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日米野球の来日メンバーは正真正銘の「MLBオールスターチーム」なのか。「ほぼ三冠王」は出場辞退

宇根夏樹ベースボール・ライター
ホアン・ソト(ワシントン・ナショナルズ)Jun 18, 2018(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 日米野球に参加する選手が、追加発表された。先に発表されていたメジャーリーガー8人のうち、クリスチャン・イェリッチ(ミルウォーキー・ブルワーズ)は出場を辞退した。前田健太(ロサンゼルス・ドジャース)がチームに合流するのは、第3戦が行われる11月11日以降の予定だという。

筆者作成
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 来日メンバーのなかに、ここ2シーズンのどちらかでも規定投球回をクリアした投手はいない。今シーズン、コリン・マキュー(ヒューストン・アストロズ)とカービー・イェーツ(サンディエゴ・パドレス)は、救援50イニング以上では6位と9位の防御率を記録し、奪三振率も19位と12位ながら、投手陣全体としては――オールスター・ゲームに選ばれたことのある投手が皆無という点は別にしても――公式サイトのように「MLBオールスターチーム」と呼ぶのは躊躇われる。ワールドチャンピオンのボストン・レッドソックスからは、ブライアン・ジョンソンエクトール・ベラスケスの2人が参加するが、どちらもポストシーズンでは投げていない。

 一方、野手陣もイェリッチが抜けたことで、スケールダウンは否めない。イェリッチは首位打者を獲得するとともに、本塁打と打点もナ・リーグのトップ3、3位タイと2位タイにランクインした。1位との差は2本塁打と1打点しかなく、出塁率は3位、長打率とOPSは1位。守備と走塁を含む総合指標のWAR7.6――ベースボール・リファレンス版(rWAR)もファングラフス版(fWAR)も同じ数値――も、ナ・リーグの野手1位だ。MVPを受賞しても、まったくおかしくない。

 ただ、ナ・リーグの新人王は、来日する選手のなかから選ばれるはずだ。20歳の2人、ロナルド・アクーニャJr.(アトランタ・ブレーブス)とホアン・ソト(ワシントン・ナショナルズ)のうち、一方は新人王を受賞し、もう一方は2位になるだろう。アクーニャについては、1ヵ月前に「日米野球はこの選手に注目。20歳のルーキーは、A-RODやトラウトを凌ぐスーパースターになるかも」で紹介したが、ソトも負けていない。今後、2人はメジャーリーグを代表するスーパースターになるかもしれない。新人王は、日米野球の期間中、11月12日(日本時間13日)に発表される。

 彼らだけでなく、昨年8月にメジャーデビューしたアーメッド・ロザリオ(ニューヨーク・メッツ)とリース・ホスキンス(フィラデルフィア・フィリーズ)も、これからが楽しみな若手だ。ロザリオはメッツ最多の盗塁を決め、ホスキンスはフィリーズ最多のホームランを放った。

 また、14野手中4人は、イェリッチとともに今年のオールスター・ゲームに選ばれた。ヤディアー・モリーナ(セントルイス・カーディナルス)以外は初選出。J.T.リアルミュート(マイアミ・マーリンズ)、エユヘニオ・スアレス(シンシナティ・レッズ)、ミッチ・ハニガー(シアトル・マリナーズ)は3人とも27歳で、全盛期の前半にいるか、そこに向かいつつある。

 野手陣に関しては、現時点で正真正銘の「MLBオールスターチーム」かどうかはさておき、これからスーパースターになっていく可能性を持つ選手を数多く擁する。

 首位打者のイェリッチがいなくなっても、今シーズンのタイトル・ホルダーも皆無ではない。ウィット・メリフィールド(カンザスシティ・ロイヤルズ)は、昨シーズンに続いて今シーズンも、ア・リーグ最多の盗塁を決めている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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