当たりの税収が1000億円強減ると見られているからです。元に戻る条件が「130円以下が3ヶ月」ですから、少なくとも4ヶ月はトリガー条項下に置かれることになり、5000億円前後の税収減が見込まれます。

 新型コロナウイルス対策で多額の税金を支出している現在、とても発動できる状況ではないと考える議員がほとんどでしょうから、仮に法案が提出されても、可決される見込みはほとんどないと考えるのが自然だと思います。

自動車ジャーナリスト(元開発者)

国内自動車メーカー設計部門に約5年間勤務した後、地域タブロイド新聞でジャーナリスト活動を開始。同時に自動車雑誌にも寄稿を始め、難しい技術を分かりやすく解説した記事が好評となる。環境技術には1990年代から取り組み、ディーゼルNOx法改正を審議した第151通常国会では参考人として意見陳述を行ったほか、ドイツ車メーカーの環境報告書日本語版の翻訳査読なども担当。道路行政に関しても、国会に質問主意書を提出するなど、積極的に関わっている。自動車技術会会員。

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