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マーリンズのGM→監督について、先例としてコックスを挙げるのは、間違いではないが適切ではない

宇根夏樹ベースボール・ライター

5月18日、マイアミ・マーリンズは前日に解任したマイク・レドモンド監督の後任に、それまでGMを務めていたダン・ジェニングスを据えた。

シーズン途中にGMが監督に就任した例としては、ボビー・コックスポール・オーウェンスらがいる。コックスは1990年にアトランタ・ブレーブス、オーウェンスは1983年にフィラデルフィア・フィリーズでそうした。また、1988年5月にニューヨーク・ヤンキースのGMを辞任したルー・ピネラは、その1ヵ月後、ビリー・マーティンに代わってヤンキースの監督に就任した。

けれども、コックス、オーウェンス、ピネラの3人には、ジェニングスと決定的に違う点がある。彼らはいずれも、GMを務めるよりも前に、メジャーリーグの監督として采配を揮った経験を持っていた。つまり、監督の経験者がGMになり、その後、再び監督に就任したということだ。マーティンやダラス・グリーンジョン・ハートらも監督とGMの両方を経験しているが、彼らもまた、最初は監督だった。

一方、ジェニングスはスカウトの経験こそ豊富ながら、指導者としては30年前に高校のコーチを務めたことがあるだけだ。だからと言って、ジェニングスが監督として成功できないということにはならないが、コックスGMの監督就任時とは経験値が異なる。

ジェニングスはプロの選手として公式戦に出場した経験も持っていない。マーリンズのメディア・ガイドによれば、ジェニングスは右投手で、ヤンキースのトライアウトを受け、傘下のAの選手として1984年のスプリング・トレーニングに参加したという。

マーリンズでは、プロでプレーしたことのないジョン・ボールズが、1996年と1999~2001年に監督を務めていて、近年では他に、カルロス・トスカ(トロント・ブルージェイズ/2002~04年)やデーブ・トレンブリー(ボルティモア・オリオールズ/2007~10年)も同様だが、彼らは皆、その前にマイナーリーグで監督の経験を積んでいる。また、3人ともメジャーリーグの監督として、ポストシーズンに進出することはできなかった。

なお、ジェニングスと同時に、アドバンスド・スカウトからベンチ・コーチに就任したマイク・ゴフは、1980年代にマイナーリーグで二塁を守った。指導者としては、マイナーリーグで監督とコーチの経験があり、メジャーリーグでも2005~07年に、シアトル・マリナーズで一塁コーチやベンチ・コーチを務めている。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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