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まだ間に合う ~ 緊急事態宣言の連休は、地元のホテルの非日常でストレス解消

中村智彦神戸国際大学経済学部教授
ホテルで過ごすゆったりした休日(写真:アフロ)

・退屈な連休

 東京都、京都府、大阪府、兵庫県には緊急事態宣言が、宮城県をはじめとする7県にはまん延防止等重点措置が発出された連休が始まりました。

 飲食店や商業施設、レジャー施設の営業休止や時短営業、酒類の提供の自粛などに加え、県境を越えた移動の自粛も呼びかけられており、「せっかく楽しみにしていた旅行も中止」という人も多いでしょう。なにしろ、この一年間、在宅勤務などで家にいることが増え、考えてみるとずっと自室に閉じこもりっぱなしで、さらに第三次の緊急事態宣言で、気分的にも煮詰まってしまったという人も少なくないはずです。

 そこで、とにかく気分を変えて、のんびりしたいと思った人にお勧めしたいのが、近くのホテルに泊まってみることです。同じ府県内だからこそ、これまでわざわざ泊ったことはないが、いつも気になっているホテルがある人も多いのではないでしょうか。そこに「非日常」が隠れています。

 仕事柄、全国各地のホテルに泊まることが多い筆者のおすすめのホテルをご紹介しながら、緊急事態宣言中の連休のちょっとした息抜きのアイデアを提案したいと思います。

ホテルニューオータニ(東京)(撮影・筆者)
ホテルニューオータニ(東京)(撮影・筆者)

・ホテルニューオータニのスーパールームサービスとは

 「ほう、なるほどその手があったか」と感心したのが、ホテルニューオータニ(東京)とホテルニューオータニ大阪が、緊急事態宣言中限定で始めた「スーパールームサービス」です。

 ホテルの客室すべてをレストランの個室(プライベートダイニング)と位置付けて、ルームサービスメニューの料理や飲み物のメニューを拡充するというものです。ここで注目されるのは、ビール、日本酒、ワイン、カクテルなどアルコールの提供も行われるという点です。

 さすがに宿泊代もお安くはありませんが、自分の客室でゆっくり時間を気にせず、後ろめたい気にもならずにアルコール飲料を楽しんで、そのままシャワーを浴びて、休むことができる贅沢はストレス解消にはもってこいです。

 ところでニューオータニがマスコミの話題をかっさらいましたが、一般社団法人日本レジャーホテル協会のホームページによると、「緊急事態宣言によるホテルのルームサービスの飲食提供は、1都3県すべてにおいて対象外」ということなので、ニューオータニ以外のホテルでもルームサービスを実施しているところでは、その部屋の宿泊者に限られますが、客室でゆっくり食事とアルコール飲料を含む飲み物を楽しめるというわけです。

・神戸や芦屋で「密」を避けつつ

 兵庫県神戸市東灘区の六甲アイランドには、神戸ベイシェラトンホテル&タワーズとホテルプラザの二つのホテルがあります。両ホテルとも、部屋の位置や方角にもよりますが、三宮など神戸市の中心部や六甲山、あるいは大阪湾岸を見渡せ、昼から夕方、夜、そして朝とその風景は飽きることがありません。

 神戸市内に宿泊したことがあるという方でも、JR三宮駅周辺のホテルが多いのではないでしょうか。デパートや商店街、そして飲食店が軒を連ねる三宮駅周辺の方が、利便性は高いからです。しかし、今回は利便性はあまり重要ではありません。

 両ホテルから10分ほど南に歩くと、大阪湾を見渡せる海岸を散策できます。神戸空港や関西国際空港を離発着する航空機や、間近に巨大なコンテナ船などが行きかい、天気が良ければ大阪南港から淡路島まで見通せ素晴らしい景色です。六甲アイランド内の美術館などは、緊急事態宣言期間中は、残念ながら休館しています。「行かなくてはいけない観光地や飲食店」がない分、心騒がず近未来的な街と穏やかな大阪湾の風景をゆっくり歩いて楽しめるのではないでしょうか。さらに神戸ベイシェラトンホテル&タワーズには、宿泊客が利用できる天然温泉もあります。

 もう一つお勧めなのが、JR芦屋駅前のホテル竹園。駅に直結したビル内にあるホテルです。実はこのホテルの母体は1946年に創業した精肉店「あしや竹園芦屋本店」。夕方近くとなれば、牛肉やコロッケなどを買い求める客が列を作る芦屋でも人気の老舗精肉店の経営です。ホテルのレストランでも、おいしいお肉料理を楽しめます。

 ホテル周辺は、高級住宅地芦屋にふさわしくパン屋やケーキ店などもあり、部屋で楽しむものには事欠きません。部屋でルームサービスのコーヒーを頼み、ホテルからすぐのところの「パイの店カロル」のアップルパイを買ってくるが、筆者のお勧めです。

 六甲アイランドや芦屋駅前などには、地元・灘五郷の地酒を置いている酒店もあります。そうした地酒を部屋で一献というのも、楽しいでしょう。あるいは有名店のパンやスイーツを買ってきて、優雅におやつを楽しむというのも一興でしょう。芦屋の豊かな生活を感じることができるでしょう。

六甲アイランド。画像正面が神戸ベイシェラトンホテル&タワーズ。右手にホテルプラザ神戸があります。(撮影・筆者)
六甲アイランド。画像正面が神戸ベイシェラトンホテル&タワーズ。右手にホテルプラザ神戸があります。(撮影・筆者)

・東京、京都、大阪のトレインビューホテル

 ビジネスホテルでも、非日常を楽しめるホテルがたくさんあります。例えば、東京都のJR田端駅前のJR東日本ホテルメッツ田端は、マニアの間では有名なトレインビューホテルです。予約サイトの一部の部屋には、わざわざ「電車はご覧いただけません」と表記がされているほど、電車が見える部屋が人気なのです。線路側の部屋からは、山手線、京浜東北線など在来線はもちろん、上越、東北、山形、秋田、北海道、北陸などの様々な新幹線が通過するのが眺められ、好きな人にとってはたまらないでしょう。

 同じトレインビューホテルとして有名なのが、京都駅にある都シティ近鉄京都駅。まさに近鉄京都駅の真上に作られているこのホテルは、南側には東海道新幹線が、北側にはJR京都駅が間近に見えます。さらに。西側に設けられた部屋からは、真下の近鉄京都駅を出入りする電車を見ることができます。

 そして、もう一つ。大阪府吹田市のJR岸部駅前にあるカンデオホテルズ大阪岸部。2018年にJR岸辺駅直結の商業施設「VIERRA岸辺健都」の6階から9階に開業しました。吹田操車場を再開発して作られたこともあり、すぐ下にはJR貨物のコンテナヤードが広がり、JR京都線の電車が通り過ぎていくが眼下に見えます。

 ホテルから歩いて数分のところにある吹田市立の図書館「建都ライブラリー」には、2008年に引退した0系新幹線が展示されており、外からも見学は可能です。線路沿いには遊歩道が作られており、貨物用の電気機関車やコンテナなどを眼前で見ることができます。

カンデオホテルズ大阪岸部は、JR貨物のコンテナヤードに接している。(画像・筆者)
カンデオホテルズ大阪岸部は、JR貨物のコンテナヤードに接している。(画像・筆者)

・いつも見ている街が違って見える

 地元のホテルの客室で、食事や飲み物をゆっくり楽しみ、そのままゆっくり休むということで、充分贅沢さを感じることができるでしょう。仮にそれが、テイクアウトの持ち込みや、デリバリーサービスを利用したものであっても、工夫しだいで、充分に楽しむことができます。

 高級ホテルではなくとも、ビジネスホテルでも、その窓から見ると、いつも見慣れているはずの街が違って見えてきます。「宅飲み」、「Zoom飲み」には飽きてきたが、なかなか外出も安心してできないという方は、同じ府県内のホテルに泊まってみるというのは、どうでしょうか

 連休中のひと時、ぼんやり海を眺めてみたり、鉄道模型を眺めるように実際の列車の行きかう様子を楽しんだり、憧れの街の住民になったつもりで部屋でゆっくり買ってきたものを食べたり、ちょっと奮発してルームサービスで豪華な食事を楽しんだり、予算や日程に合わせて、ホテルステイでストレス解消を図ってみてはどうでしょうか。

 筆者は、今回、紹介したホテルとは全く関係はありません。自分が、もし連休中に緊急事態宣言が出されている府県のホテルでゆっくりするならばと考えて、知っているホテルの中から選んでみました。「ここで紹介されているホテルより、私の知っているあそこのホテルの方が」という方もいらしゃるでしょう。それはそれで良いのです。

 新型コロナ禍で非常に厳しい状況が続いているホテル業界。今回、いろいろなホテルの予約サイトを覗いてみると、多くのホテルが連休中の部屋がまだ空いている状況です。応援の気持ちに加えて、ちょっと余裕があって、ほんの少しの非日常を楽しみたいという方がいらしたら、いつも気になっているあのホテルに泊まってみてはどうでしょうか。

 密を避け、マナーを守り、安全なホテルで、おいしいものを食べて、いつもと違った形式を楽しむことが、ストレスを少しは解消してくれ、ほんの少しですが経済も回してくれるものと思います。

※掲載した情報は、2021年4月28日現在です。

※ホテルの予約、お問い合わせは直接、それぞれのホテルにお願いいたします。

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神戸国際大学経済学部教授

1964年生。上智大学卒業後、タイ国際航空、PHP総合研究所を経て、大阪府立産業開発研究所国際調査室研究員として勤務。2000年に名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程を修了(学術博士号取得)。その後、日本福祉大学経済学部助教授を経て、神戸国際大学経済学部教授。関西大学商学部非常勤講師、愛知工科大学非常勤講師、総務省地域力創造アドバイザー、京都府の公設試の在り方検討委員会委員、東京都北区産業活性化ビジョン策定委員会委員、向日市ふるさと創生計画委員会委員長などの役職を務める。営業、総務、経理、海外駐在を経験、公務員時代に経済調査を担当。企業経営者や自治体へのアドバイス、プロジェクトの運営を担う。

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