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地球や太陽系はどれほど速く複雑な軌道で宇宙を移動しているのか?

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「宇宙空間に対する地球の運動まとめ」というテーマで動画をお送りしていきます。

かつて地球は世界の中心であり、太陽を含めあらゆる天体が地球を公転しているとする「天動説」が信じられていました。

ですが現在は、地球やあらゆる太陽系の天体は、より重力が強い太陽の周囲を公転していることが知られています。

そしてそんな太陽を中心とした太陽系全体も、太陽のように自ら光輝く恒星が2500億個も集まった星の大集団である天の川銀河の中心を公転しています。

そして天の川銀河や他のあらゆる銀河も、宇宙の中を移動しています。

つまり私たちは普段認識していないだけで、とても複雑な運動を常にしているというわけです!

今回の動画ではそれらの運動を、ミクロなスケールからマクロなスケールへと順に見ていきましょう。

●地球の自転と公転

まず、地球は24時間という周期で自転しています。

地表において自転軸から近い高緯度地域ほど自転する一周の距離は短く、自転速度は遅くなり、反対に自転軸から遠い低緯度地域ほど一周の距離は長くなり、自転速度は速くなります。

つまり自転速度は極地において最低で0、赤道上において最高で時速1670km、秒速460mにもなります。

ちなみに日本程度の緯度では自転速度は時速約1400km、秒速約400mです。

そして地球は自転だけでなく、太陽の周囲を公転しています。

その公転速度は秒速約30kmにもなります。

1.5億kmも離れた地球をこれだけの速度で公転させる太陽は、とてつもない重力を持っていることがわかります。

実際太陽は地球の33万倍の質量があり、巨大な惑星や無数の小惑星も全て合わせた太陽系全体の総質量のうち、太陽だけで約99.9%を占めているほど超大質量の天体です!

●銀河系に対する太陽系の公転

そしてそんな太陽が率いる太陽系全体も、太陽系が属する2500億個の恒星の大集団である天の川銀河の中心を公転しています。

最新の観測によると、太陽系の天の川銀河中心部までの距離は約2万5800光年とのことです。

1光年はkmに直すと約9.5兆kmなので、それの2万5800倍という距離は、本当に想像を絶するほど遠い距離ということになります。

太陽系はそれほど巨大な軌道を、秒速227kmという物凄い速度で、2億年以上もの周期で公転しています!

この時点で地球を含む太陽系の惑星は、全て太陽の周囲を公転しつつ、天の川銀河も公転するという、複雑な公転軌道を描いていることになります。

●背景放射に対する銀河系の運動

さらに、天の川銀河全体も、宇宙空間を移動しています。

ですが天の川銀河の宇宙空間に対する速度を調べるのは非常に難しいです。

なぜなら天の川銀河に限らず全ての天体が移動しているので、宇宙空間に対する運動の絶対的な基準となるような、「宇宙空間に対して静止した天体」を見つけることができないからです。

Credit:ESA/Planck
Credit:ESA/Planck

そこで「宇宙背景放射」が登場します。背景放射とは、宇宙空間に満たされている宇宙で最も古い光のことです。

宇宙のどの場所でも、全方向から常に背景放射がやってきています。

今この瞬間も地球には背景放射が降り注いでいます。

そしてそんな背景放射は非常に高い精度で等方的です。

つまり仮に観測した地点が宇宙空間に対して静止していれば、背景放射は全方向からほぼ同じ波長でやってきます。

Credit:NASA JPL-CaltechR. Hurt (Caltech-IPAC)
Credit:NASA JPL-CaltechR. Hurt (Caltech-IPAC)

ですが実際は地球は静止していないので、光のドップラー効果が起き、地球が移動している方向から観測される光の波長は短く観測され、移動の反対方向からやってくる光の波長は長く観測されます。

つまり背景放射の方角ごとの波長を調べることで、地球が宇宙空間に対してどの方向にどれだけの速さで移動しているかが理解できるんですね!

観測の結果、地球は宇宙空間に対して、うみへび座の方向に秒速370kmという速度で移動していることが明らかになりました。

さらに地球の銀河系中心に対する公転を加味すると、銀河系全体がうみへび座の方向に秒速600kmという速度で移動しているということも明らかになりました!

銀河全体がこれだけの速度で移動しているというのは、物凄い運動エネルギーです。

●各運動の速度比較動

そして最後に、現在はJAXAに努める科学者であるジェームズ氏が、今回登場した速度を比較し、視覚的にわかりやすくした動画を公開されていたので、そちらを紹介します。

上から順に地球の赤道上の自転速度、太陽に対する地球の公転速度、銀河系中心に対する太陽系の公転速度、そして背景放射に対する銀河系の移動速度が示されています。

一番上の地球の自転速度ですら秒速460mと、地球の大気中での音速を超えるほど速いものですが、それが非常に遅く見えるほど他の速度が速いのがわかります。

特に銀河系の背景放射に対する速度は物凄い速さです。

普段全く感じることはできませんが、いかに私たちが物凄い速さで、物凄い複雑に宇宙空間に対して移動し続けているのかが理解できたのではないでしょうか!

https://www.youtube.com/watch?v=npq_yb-xLmw
https://www.nao.ac.jp/news/science/2020/20201126-mizusawa.html
https://www.esa.int/Science_Exploration/Space_Science/Solar_Orbiter/The_Sun_as_you_ve_never_seen_it_before
サムネイルクレジット:DjSadhu

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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